タンス預金や名義預金はしないのがベスト

タンス預金とは、お金を金融機関等に預けずに、自宅で保管することいいます。また、【庭に埋めたお金もタンス預金の一部】といえます。

このタンス預金や名義預金が見つかると、状況によっては脱税を疑われる可能性があります。

死亡日の手元の現預金を財産として計上する

相続の税務調査で申告モレが一番多い財産は現金預金で、約4割を占めると言われています。

そして現預金の中でも、いわゆる名義預金が大半とも言われていますが、普通の現預金も税務調査で指摘されることは多いです。
(なお、名義預金についての詳しい内容は、名義預金対策に記載しています。)

普通の現預金には、金融機関に預けていない家庭にある現金、いわゆるタンス預金も含みます。

ちなみに、よくテレビ番組に出てくる畑に現金を埋めることも、タンス預金と呼ばれます。

現預金
現預金
畑に現金を埋めることなどもタンス預金。ただ、常識的に考えて脱税していると見られる可能性大ですので、やめたほうがいいでしょう。

海外旅行準備などで外貨にしている場合、その外貨も現預金に含まれます。

ちなみにドルなどの外貨は、相続発生時の為替レートで円に換算したものを相続税評価額とします。また、

  • 小切手
  • トラベラーズチェック

なども現預金に含まれます。

ただ硬化や紙幣等の現預金だと、

  • 本当に被相続人のものなのか?
  • どこに保管されていたのか?

などで相続税の対象になる・ならないという論点があります。

相続税の対象
種類保管場所
被相続人の宅被相続人の宅以外貸金庫
通貨(外国通貨含む)被相続人のものではないと明らかなもの以外被相続人の所有と明らかなもの被相続人のもの(共有利用の場合、被相続人のものだけ)
小切手等(トラベラーズチェック含む)同上同上同上

そして現預金は脱税などの悪意はなくとも、指摘されやすい事項です。

理由は被相続人の死亡前後において、葬儀費用などの準備で、被相続人名義の口座から現金を引き出すということが少なくないからです。

この行為自体は違法ではありませんが、被相続人の実際の死亡時点における、手元の現預金を相続税の申告として計上しなければなりません。なので、

  1. 死亡日以前に300万を降ろした
  2. 実際の死亡日までに150万を使った
  3. 残りの150万円を死亡日が過ぎてから葬儀費用等として使った

この場合、相続税の現預金として150万円を計上すべきですが、手元に資金がないので、相続税の現預金として0円とするケースはよくありがちです。

タンス預金等の現金の申告漏れは重加算税が課される場合が多い

死亡日時点での手元にある現預金が申告書に計上されていないと、税務調査の際に指摘されます。

そして、現預金関連の申告モレは、過少申告加算税、プラス重加算税が課される場合が多いです。

重加算税
重加算税
タンス預金の計上モレなどは重加算税になりやすい

相続開始前後の現金の流れは、メモなどで必ず記録を残しておきましょう。

銀行預金のような残高証明がないので、死亡時の現金は相続人が計算しておく必要があります。

脱税等の悪意がなくても、現金は申告モレが発生しやすいので要注意です。

また、土地の相続税評価のように税務署と見解が割れるものではありません。

関連記事へのアイコン関連記事

土地と建物で指摘されやすい税務調査のポイント

相続開始時に手元にいくらあったのか?だけなので、後でどうこう出来るものでもありません。

被相続人の現預金を他人が管理していた場合は要注意

被相続人が認知症や病気などの理由で、相続人の方などが被相続人の現預金を管理しいてることは珍しくありません。

この場合、他の相続人の方から、

  • 現金を使い込んでいないか?
  • もっと現金はあったはず?

などの疑いをもたれやすいという現実があります。

そして、これは他の相続人からだけでなく、税務調査官からも使い込みをしていないかなど、疑われやすいです。

疑い
疑い
他の相続人はもとより、税務調査官からも使い込みをしていないかなどの疑いが・・

なので、

  • 日付
  • 金額
  • 支出内容
  • 支払い先

などを明確にメモしておきましょう。

なお、生活費の支払いであるから無条件に使っていいのか?というと、もちろんそんなことはありません。

関連記事へのアイコン関連記事

生活費や教育費などはそもそも贈与税がかからない

以下は現金の管理を被相続人以外の人がしている場合に、税務調査で指摘されやすい事項となります。

  • 生活費の支払:同一生計か?
    同一生計でない場合、管理者に贈与税がかかる可能性あり
  • 資産の購入:被相続人の名義か?被相続人が使用しているか?
    名義が相続人であったり、同一生計でも相続人だけ使用している場合は、管理者に贈与税がかかる可能性あり
  • 管理者の借金返済:完全に管理者に贈与税が課税

そして、上記に該当するような場合で、贈与税の申告をしていなければ、現金または相続人(管理者)に対する貸付金として、相続財産の計上モレということになります。

税務調査で問題にならないようにするためには、徹底的したメモや領収書などを残しておくことが重要です。

遠隔地の預金もバレる?

昔、勤めていた勤務先の預金口座で遠方である。

さすがに、この遠隔地の預金はバレないだろう・・、と思われるかもしれません。

また、そのようなことを耳にした方も、いらっしゃるかもしれません。

しかし税務調査で、申告書に記載されているもの以外にも預金があると疑われた場合、遠隔地の預金だろうとバレる、と思っていたほうが賢明です。

というのも、税務署は銀行預金の調査に際して、申告書に記載されているものはもちろん、故人の住所地・職場・実家など、預金口座を開設していそうな地域の銀行に対しても照会を行います。

税務署の調査能力を甘くみないようにしましょう。

また、そもそも正しく申告するようにしましょう。

動画で解説

タンス預金が見つかると脱税を疑われる可能性大、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。


動画内容

相続税の税務調査で最も指摘されやすい財産は、現金や預貯金です。

現金や預貯金の申告漏れは、申告漏れが発覚した財産のうち、例年、約4割を占めています。

今回は、現金や預金がどのような場合に指摘されやすいか、その注意点をお伝えします。

相続税の対象となる現金や預金とは、亡くなった人が死亡時に保有する、現金や預貯金のほか、外国通貨なども含みます。

そして、税務調査で指摘される大半は名義預金といわれています。

名義預金とは、口座の名義人と、実際にその口座内のお金を管理している人が違う預金のことです。

代表的な例に、親が子供名義の口座をこっそりと作って、そこに預金をしているケースがあります。

しかし、名義預金だけに気をつけていても、税務調査は乗り切れません。

名義預金以外にも注意していただきたいのはタンス預金です。

タンス預金とは、お金を金融機関に預けずに自宅で保管することをいいます。

タンスというのは例え話で、庭に埋めたお金もタンス預金の一部といえます。

庭に埋めたお金もタンス預金の一部
庭に埋めたお金もタンス預金の一部

タンス預金が見つかると、状況によっては脱税を疑われる可能性がありますので、できればやめておいた方が無難です。

外国の通貨も相続税の対象で、海外口座の預金はもちろん、小切手やトラベラーズチェックも対象になります。

そして、現金預金について、多くの方に注意していただきたいのは、亡くなった人の現金や預金を生前にご家族が管理していた場合です。

たとえば、亡くなった方が生前に認知症などを患い、ご自身でお金の管理ができなくなった場合、お子さんが代わりにお金を管理するケースがあります。

そうなると、税務調査で疑われやすいのは、このお子さんが認知症の親のお金を自分のために使い込んでいないか、ということです。

もしこのお子さんが認知症の親のお金を使って、勝手に自分の物を買ったり、自分の借金の返済に充てたりしていた場合、それはお子さんに贈与税がかかる可能性があります。

また、お子さんが普段は親と生計を別にしているのに、認知症の親のお金から自分の生活費も支出していれば、これも贈与税がかかる可能性があります。

もし相続税の税務調査で、こういった使い込みが発覚し、お金を管理している人が贈与税の申告をしていなかった場合は、相続財産の計上もれとしてカウントされてしまいます。

既にないお金に対して課税されるのは、納得がいかない部分もあるかも知れません。

しかし、もっと納得がいかないのは他の相続人です。

相続税は相続税の対象になる財産の総額に対して、相続税を計算するため、使い込みとされた額によっては、相続税の対象になる財産が大きく増えてしまい、他の相続人が負担する相続税まで上がってしまう、ということがあるからです。

このようなことにならないよう、もし認知症の親のお金を管理するときは、お金を使ったときの内容を明確にしておく必要があります。

たとえば、使った日付、金額、支出の内容、支払い先、など、しっかりメモに残しておいてください。