私道をしっかり遺産分割しないと揉める場合がある
建物が複数あり、各建物は○○に相続するなどと、しっかり記載されている遺言書でも、建物と建物の間の私道に関してはまったく記載がない場合があります。
また、△△建物は長男へ、それ以外は次男へなどの遺言書の場合には、遺言書通りに相続すると私道は次男のものになります。
建物の敷地内にある私道だけを別の相続人が相続すると、権利関係などで揉める場合があります。
私道の権利関係として
- 通行権
- 掘削権
などがあり、△△建物を取り壊して再開発を行う場合などにも、権利関係で揉める可能性が出てきます。
なので遺言書の作成や遺産分割協議書を作成する場合には、必ず私道についても明記しましょう。
私道は固定資産税の課税明細に記載されない場合がある
公共の用に供する道路、いわゆる不特定多数の人が通行の用として利用する私道の場合、相続税評価額が0円になります。詳しくは私道かどうかの判定方法、及びその相続税評価方法に記載しています。
また、通常は私道は個人が所有する土地なので、固定資産税が課税されます。
ただ、不特定多数の人が通行の用として利用する私道(公共の用に供する道路)の場合には、固定資産税も非課税になります。
固定資産税が非課税だと、固定資産税の課税明細にその私道が記載されません。
そのため固定資産税の課税明細のみで、被相続人の不動産の確認をした場合、私道の存在を見落としてしまいます。
私道に接道している土地を相続する場合には、私道も一緒に相続する必要があります。
遺言書に私道の記載がない場合には、未分割財産として遺産分割協議をする必要が出てきます。
私道を見落とさないためにも、不動産の確認は土地家屋名寄帳で行いましょう。
詳しくは名寄帳で被相続人名義の不動産一覧(共有を含む)を確認できるにて記載していますが、土地家屋名寄帳であれば、所有する土地や家屋の情報がすべて記載されています。
もちろん私道も記載されています。
相続税申告や相続税対策をするためにも、まずは相続財産の確認が最重要です。
その中でも私道はモレやすい財産ですので、注意しましょう。
私道について動画で解説
私道について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
今回は相続財産の中でも珍しい私道の話を致します。
私道は立派な相続財産なのですが、遺産分割から漏れてしまうケースが多いです。
理由は、私道が固定資産の課税明細書に記載されていないことがあるからです。
実は私道の中でも不特定多数の人が通行できるような道の場合、公共のもののように扱われ、固定資産税も相続税もかからないことになっています。
持ち主や相続人としては、ありがたいことです。
ところがそうなると、市役所から送られてくる固定資産税の課税明細書に私道の存在が記載されなくなります。
そのため持ち主本人も遺言書を書く時に、私道のことを忘れてしまうことがあります。
相続人については、そもそも存在さえわからないため、遺産分割からは当然モレてしまいます。
そして何が問題になるかというと、この私道の権利が重要となる場合です。
私道には通行権や掘削権(くっさくけん)などがあって、たとえば、そのあたりの再開発を行う場合などに誰が相続したかがはっきりしないと、権利関係でもめる可能性があります。
せっかく遺産分割をしたのに数年後に私道のことでまた話し合うというのは、想像するとあまりいい気分ではないかと思います。
それでは相続財産に私道があるかどうか調べるには、どうしたらよいのでしょうか?
この場合、土地家屋名寄帳を取り寄せる方法がベストです。
この方法であれば、税金のかからない私道も漏れなく発見できます。
土地家屋名寄帳は自治体に請求することで入手できます。
私道1つでまた遺産分割を行うというようなことがないように、相続のときにきちんと調べることが大切です。