
父が亡くなり、その悲しみも癒えないうちに母までも亡くなってしまった…。このようなケースでは、悲しみに暮れる間もなく膨大な手続きが押し寄せてきます。税金のことなど考えられない状況かもしれませんが、要件を満たせば「配偶者控除」を使って税負担を軽くすることが可能です。
父の相続手続きを進めている最中に、母までもが亡くなってしまった。
父の財産の全容すら把握できておらず、遺産分割の話し合いもまとまっていない状態での突然の別れ。残されたご家族にとって、精神的にも肉体的にもこれほど辛いことはありません。
悲しみと、容赦なく押し寄せる手続きの嵐。「もう相続税のことなんかどうでもいい、とりあえず手続きだけでも早く終わらせたい」と自暴自棄になってしまう方も少なくありません。

しかし、現実は待ってくれません。葬儀の手配などと並行して、厳格な期限が定められている相続税の申告も進めなくてはいけません。
両親が立て続けに亡くなられた場合でも、気をしっかりと保ち、まずは深呼吸をして一つ一つの相続手続きに向き合っていきましょう。
「父が亡くなり、遺産の分け方が決まる前に母が亡くなった。この場合、父の相続において、母がもらうはずだった配偶者控除の特例は使えなくなってしまうの?」
配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、残された配偶者の生活を保障するため、配偶者が取得した財産が「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額まで相続税が無税になる、非常に手厚い制度です。
ただし、この強力な特例を使うための大原則として、「配偶者が財産を分割により取得していること(未分割ではないこと)」という要件があります。
では、遺産分割協議を行う前に母が亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか?
結論から言うと、このような状態であっても、残された相続人(子供など)が以下の要件を満たせば、父の相続税申告において配偶者控除を適用することが可能です。
※申告期限についての注意
父の相続税の申告期限は、原則として「父の死亡から10か月以内」です。母の死亡によって、母が払うはずだった分の申告期限は「母の死亡から10か月以内」に延長されますが、子供自身の申告期限(父の死亡から10か月)は延長されません。期限に遅れないよう注意が必要です。
このように、遺産分割が未確定のまま両親が立て続けに亡くなった場合でも、配偶者控除の適用は可能なのです。
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。
配偶者控除が使えるからといって、「とりあえず父の財産はすべて母に相続させて、父の相続税をゼロにしよう」と考えるのは危険です。
なぜなら、母に相続させた財産は、すぐさま「母の相続(二次相続)」として子供たちに引き継がれ、そこで多額の相続税が発生してしまう可能性が高いからです。子供が引き継ぐ際には、当然ながら配偶者控除は使えません。
また、短い期間(10年以内)で立て続けに相続が起きた場合、1回目の相続(父)で支払った税金の一部を、2回目の相続(母)の税金から差し引ける「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」という負担軽減ルールがあります。しかし、配偶者控除を使って父の相続税を「ゼロ」にしてしまうと、このルールが全く使えなくなってしまいます。
ご両親がすでに他界されている今の状況は、見方を変えれば「父と母のトータルの相続税を一度にシミュレーションして、最も負担が少なくなる遺産分割ができるチャンス」でもあります。
心境としてお辛い時期かとは思いますが、目先の税金だけにとらわれず、二次相続や相次相続控除も踏まえた相続税対策をきっちりと行いましょう。最適な分け方については、相続専門の税理士にご相談されることを強くおすすめします。
両親が立て続けに亡くなった場合の相続税の配偶者控除について、税理士法人 都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
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