遺骨・遺骸・系譜・祭具・墳墓は相続財産ではない
遺骨・遺骸は相続財産にならないのは、常識的に分かるかと思います。
そもそも遺骨・遺骸は、被相続人の財産ではないからです。
ただ、系譜や墳墓(ふんぼ)、祭具などは相続財産になるのか?
迷われる方もいらっしゃるかと思います。
家系の立場から考えれば、系譜などは立派な財産かと思われるかもしれませんが、相続税の観点からは遺産の範囲外となります。
なので、相続税の対象にはなりませんので、遺産分割協議で誰がその系譜を相続するのかを決める必要もありません。
また、祭具や墳墓も遺産の範囲外となります。
相続税対策の打合せにおいて、遺骨・遺骸・系譜・祭具・墳墓は相続財産ではないので、度外視する場合がほとんどですが、誰が承継するのかを決めておくことは、意外と重要な場合もあります。
ところで、形見はどうなるの?と思われた方もいらっしゃると思います。
形見は原則は相続財産になりません。
詳しくは、形見は原則、相続財産ではないので遺産分割は不要に記載しています。
系譜や祭具は誰が承継するのか?
相続財産でない系譜や祭具は、遺産分割の対象外です。
そうなると、誰がこの系譜や祭具を承継するのか?
これは被相続人が指定するのが基本です。
そして、指定は遺言による必要はありません。
ただ、遺言で指定することも、もちろん可能です。
また、承継させる相手を相続人に限定する必要もありません。
内縁の妻や、相続人でない兄弟を指定することも可能です。
ただ、承継者の指定がない場合には、慣習を考慮したり、相続人間で協議して決めるのが一般的です。
それでも決まらない場合は、家庭裁判所(調停や審判)で決めることになります。
ちなみに、系譜や祭具等は相続財産ではないので、相続放棄の有無は関係ありません。
相続放棄をしている人でも、承継できます。
遺骨や遺骸は誰が引き取るのか?
遺骨や遺骸は配偶者や子供が引き取るのが当たり前と思われるかもしれませんが、引き取りで揉める場合があります。
それは内縁の妻と戸籍上の妻の間で、起きる場合が多いです。
ちなみに、被相続人が内縁の妻に「遺骨や遺骸を引き取るようにと指定」していた場合は、そのようになります。
指定がない場合には、実情に応じて協議により解決します。
それでも解決しない場合は、家庭裁判所(調停や審判)で決めることになります。
遺骨や系譜や祭具の相続を動画で解説
遺骨や系譜や祭具の相続について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
本日は、遺骨や系譜(けいふ)、祭具(さいぐ)といったものの、相続についてお話しを致します。
系譜や祭具というのは、ちょっと聞きなれない言葉だと思いますので先にご説明を致します。
まず系譜とは、先祖代々の家系図のことです。
祭具とは、仏壇やお位牌(おいはい)、神棚などのことで礼拝に必要な道具のことを指します。
どのような祭具が家にあるかは、信仰する宗教によって変わると思います。
さて、遺骨や、先祖代々守ってきた系譜や祭具、お墓といったものは、お金や不動産といった一般の財産とは区別されます。
遺骨はそもそも、亡くなった人の財産ではないため、区別されることはわかりやすいと思います。
問題は系譜や祭具、お墓などですが、これらはお金や不動産のように、誰がもらってもいいものではありません。
きちんと守っていける人が受け継ぐべきです。
では、誰がこれを受け継ぐのかというと、法律では、亡くなった人が生前に指定した人や、慣習にしたがって承継すべき人が受け継ぐこととされています。
誰も受け継ぐ人がいないときや、慣習が不明なときは、家庭裁判所で誰が受け継ぐかを決めます。
ですので、お金や不動産のように遺産分割をして、誰が受け継ぐかを決める必要はありません。
何なら、相続人以外の人が受け継いでも構いません。
これらを受け継いでも、相続税はかかりませんので心配はいりません。
ところでお墓や系譜、祭具は、誰かと取り合いになるようなことはあまりないとは思いますが、ときどき、遺骨の取り合いが起こることがあります。
たとえば、亡くなった人の内縁の妻と、戸籍上の妻との間で遺骨を取り合うケースです。
このケースも解決しないときは、家庭裁判所の調停や審判で、誰が遺骨を引き取るか決めることになります。
あまり考えたくないケースですが、相続では通常の財産とは別に、こうしたことも気にしないといけないことを知っておいて下さい。