
100株などの最低売買単位に満たない「単元(たんげん)未満株」は、相続財産の調査で非常に見落とされやすい財産です。正確な相続税の申告や遺産分割を行うために、正しい調べ方を把握しておきましょう。
上場株式には、1単元(100株など)というまとまった最低売買単位に満たない「単元未満株」が存在します。
最近はスマホ証券などでミニ株として自ら購入する人も増えており、これらは証券会社の残高証明書にきちんと記載されます。
しかし、相続で厄介なのは「証券会社の残高証明書には一切載らない単元未満株」です。
その代表例が、2009年の株券電子化の際に証券会社の口座へ預け入れられなかった「タンス株(古い紙の株券)」です。
これらの古い株券は現在、証券会社ではなく、信託銀行などが管理する「特別口座」という場所で保管されています。
過去の株式分割や企業の合併などによって意図せず単元未満株が発生し、そのまま特別口座に取り残されているケースは珍しくありません。
普段やり取りしている証券会社の残高証明書を取得しただけでは、この特別口座の存在には気づけないため十分な注意が必要です。
被相続人の特別口座に単元未満株が残っているかどうかは、配当金の受取方法を見るだけで簡単に判明することがあります。
もし特別口座で管理されている株式が1銘柄でも存在する場合、証券会社の口座において「株式数比例配分方式」という配当金の受取方法を選ぶことができません。
これはシステム上の明確なルールとなっています。
裏を返せば、被相続人の証券口座での配当金受取方法が「株式数比例配分方式」に設定されていれば、特別口座の単元未満株は一つも存在しないと断言できます。
この受取方法は、取引先である証券会社のWeb画面や、定期的に届く取引明細などで確認することが可能です。
配当金の受取方法が株式数比例配分方式以外になっており、単元未満株の存在が疑われる場合は本格的な調査へと進みます。
もっとも手軽で確実な方法は、自宅に届いている郵便物を確認することです。
単元未満株であっても配当金を受け取る権利はあるため、信託銀行から「配当金計算書」や「配当金領収証(郵便局で換金する用紙)」が郵送されてくるはずです。
ただし、業績不振で無配(配当金ゼロ)の銘柄の場合は、書類が届かないこともあります。
郵便物が見つからない時は、被相続人の預金通帳の入金履歴を確認しましょう。
配当金は6月や12月頃に振り込まれることが多いため、「配当金」や「〇〇信託銀行」という記載がないか入念にチェックします。
郵便物や通帳の履歴から、株式を管理している信託銀行(株主名簿管理人)が分かったら、その信託銀行の証券代行部へ電話をかけます。
電話口で「被相続人の相続開始日における特別口座の残高証明書を取得したい」と伝え、手続き用の書類を取り寄せましょう。

もし、郵便物や通帳といった手がかりが全く見つからない場合は、証券保管振替機構(通称:ほふり)に対して「登録済加入者情報の開示請求」を行うのが最も確実なルートです。
ほふりへの開示請求はWeb上では完結せず、所定の申請書をダウンロードして郵送で手続きを行います。
通常の相続手続きとは異なり、ほふりに提出する戸籍謄本などはすべて「コピー(原本不可)」で良いという独自のルールがある点に注意してください。
開示手数料は1件につき税込6,050円かかり、結果が郵送されてきた際に代金引換で配達員に支払います。
なお、戸籍謄本の代わりに「法定相続情報一覧図の写し(コピー)」を提出すると1,100円の割引が適用され、税込4,950円となるため大変お得です。
一点、重要な注意点として、現在はほふりの手続きが大変混み合っています。
必要書類に不備がない場合でも、書類の受付から開示結果が手元に届くまでに1か月程度かかりますので、余裕を持って手続きを進めましょう。
ほふりの開示結果を見ると、「どこの信託銀行・証券会社に口座があるか」という金融機関の一覧が判明します。
具体的な銘柄名までは記載されていないため、判明した信託銀行へ自ら連絡を取り、残高証明書の発行を依頼するという流れになります。
信託銀行に連絡した際は、過去の受け取りそびれた配当金(未受領配当金)がないかどうかも必ず確認してもらってください。
未受領配当金も立派な相続財産となるため、計上漏れを防ぐために不可欠な作業です。
ただし、配当金には時効があり、多くの企業が定款で「支払開始日から3年(または5年)」と定めており、これを過ぎると受け取る権利が消滅してしまいます。
単元未満株は少額であることが多いですが、ちりも積もれば大きな金額となり、申告漏れを指摘されやすい財産でもありますので、根気強く調査を行いましょう。
調査の末に見つかった特別口座の単元未満株は、そのままの状態では証券市場で売却することができません。
特別口座は、あくまで失効した株券の代わりに権利を管理するための仮の器に過ぎないからです。
これらを現金化したり相続人が引き継いだりするためには、主に3つの解決策が用意されています。
1つ目は、株式を発行している企業に直接買い取ってもらう「買取請求(かいとりせいきゅう)」です。
2つ目は、相続人ご自身の証券口座へ株式を移管する「口座振替」を行い、そのまま保有したり、証券会社を通じて売却したりする方法です。
この場合、移管先は銀行の預金口座ではなく「相続人名義の証券口座」でなければならず、口座を持っていなければ新規開設が必要です。
ここで注意したいのは、一部のネット証券などでは単元未満株の移管(入庫)や取り扱いに対応していないケースがある点です。
移管手続きを進める前に、ご自身の証券会社が単元未満株の受け入れに対応しているか、あらかじめ確認しておくと安心です。
3つ目は、不足している株数を買い足して1単元(100株など)の通常の株式にする「買増請求(かいましせいきゅう)」です。
親族にゆかりのある企業の株なので売らずに持ち続けたい、といったケースで活用されます。
ただし、企業によっては定款で買増請求を不可としている場合もあるため注意が必要です。
特別口座での買取や買増、証券口座への移管の手続きは、いずれもその銘柄を管理している信託銀行の窓口で行うことができます。
証券口座へ移管した後に売却する場合は、移管先の証券会社での手続きとなります。
残高証明書を取り寄せるタイミングなどで、その後の売却や移管の手続きについて信託銀行に相談しておくと、二度手間を防ぐことができます。