国外財産調書の控えで確認可能
故人(被相続人)の海外財産も、もちろん相続財産です。
しかし、海外にある財産を相続人がまったく知らない、聞かされていない、ということは多々あります。
いざ、相続が発生したら、そもそも海外に財産があるのかどうか分からない。
海外に財産があることは知っているが、どのような財産があるのか分からない。
このような状態ですと、
- 相続税対策が出来ない
- 遺産分割協議がまとまらない
- 適正な相続税の申告が出来ない
ということになります。
では、どうやって被相続人の海外財産を把握するか?
実は平成24年度の税制改正で国外財産を保有する居住者(非永住者の方を除く)には、その保有する国外財産について、国外財産調書を提出することが義務づけられました。
その年の12月31日に時点で、合計で5千万円を超える海外財産を保有する居住者(非永住者の方を除く)は、
- その財産の種類
- 数量及び価額
- その他、必要事項
を記載した国外財産調書を翌年6月30日(令和5年分は令和6年7月1日)までに提出しなければなりません。
なので、この国外財産調書の控えで、故人の海外財産の把握は可能です。
ちなみに申告書の様式は、国税庁HPの国外財産調書(同合計表)に記載されています。
国外財産調書に記載しないとどうなるか?
この国外財産調書制度は、平成26年1月から施行されています。
そして、国外財産調書制度には、所得税や相続税の申告に関して、インセンティブと罰則規定が設けられています。
国外財産調書に海外にある財産を記載するか・しないかで、国外財産に関する申告漏れがあった場合の罰則(過少申告加算税等)の取り扱いが違ってきます。
国外財産調書に記載した財産を、相続税の申告の際に申告モレした場合、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%減額されます。
逆に、国外財産調書に記載していない財産を、相続税の申告の際に申告モレした場合、その申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%加重されます。
故人の海外財産の確認方法を動画で解説
故人の海外財産の確認方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
特定の条件を満たした一部の方を除き(ここでの説明は割愛致します)、海外にある財産もすべて、日本の相続税の対象になります。
よって、海外にある財産も把握しなくてはなりません。
そして、把握する方法として、国外財産調書という書類が、とても役に立ちます。
国外財産調書とは、日本に住んでいる人が、海外に何の財産をいくらもっているか、その内容を税務署に報告するために提出する書類をいいます。
平成26年から、提出が義務付けられるようになりました。
提出の対象となるのは、5,000万円を超える海外財産をもっている人です。
5,000万円を超えるかどうかは、年末の時点で判定します。
もし亡くなった人がこの調書を提出していれば、その控えを見ることによって、海外財産を把握することができる、というわけです。
そんなのちゃんと出しているかな、と心配になるかも知れませんが、この調書は、実は提出するとちょっといいことがあります。
それは、この調書できちんと報告した財産であれば、その財産から生じた所得税や相続税の申告漏れがあったとき、加算税が少し安くなるというものです。
加算税とは、税金を少なく申告していたことが後になってわかったときに、不足していた税額に対して、追加で徴収される税金のことをいいます。
逆に、この調書で報告しなかった財産があって、後からその財産に所得税や相続税の申告漏れがあることがわかったときは、加算税が通常より5%高くなります。
このように提出することにインセンティブがあって、提出しないことにペナルティがある書類なので、制度を知っていれば、きちんと提出している人が多いと思います。
海外に財産がありそうな方が亡くなったときは、国外財産調書の控えがないか探してみてください。