
二次相続は一次相続の時よりも、配偶者の税額軽減の特例が使えないなどの理由により、相続税が多額になる傾向があります。さらに、遺産分割のまとめ役になりやすい配偶者もいないため、相続トラブルに発展しがちです。近年の法改正(配偶者居住権、生前贈与の加算期間延長、相続登記の義務化)も踏まえ、一次相続の段階から二次相続を見据えた対策を行いましょう。
二次相続とは、夫(もしくは妻)の一次相続により財産を取得した妻(もしくは夫)が死亡した際に発生する相続のことをいいます。子供から見れば、両親の「2回目の相続」にあたります。
この二次相続は、一次相続の時よりも「相続税が多額になりやすい」「相続トラブルに発展しやすい」という大きな特徴があります。
税金が高くなる主な理由は以下の通りです。
配偶者の税額軽減の特例の詳しい内容は、相続税の配偶者控除で1億6千万円か法定相続分まで無税に記載しています。
また、もめやすい理由として大きいのが「まとめ役の不在」と「未登記問題」です。
一次相続の時は、残された配偶者(母親または父親)が存命であるため、その存在が抑止力やまとめ役となり、遺産分割協議が円滑に進む傾向があります。

しかし、二次相続では子供達だけで遺産分割を行う必要があり、お互いの主張がぶつかり合うトラブルに発展しがちです。
さらに近年注意したいのが「相続登記の義務化」です。2024年4月より相続登記が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必須となりました。過去の相続分についても原則として2027年3月31日までという期限が設けられています。
一次相続の際に実家の名義変更を放置したまま二次相続が発生してしまうと、権利関係が複雑化し、子供たちが手続きをする際に極めて大きな揉め事に発展するリスクが高まります。
だからこそ、もしも既に一次相続が完了しており、次の相続人が子供達だけになる場合は、遺言書の作成がこれまで以上に重要になります。付言事項に想いを添えることで、もめる確率を下げる工夫をしましょう。
一次相続の時には、「配偶者の税額軽減の特例」を使えば大幅に税金を減らせるため、ついその特例に目を奪われがちです。しかし、以下のような場合は、二次相続を見据えた慎重な判断が求められます。
一次相続で相続税を0円にした結果、二次相続で莫大な税金がかかってしまうケースは珍しくありません。

重要なのは、一次・二次の相続税をトータルでシミュレーションすることです。
場合によっては、配偶者が一次相続で「あえて少ない財産しか相続しない」あるいは「全く財産を相続しない」方が、結果的に世帯全体での税負担(一次+二次のトータル)が最も安くなることもあります。目先の節税にとらわれず、将来を見据えた遺産分割を考える必要があります。
二次相続対策を考える上で、絶対に知っておきたいのが「配偶者居住権」の存在です。2020年4月から施行されたこの制度は、二次相続対策の強力な武器になります。
配偶者居住権とは、亡くなった配偶者の所有していた建物(自宅)に、残された配偶者が終身または一定期間、無償で住み続けることができる権利です。
これまで、自宅を配偶者が相続すると、その自宅の価値がそのまま配偶者の財産となり、二次相続の際に課税対象になっていました。しかし配偶者居住権を活用し、自宅の権利を「居住権(配偶者が取得)」と「所有権(子供が取得)」に分けることで、大きなメリットが生まれます。
配偶者が亡くなった時(二次相続の発生時)には、配偶者居住権は消滅するため、二次相続の課税財産にカウントされません。配偶者の年齢や建物の築年数等によって評価額は変動しますが、結果として二次相続の課税財産を大幅に圧縮できる可能性があります。
もちろん、配偶者居住権だけでなく、一次相続と同じように「小規模宅地等の特例」が二次相続でも使えるように準備しておくこと(取得者の立場や要件を事前に確認し、適用要件を満たす子供へ自宅を相続させるなど)も定番の対策です。
二次相続の税金を減らすために、残された配偶者から子供へ「生前贈与」を行って財産を減らしていくのも有効な手段です。
しかし、ここで2024年の法改正に注意が必要です。相続発生前に贈与した財産を相続財産に加算(持ち戻し)して相続税を計算する期間が、従来の「死亡前3年間」から「死亡前7年間」へ段階的に延長されています(2024年1月1日以降の贈与から適用開始)。
※注意点:すぐに一律で7年加算になるわけではありません。2026年12月31日までの相続の場合は従来通り3年加算となり、2031年に向けて徐々に対象期間が延びていきます。また、延長された4年間の贈与については、総額100万円まで加算対象から外すことができる特例も設けられています。
とはいえ、「二次相続が近くなってから慌てて生前贈与をしても、期待した節税効果が得られない」可能性が高くなっていることに変わりはありません。二次相続に向けた生前贈与は、一次相続が終わったら、できるだけ早く長期的な計画を立てて開始する必要があります。
このように、二次相続対策は「税法の変化」や「財産価値の変動」に大きく左右されます。また、相続税以外にも不動産の移転コスト(登録免許税や登記手数料)なども事務的費用として発生します。
「絶対にこうすればトクをする」という万人共通の正解はありません。まずは専門家と共に一次・二次のシミュレーションを行うことが、確実な相続税対策の第一歩となります。
二次相続の方が問題は多い、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容
相続対策は二次相続まで考えて行うことが大切です。
二次相続とは、2回目の相続のことです。
たとえば配偶者が亡くなり、その方の旦那さまや奥さまがその遺産を相続することを一次相続とすると、二次相続は、一次相続によって遺産を相続した旦那さまや奥様が亡くなるときの相続をいいます。
実は相続では、この二次相続の方が問題になりやすいといえます。

なぜ二次相続の方が問題になりやすいのかというと、1つは二次相続の方が相続税の金額が高くなりやすいからです。
二次相続で相続税の金額が高くなりやすい理由は、基礎控除額の減少です。
基礎控除額とは、相続税の計算をするときに、相続財産の総額から差し引くことができる金額のことですが、この金額は法定相続人が1人減ると600万円減少します。
それから一次相続で配偶者が亡くなった場合、二次相続では相続人の中に配偶者がいないため、配偶者の税額軽減が使えません。
配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続した財産については、最低でも1億6,000万円まで相続税がかからない特例のことです。
また、配偶者の法定相続分が1億6,000万円より高ければ、その金額まで相続税はかかりません。
この特例によって配偶者が多くの財産を相続した場合、ほとんど相続税がかからずにすみます。
ところが二次相続では相続人の中に配偶者はおりませんので、配偶者の税額軽減は使えません。
そのため、お子さんなどが負担する相続税は一次相続より高くなりやすいといえます。
さらに年齢の近いご夫婦の場合、一次相続によって相続した財産をほとんど使わないまま、二次相続が発生することもあります。
この場合、二次相続では後から亡くなった配偶者の個人の財産もプラスされて遺産となりますから、一次相続より相続税が高くなりやすくなります。
二次相続において問題になりやすいのは、税金だけではありません。
一次相続では亡くなった方の旦那さまや奥さまが、お子さんたちの話を聞いて、うまく遺産分割をまとめてくれることがよくあります。
しかし二次相続では、お子さんたちだけで遺産分割をしなければならず、話し合いがまとまらない、という事態に発展しやすいです。
このように二次相続では、一次相続には起こらなかった問題が起こりやすくなります。
それでは、どのような対策を行えばよいかというと、まず税金の対策としては、二次相続まで見越した相続税対策を一次相続のときから考えておくことです。
一次相続で配偶者の税額軽減に頼りすぎると、二次相続で発生する税額が膨らみ、かえって損をすることはよくあります。
また、二次相続でも使える相続税の特例の対象となる資産については、あえて配偶者に相続してもらい、一次・二次相続の2回とも特例を受けるという対策もあります。
まずは二次相続まで見越した、相続税のシミュレーションを専門家と行いましょう。
それから、お子さんたちが二次相続で揉めないようにするには、遺言書の作成が有効です。
遺言書には財産の分け方とは別に、付言事項といって、作成者の思いや感謝の気持ちなどを書き添えることもできます。
付言事項に法的な効力はないのですが、なぜそのような分け方をしたのか、その思いやエピソードを記載すると、お子さんたちが揉めにくい相続となるのではないでしょうか。
二次相続まで考えた相続対策は専門家に相談しましょう。
