
故人が大切にしていた形見の品は、親族などで分け合う思い出の品です。一般的な慣習として、これらは相続財産には含まれず、相続税もかかりません。そのため、原則として遺産分割協議の対象外となります。
亡くなった人の愛用品などを、親族や親しい友人で分け合う「形見分け」という慣習があります。
形見と呼ばれる品物は、一般的に財産的な価値が低いため、相続財産には含まれません。
そのため、遺産分割協議を行う必要はなく、相続税もかからないのが原則です。
厳密には形見も遺産の一部ですが、日用品については慣習として遺産分割の対象外とすることが認められています。
形見分けを行う時期としては、四十九日などの忌明けの法要で親族が集まったタイミングで話し合うとスムーズです。
ただし、相続税の申告が必要なケースでは注意しなければなりません。
細々した遺品や日用品であっても、申告書には「家財一式」として数万円から数十万円程度でまとめて計上するのが一般的な実務です。
また、形見として扱えるのは、あくまで財産価値がさほど高くないものに限られます。
たとえば、数十万円以上の価値がある高級時計、貴金属、骨董品などは、形見ではなく立派な相続財産です。
実務上の目安として、1個または1組で5万円を超えるような品物は、家財一式とは分けて個別に評価の対象にするのが無難とされています。
数千万円もするダイヤの指輪を、「形見だから」という理由だけで非課税で受け取ることはできません。
このような高額な品物は遺産分割の対象となり、当然ながら相続税の課税対象にも含まれます。
遺産分割もしておらず、遺言書もない場合、その高額な形見は相続人全員の共有財産となります。
また近年は、スマートフォンやパソコンなどを形見とするケースも増えており、取り扱いには注意が必要です。
本体自体の価値は低くても、中にネット証券や暗号資産(仮想通貨)といった見えない財産が残っている可能性があります。
さらに、有料アプリや動画配信サービスなどの継続課金(サブスクリプション)が契約されたままになっていることも少なくありません。
形見分けとして本体を渡したり、初期化して処分したりする前に、必ず財産的な価値が含まれていないか、あるいは解約漏れがないか中身を確認しましょう。
遺産分割が終わる前や、遺言書がない状態では、形見の品も法的にはいったん相続人全員の共有財産という扱いになります。
そのため、一部の人が勝手に形見分けとして誰かに品物を渡してしまうと、共有財産の無断贈与となってしまいます。
生前に故人から「これはあの人に渡してほしい」と言われていたとしても、まずは相続人の共有物として扱われます。
後々の相続トラブルを防ぐためにも、形見分けは必ず相続人全員の合意を得てから行いましょう。
合意を得る前の実践的な対策として、遺品を動かす前や形見分けをする前に、スマートフォン等で遺品の写真を撮っておくことをお勧めします。
これは、「誰かが勝手に高価なものを持ち去ったのではないか」といった、親族間の疑心暗鬼を防ぐためです。
また、形見分けにおいて非常に注意すべき点として「相続放棄ができなくなるリスク」が挙げられます。
価値のある遺品を勝手に分けたり処分したりすると、法律上「遺産をすべて相続する意思がある(単純承認)」とみなされてしまいます。
これをしてしまうと、後から故人に多額の借金があることが判明した場合でも、相続放棄ができなくなってしまう恐れがあります。
アルバムや手紙などの財産価値がない真の形見であれば処分しても問題ありませんが、判断に迷う品物の取り扱いには十分な注意が必要です。

もし、高額な品物を形見分けとして故人の友人に渡してしまった場合、受け取った側には贈与税がかかる可能性もあります。
贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、必ずしも全員に税金が発生するわけではありませんが、高額な品物を渡す際には課税リスクを考慮する必要があります。
「この品物は形見として分けても大丈夫だろうか」と迷った場合は、勝手な判断をせずに慎重に取り扱うのが無難です。
軽率な形見分けは、遺産分割協議のやり直しや、相続税計算への悪影響を及ぼす恐れがあります。
相続税対策や、形見の取り扱いについて不安なことがある場合は、ぜひ都心綜合会計事務所にご相談ください。
当事務所では無料の個別相続相談を承っております。
なお、お電話でのご相談は承っておりません。
亡くなった人の形見が遺産分割の対象になるのか、また、相続税の対象になるのかについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容について解説します。
一般的に形見というと、亡くなった人が大事にしていた衣服、写真や日記、時計や書籍といったものだと思います。
こうしたものは相続人にとっては大切な思い出ですが、財産的な価値は通常ありません。
そのため、慣習的にこうした形見は、相続財産ではないものとして取り扱います。
遺産分割の必要もなく、相続税もかからない、というわけです。
しかし、物には限度というものがあります。
もしそれが数千万円もするダイヤだったら、いくら形見と言い張っても、その相続税を免除するようなことはできません。
こうした価値のあるものは、遺産分割をするまでは、相続人全員の共有の財産という扱いになります。
一部の相続人だけで、勝手に形見だと決めつけて処分をしてしまったり、亡くなった人の友人に勝手にあげたりすることはできません。
では、どこからが形見で、どこからが相続税の対象になるのでしょうか。
残念ながら、この線引きは明確にはできません。
鑑定しないと価値がわからないようなものもあります。
そのため、後でトラブルに発展しないためにも、形見かどうか迷ったときは、まずは相続人全員の合意のもとで、他の財産と同じように分けてください。