所在不明株主の株式(又は株式売却代金請求権)は相続財産

所在不明株主とは何か?
被相続人が所在不明株主に該当しているか?
該当している場合、相続はどうなるのか?
について解説しています。

所在不明株主とは

所在不明株主とは、株主名簿に記録された住所宛てへの通知、もしくは催告が5年以上継続して到達しない。
そして、継続して5年間剰余金の配当を受領していない株主のことをいいます。

それと相続がどう関係するのか?
関係ないのでは?と思われるかもしれません。

ただ、もしかしたら被相続人(亡くなった方)が、この所在不明株主に該当している可能性もあります。

  1. 被相続人が認知症気味であった
  2. 被相続人が生前に住所を移動している
  3. 株取引をしていたはずだが、株関連の資料が全然ない
所在不明株主
所在不明株主
お父さんは株取引をしていたはずだけど、どこにも資料がないわ。
あなた(娘)知らない?

こんな時には、もしかしたら被相続人が所在不明株主になっているのでは?
と考えてみましょう。

なぜそんな可能性の低いことまでやらなくてはならないの?

そう思われるかもしれません。

ただ、もしも被相続人が所在不明株主に該当する場合、その株式(又は株式売却代金請求権)は相続財産となります。

相続税を正しく申告するためにも、被相続人が所在不明株主に該当するか調べることは必要な作業となります。

株式売却代金請求権とは

所在不明株主やその他の利害関係人に対して、一定の期間内(3か月以上)に異議を述べることができる旨などを公告及び催告すれば、株式会社はその期間経過後に、株式を売却することが出来ます。

売却された場合、その株主(所在不明株主)は株主の権利がなくなります。

ただし、売却後10年以内であれば、その売却代金を請求することが出来ます。

これを株式売却代金請求権と言います。

株式はもちろん、この株式売却代金請求権も相続財産に該当します。

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所在不明株主の確認方法

所在不明株主は、所有する株式の銘柄の株主名簿管理人(多くは信託銀行)で管理されています。

信託銀行所定の様式に「所在不明株主に該当するかどうかの調査を依頼する」旨を記載し提出する必要があります。

また、以下の必要書類の添付も必要です。

  • 相続人代表の印鑑証明書
  • 被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本
  • 相続人代表の戸籍謄本(被相続人との関係が分かるもの)
  • 代理人の印鑑証明書(代理人の場合)
  • 相続人代表からの委任状(代理人の場合)

ちなみに原本は還付されます。

もう一つの確認方法として、一般社団法人 所在不明株主支援機構などのサービスを利用する方法もあります。

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被相続人が保有していた上場株式の確認方法

動画で解説

所在不明株主について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

被相続人が所在不明株主に該当していないかの確認方法

動画内容

みなさんは、所在不明株主という言葉をご存知でしょうか。

もし亡くなられた人が所在不明株主にあたる場合、相続財産を正しく把握するための調査を行う必要があります。

今回は、所在不明株主とはどういった人をいうのか、それが相続にどう影響するのか、どうやって調査すればよいのかを解説いたします。

所在不明株主とは、簡単にいうと、会社から連絡がとれなくなった株主のことです。

株主名簿に記録されている住所に送った通知書や、催告が5年以上継続して届いていない株主で、配当金も5年以上継続して受け取っていないなどの状況があると、所在不明株主として扱われるようになります。

この状態で放置すると、所在不明株主がもっている株式は、売却されることが一般的です。

しかし、売却後10年以内であれば、株式の売却代金を会社に請求することができます。

この請求権のことを、株式売却代金請求権といいます。

では、所在不明株主や株式売却代金請求権といった話が、相続とどう関係するのか、これからご説明いたします。

個人でお持ちの株式や、請求可能な株式売却代金請求権は、相続財産となります。

そのため、もし亡くなられた方が所在不明株主で、売却前の株式がどこかに保管されているのなら、それを調べなければなりません。

株式売却代金請求権がある場合も同じです。

こうした財産を見落としたまま遺産分割をしたり、相続税を申告したりすると、後から財産が出てきたときに、再度、遺産分割を行う羽目になったり、相続税の修正申告をしなければならなくなったりします。

ところで、なぜ所在不明株主になってしまう人が出てくるのでしょうか。理由は、さまざまです。

住所を移動して、そのまま放置してしまったというケースが一般的と思いますが、中には、亡くなられた方がご病気や高齢のため、判断能力が低下してしまい、株式に関係する手続きが適正にできていないことも考えられます。

また、亡くなられたときは所在不明株主ではなかったとしても、相続人が財産を調査しきれなかったことによって、後に所在不明株主になることもあり得ます。

もし、亡くなられた方の遺品を整理しているとき、「株取引をしていたはずなのに株関連の資料が全然ない」というときは、所在不明株主になってしまっている可能性があることも視野に財産を調査しましょう。

それでは最後に亡くなられた方が、所在不明株主かどうかを確認する方法についてお話を致します。

株主の情報は、所有している株主の発行会社の株主名簿管理人によって管理されています。

ほとんどの場合は、信託銀行が会社から委託を受けて株主名簿管理人をやっています。

銘柄に見当がついているときは、「会社名 株主名簿管理人」などで検索をすると、どこの信託銀行が株主名簿管理人をやっているのか調べることができます。

信託銀行がわかれば、ご家族が所在不明株主にあたるかどうかを、信託銀行に問い合わせて調べてもらうことが可能です。

調べてもらうときの一般的な流れとしては、まず信託銀行に連絡をして、銀行が指定する様式で調査を依頼し、後日回答をもらうようになります。

調査を依頼するときは、株主の相続人であることがわかるように

  • 被相続人の死亡の事実が分かる戸籍謄本
  • 相続人代表の戸籍謄本など、亡くなられた株主との関係が分かるもの
  • 相続人代表の印鑑証明書

などの書類も必要になります。

他にも所在不明株主のサポートを専門とする団体に、「一般社団法人所在不明株主支援機構」があります。

こちらに問い合わせてみるのもいいでしょう。