
貸金庫の中身を調べずに遺産分割協議を進めていたら、金庫から誰も知らなかった不動産の権利証が出てきて、話し合いがやり直しというようなケースがあります。貸金庫には自筆証書遺言や登記済みの不動産の権利証が保管されていることがあります。遺産分割協議の前に、必ず貸金庫の内容を確認しましょう。貸金庫の開扉は、原則として相続人全員の同意が必要ですが、公証人に立ち会いを依頼して手続きを行うこともできます。
被相続人に貸金庫の契約がある場合は、必ず貸金庫の中身を確認する必要があります。
これは相続財産の確認という意味ももちろんありますが、相続税対策や税務調査にも必要なことです。
例えば貸金庫には、自筆証書遺言や登記済みの不動産の権利証などが保管されていることが多いです。
特に2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知ってから3年以内の登記が必要になりました。
貸金庫の中に把握していなかった不動産の権利証が眠っていた場合、放置すると罰則の対象になる恐れもあるため、早期の確認がより一層重要になっています。
貸金庫の中身も調べずに、相続税対策として遺産分割協議などを進めてしまったとします。
その後、貸金庫から自筆証書遺言が発見され、まとまった遺産分割協議案が暗礁に乗り上げるケースがあります。
こういうことを避けるためにも、できるだけ早く、被相続人が契約していた貸金庫の中身をチェックしましょう。
そして、税務調査においても、貸金庫はチェックされやすいです。

基本的に税務調査では、申告書に記載されている財産よりも、申告書に記載されていない財産がないかを調べようとします。
よって、貸金庫の中に他に相続財産がないかということも調べられます。
相続税対策や税務調査という観点からも、必ず被相続人の貸金庫の内容物を調べましょう。
金融機関は相続の発生を確認したら、被相続人名義の預金を凍結し、引き出せないようにします。
そして、預金と同じように貸金庫も凍結します。

現在の預貯金には、遺産分割前でも一定額まで単独で引き出せる「仮払い制度」があります。
しかし、貸金庫にはそのような例外ルールはありません。
原則として全員の同意が必要になるため、預金の凍結解除よりもハードルが高いと覚えておきましょう。
貸金庫を開扉するには、原則として相続人全員の同意と手続き書類への署名・捺印が必要です。
ただし、手続きの準備さえ整えば、開扉当日の立ち会いは代表の相続人1名で済む金融機関が多くなっています。
各金融機関により必要とされる書類等は異なりますが、概ね以下のような書類が必要となります。
金融機関は、相続人が他に隠れていないかを確認するため、出生から死亡までのすべての戸籍謄本を求めます。
なお、2024年3月1日より戸籍謄本の広域交付制度が始まりました。
これにより、最寄りの市区町村の窓口で出生から死亡までの戸籍をまとめて取得できるようになり、大変便利になっています。
一番新しい死亡記載のある戸籍だけでは手続きできないことが多いので、注意しましょう。
法務局で無料で取得できる「法定相続情報一覧図の写し」があれば、分厚い戸籍の束の代わりになりスムーズです。
事前に金融機関へ、必要書類や印鑑証明書の有効期限、立ち会いの条件などを確認することが大切です。
貸金庫の中に遺言書があるかどうかも分からない段階で、相続人全員の同意を集めるのが困難なケースがあります。
遺言書を探す目的のみであれば、相続人の1人からの申し出で貸金庫を開けてもらえる実務対応が行われていることもあります。
ただし、銀行によっては後々のトラブルを恐れて、公証人の立ち会いが必須と言われたり、頑なに拒否されるケースも珍しくありません。
どうしても銀行が応じない場合の最終手段として、家庭裁判所の「証拠保全手続き」という強制力のある方法を利用することも考えられます。
ただし、手続きが複雑なため弁護士等の専門家のサポートが必要になるケースが多いです。
もし銀行が応じてくれた場合は、銀行員の立ち会いのもと行われます。
遺言書以外のものは一切持ち出すことができません。
金融機関によっては、トラブル防止のため遺言書であっても相続人全員の同意がないと持ち出しを認めないケースもあります。
また、ここで見つかった遺言書が法務局保管ではない「自筆証書遺言」の場合、家庭裁判所での「検認(けんにん)」手続きが必要です。
特に、封がされている場合は絶対にその場で開けてはいけません。
勝手に開封すると5万円以下の過料に処される可能性があります。
すでに自筆証書遺言(法務局保管)や公正証書遺言が見つかっており、そこで遺言執行者が指定されているケースがあります。
その場合は、相続人全員の同意がなくても、原則として遺言執行者の権限単独で貸金庫を開扉することができます。
しかし、遺言書の中に「貸金庫の開扉や解約に関する権限」が明確に記載されていないと、金融機関が難色を示すことがあります。
実務上は、遺言執行者がいても相続人全員の同意を求められるケースがあるため、事前に金融機関へ確認することが大切です。
貸金庫の開扉に当たっては、公証人に立ち会いを依頼し、貸金庫の内容物を記載した事実実験公正証書を作成してもらうこともできます。
詳しくは日本公証人連合会の事実実験公正証書の閲覧をお願い致します。
貸金庫の開扉をする当日、公証人はその内容物を確認し、記録し、写真撮影をします。
その後、数日をかけて公正証書を作成します。
そして、その公正証書は高度の証明力を有します。
そのため、相続財産の証明や相続税の調査においても有効に活用できます。
公証人立ち会いの手続きをする場合には、事前に公証役場へ相談に行きます。
その上で以下の書類を渡し、貸金庫の開扉の日程を調整します。
相続人が複数いる場合は、相続人の中の1人が嘱託人となります。
費用は以下のとおりです。
なお、公証人が立ち会う場合でも、金融機関によっては「相続人全員の同意」がないと開扉を拒否する厳しいケースが存在します。
この方法をとれば必ず開けられるとは限らないため、こちらも事前に金融機関とよく協議しておきましょう。
被相続人の貸金庫がある場合は、必ず貸金庫の内容物を確認しましょう。

貸金庫の内容物如何によっては、遺産分割や相続税対策や税務調査の全てに大きな影響を及ぼします。