遺産の代償分割の方法やそのメリット・デメリット

遺産の代償分とは、そもそも何のか?また、そのメリットやデメリットは?代償分割の方法などについて、解説しています。

代償分割のメリット・デメリット

遺産の代償分割とは、遺産を多く相続した相続人が、他の相続人に金銭等を渡すことにより、相続人間の公平を図ろうとする方法です。

公平
公平
遺産の代償分割とは、遺産を多く相続した相続人が他の相続人に金銭等を渡すことにより、相続人間の公平を図ろうとする方法

たとえば、1億2,000万円の土地を相続人4人(長男・次男・長女・次女)で、相続することになったとします。

その土地を共有で相続するか、分筆して相続するか?

検討した結果、どちらの方法も良さそうではない。
(なお、共有での相続については共有財産は相続トラブルの元、分筆については土地を分筆して評価額を減額する相続税対策に詳しく記載しております。)

そこで、一旦土地を全て長男に相続させて、その代わりに長男から、次男・長女・次女にそれぞれ3000万円ずつ、現金で支払うようなことを代償分割といいます。

この代償分割は、以下のような場合に、実際によく使われる手法です。

  • 土地が一つしかない
  • 夫や妻に、相続財産があることを隠したい
  • 土地などを相続しても管理が面倒、使い道がない

遺産の代償分割のメリットは

  1. 相続人間の公平を図れる
  2. 権利関係が複雑にならない形で遺産を相続できる

といったことが挙げられます。

ただ、上記の例で言えば、長男が他の相続人に支払う現金が必要となってきます。

実際に遺産を相続する方が、代償金を支払うだけの資金力が必要というデメリットがあります。

資金力
資金力
遺産の代償分割には、代償金を支払うだけの資金力が必要というデメリットがあります。

ただし、実際に遺産を相続した方が、すぐに支払う現金がない場合は、分割払いという方法も選択できます。

分割払い
分割払い
遺産の代償分割には、分割払いという方法もあります。

上記のように土地を相続して、その土地を運用した代金から、他の相続人に現金を支払っていくという方法もあります。

代償分割の方法

遺産の代償分割の方法には、上記のように現金ではなく、「相続人固有の財産」で行うことも出来ます。

たとえば、金銭に換えて相続人固有の不動産を、他の相続人に渡すなどといった方法です。

ただし、この方法には注意点が必要です。

不動産を他の相続人に渡す場合には、時価で売却したのと同様に取り扱いとなり、「譲渡所得税の申告」が必要となります。

譲渡所得税の申告
譲渡所得税の申告
不動産で代償分割をする場合には、譲渡所得税の申告が必要です。

もちろん、取得価額等を差し引いて売却益がでれば、その売却益に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。

代償分割のやり方しだいでは贈与税の対象に?

以下のような場合には、贈与税の対象になる可能性もあります。

相続人が長男・長女とします。

相続財産として3,000万円の土地と、受取人が長女に指定されている生命保険金が5,000万円だとします。

長男と長女が協議した結果、以下のように遺産を相続することに決めたとします。

  1. 長男:土地3,000万
  2. 長女:生命保険5,000万
  3. 長女 → 長男へ現金1,000万円への支払い

この場合、長男・長女とも4,000万円ずつ相続したことになり、一件落着かと思われます。

ただし、長女 → 長男へ現金1,000万円への支払いが、贈与税の対象になったという事例もあります(金額等は仮です)。

理由としては、生命保険の

  1. 受取人が指定されていた
  2. 生命保険の受取人が生命保険以外の相続財産を相続していない

からです。

詳しくは代償分割には生命保険が有効だが、場合によっては贈与税の対象になるに記載しています。

指定
指定
生命保険の受取人が指定されており、生命保険金を他の相続人に代償分割として渡した場合、贈与税の対象になる危険が・・

このように、遺産の代償分割のやり方には細心の注意が必要です。

やり方によっては、所得税や住民税、贈与税の対象となってくるからです。

代償分割をする場合は、必ず遺産分割協議書に代償分割の内容を明記しましょう。

代償分割の内容が遺産分割協議にない場合、贈与税の対象になってくる可能性があります。

代償分割の方法として法人を利用する

法人を設立して、相続税対策をするという方法があります。
(詳しくは不動産管理会社で所得分散や不動産名義を法人にし財産圧縮を図る会社設立で被相続人の生前中に財産を移転するにて記載しています。)

この法人の利用は、相続税対策にも使えるのですが、代償分割にも使えます。

正確には代償分割と同様の効果を発揮できます。

法人
法人
法人を利用して、代償分割と同様の効果を得ることも出来ます。

例えば1億6,000万円の土地を相続人4人(長男・次男・長女・次女)で、相続することになったとします。

この時に、長男が土地を全て相続し、それに伴い不動産管理会社を設立します。

そして、その不動産管理会社に長男はもちろん、次男・長女・次女も役員とします。

そして、その土地の運用益から次男・長女・次女に「役員報酬を支払っていく」という方法です。

正確には代償分割とは言えませんが、同様の効果は見込めます。

ただ、

  • いつまで役員でいるのか?
  • 法人が赤字になった場合はどうするのか?
  • 申告などの事務手続きの負担はどうするのか?

など、色々と決めなければならないこともあります。

動画で解説

遺産の代償分割について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

遺産の代償分割

動画内容

遺産の代償分割とは、何人かいる相続人の中で、他の人よりも多く遺産を相続した人が、他の相続人にお金などを渡して、相続人の間で不公平がおきないようにする方法です。

例えば都心で4000万円の土地を、長男、次男、長女、次女の4人で相続になった場合で考えてみましょう。

この土地を4つに分けたら、とても小さくなってしまいます。

そして実家の土地だから、誰かに売るのも嫌なんです。

そんな時、長男が土地を全部相続して、その代わりに長男から他の3人に、4000万円を4で割った金額である1000万円ずつをお金で払います。

こうすれば、4人が平等な相続をしたことになります。

このようなやり方を、代償分割と言います。

遺産の代償分割は、相続する人の間で相続額が公平になること、また土地を共有名義にして、次の世代で権利関係を複雑にしないで済むこと、これがメリットとなります。

ただし、この例では、長男は3000万円の現金を用意しなければなりません。

これがデメリットです。

一気に3000万円払うのは大変なので、分割払いもできます。

相続した土地にマンションを建てて、その収入から払うこともできます。

遺産を代償分割する時には、必ず遺産分割協議書にその内容を書きましょう。

遺産の代償分割には、現金以外に土地などを渡すこともできますが、譲渡所得税や贈与税の対象になることがあります。

遺産の代償分割でお悩みの方は、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。