無申告で相続税を逃れることは出来ない

バレないだろうと安易に考えて、相続税の申告を怠たる。

適当に計算して提出する。

このようなことは絶対にやめましょう。

相続って絶対申告しないといけないの?

相続税は法人税や所得税と同じように、申告によって自ら納税します。

仮に相続税が特例制度(小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減)などを使わずに、税額が0円になるのであれば、申告をする必要はありません。

ゼロ円
ゼロ円
特例などを使わなくても、税額が0円であれば申告は不要

しかし、本当は相続税が発生するにも関わらず申告をしなかったら・・。

バレない?

無申告で相続税を逃れるのは困難と考えた方がいいです。

また、そのような脱税行為は、そもそも「してはいけないもの」です。

脱税行為は絶対やめましょう。

基本的に被相続人(故人)の死亡届を市役所に提出すると、市役所はそのことを税務署に報告します。

なので、被相続人が亡くなったという事実を税務署に隠すことは出来ません。

また、相続税がかかりそうな財産がある方達を、税務署は過去の確定申告の情報などで把握しているとも言われています。

明らかに相続税が発生するような被相続人の場合には、既に税務署にチェックされていると考えたほうがいいでしょう。

バレている
バレている
無申告で相続税を逃れることは出来ない

また、そもそも悪意はないのだけれども、相続人の相続争いが発生して申告期限に間に合わないことや、相続税がかかると思っていなかったので、専門家に相続税の試算もしてもらわず、そのまま申告しないという例も多数あります。

そして、相続税の申告をしないまま、税務署から相続税申告の提出期限が過ぎてから、「申告書の提出がない」と連絡を受けた場合、さまざまなペナルティ(罰則)が課されます。

ペナルティ
ペナルティ
相続税があるにも関わらず無申告の場合には、さまざまなペナルティ(罰則)が課されます。

このような事態にならないためにも、相続税対策を早くから始めましょう。

そして、法定相続人が多いことなどにより、相続税が仮に0円になったとてしても、相続財産(遺産額)が多い場合には申告をしたほうが無難です。

相続税の無申告や申告漏れのペナルティ

相続税の無申告や申告漏れ(申告をしたけれども、相続財産の計上モレがある)には、厳しい罰則があります。

悪質とみなされた無申告や申告漏れの場合、最悪、懲役刑もあり得ます。

そして、税金面で言えば、大きく分けると以下の2つがあります。

  1. 延滞税
  2. 加算税

延滞税

法定期限までに納付していない税金は、遅れた期間に応じて延滞税がかかってきます。

延滞税
延滞税
遅れた期間に応じて延滞税がかかります。

延滞税の利率は納付期限の翌日から起算して、以下のようになります。

  1. 2カ月間は年7.3%または特例基準割合+1%のいずれか低い方
  2. 2カ月経過後の期間は年14.6%又は特例基準割合+7.3%のいずれか低い方

で計算します。

なお、特例基準割合は2018年1月1日から2019年12月31日までの期間は年1.6%です。

加算税

加算税は大きく分けて次の3つがあります。

  1. 過少申告加算税0~15%(*1)
  2. 無申告加算税0~20%(*2)
  3. 重加算税35~40%(*3)

(*1)過少申告加算税

間違えて税金を少なく申告してしまったけれども、自主的に修正申告書を提出した場合には0%

間違えて税金を少なく申告していて、税務調査によりその間違いが発覚し、修正申告などをした場合には【追加納税の金額の10%

また、追加納税額が

  1. 期限内に申告した税金
  2. 50万円

のいずれか多い金額を超える部分に対しては15%


(*2)無申告加算税

純粋に申告書の提出を忘れた場合で、自主的に申告期限を過ぎてから申告書を提出した場合には「納税額の5%」(ただ、申告が申告期限を過ぎてから2週間以内であれば0%)

税務調査により、申告期限を過ぎてから申告書を提出した場合などには「納税額の15%」(納付税額が50万を超える部分については20%)


(*3)重加算税

重加算税には、過少申告加算税の悪質バージョンと無申告加算税の悪質バージョンとに分けられます。

申告自体はしたが、財産を隠す・偽装などした場合は「追加納税分の35%(過少申告加算税の悪質バージョン)」

申告もしない。さらに財産を隠す・偽装などした場合は「納税額の40%(無申告加算税の悪質バージョン)」

なお、重加算税の場合、過少申告加算税や無申告加算税にプラスされるわけではなく、重加算税単体での課税となります。

あくまでも、重加算税は意図的(悪質)な場合のみに課税されます。

悪意
悪意
重加算税は悪意がある場合に課税されます。

なので、相続人が認知症であったり、被相続人に財産があることを本当にしらなかった場合などには、重加算税までいくことはないと思われます。

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例が使えない

小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たせば、宅地の評価額を最大80%も減額することが出来る制度です。

配偶者の税額軽減の特例とは、1億6000万円 or 法定相続分相当額までを無税(配偶者が相続する場合)で相続できる制度です。

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これらのような特例制度は、原則として、申告期限内に相続税の申告をしないと使えません。

使えない
使えない
原則として、特例制度は相続税の申告を申告期限内にする必要があります。

いくら相続税対策をしっかりしても、申告期限までに申告出来なかった場合には、意味がありません。

また、相続税がかかるどうか微妙のラインで、相続税が0円の場合には、念のため申告はしておきましょう。

動画で解説

相続税の申告をしなかったら、どうなってしまうのか?ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

相続税の申告をしなかったらどうなる?

動画内容

相続税は、小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減といった特例を適用せずに、相続税額が0円になれば申告する必要はありません。

しかし、本当は相続税の申告が必要なのに申告をしなかった場合、あるいは、本当はもっと財産があるのに、少ししか申告しなかった場合、その相続人にペナルティが発生する場合があります。

まず、申告をしなかった場合や、財産や税額を少なく申告した場合には、延滞税と加算税という2つの税金が、本来支払う税金に上乗せされる場合があります。

延滞税とは、相続税の申告期限までに、納税しなかった税額に、遅れて納付した日数分を上乗せする、利息のような税金です。

続いて、加算税とは納めていない税金に対して、その悪質性に応じて上乗せされる税金です。

加算税は、大きく分けて3つあります。

1つ目は、相続財産や税額を少なく申告した場合に発生する過少申告加算税。

2つ目は、まったく申告をしていなかった場合に発生する無申告加算税。

3つ目は、悪質的な、いわゆる意図的にした過少申告や無申告に対する重加算税。

そして、税金を上乗せするペナルティとは別に、悪質な脱税行為は懲役刑を受ける可能性もあります。

相続税は、特に税務署も慎重に調査をしています。

死亡した人の情報は、役所の死亡届で把握していますし、過去の確定申告などの情報から、相続税の対象になりそうな財産も把握していると言われています。

バレないだろうと安易に考えて、相続税の申告を怠ったり、適当に計算して提出することは絶対にやめましょう。

適当
適当
相続税の申告を怠ったり、適当に計算して提出することはやめましょう。