遺産分割協議が難航したら
被相続人(亡くなった方)の相続財産として、ある日突然、あなたに500万円のお金が入ることになりました。
被相続人に財産があるとは思っていなかった。
なので、財産を相続出来るとは思いもしなかった。
その時のあなたの気持ちは、
- うれしい
- 助かる(生活の足しにできる)
- 被相続人への感謝
など、プラスの気持ちが発生しているはずです。
本来の相続は、被相続人に対して【財産を残してくれてありがとう】という感謝で終わるべきものです。
ただ、以下のような場合に、プラスの感情を保ったままでいられるでしょうか?
- 他の相続人が財産を多く相続している
- 今まで一番(被相続人の)面倒を見てきたのに、相続財産が他の人と一緒
- 相続税の申告や納税を終えたあとに、相続税を安く出来る方法を知った
どうでしょうか?あなたは500万円を相続出来るとは思っていませんでした。
でも、500万円を相続出来た。
ただ、あなたの弟は1,000万円を相続した・・。
あなたが被相続人の介護をしてきた。
それなのに、他の相続人と同一の500万円の相続財産だった・・。
相続の税金で50万円の支払いをした。
でも、うまく遺産分割などをすれば、それをゼロに出来た。
全ての相続手続きが終わってから、そのことを知った・・。
はじめは500万円を相続出来て、うれしさや被相続人への感謝の気持ちがあったはず。
でも、上述の1~2に該当した場合には、他の相続人への恨みや不満を感じたり、3であれば、後悔の念を持つかもしれません。
でも、この程度であればまだいいほうで、実際には相続を皮切りに、今まで仲の良かった相続人間で、
- 裁判争い
- 親族としての縁を切る
などの事例も珍しくありません。
このような事態を防ぐためには、本来の相続は被相続人への「ありがとうという感謝で終わるべきもの」ということを、相続人間で共有する必要があります。
確かに上記の1~2のようなことになれば、他の相続人の方へマイナスの感情を持つのは仕方ありません。
ただ、そのマイナスの感情によって、被相続人へのありがとう、というプラスの感情を忘れると、遺産分割協議が難航し、いつまで経ってもまとまりません。
遺産分割協議をまとめるには、プラスの感情が必要です。
また、被相続人の方は、自身の残した相続財産で相続人が裁判で争そったり、縁を切るきかっけを作りたいとは思っていないはずです。
相続の主役は、
- いかに相続税の金額を安くするか
- いかに財産を多く相続するか
ではありません。
あくまでも、被相続人への感謝の気持ちが相続の主役であるべきです。
遺産分割協議が難航しまとまらないのは、相続人の焦点が「いかに財産を多く相続するか」に向けられているからです。
まずは、そもそも相続できる財産があることに感謝しましょう。
相続大到来時代とは言われても、そもそも財産と呼べるような財産がない家庭もいっぱいあります。
中には借金のほうが多い家庭も少なくはありません。
相続できる財産を被相続人は残してくれた。
あなたはそのこと自体に感謝していますか?
もしくは、その感謝の気持ちを忘れていませんか?
遺産分割協議が難航しまとまらない。
被相続人への感謝の気持ちを思い出してください。
遺産分割協議がまとまらない時には、被相続人への感謝の気持ちを忘れないという心構えが必要です。
遺産分割に公平はありえない?
遺産分割協議がまとまらない理由として、公平という概念や正しいという概念が、「人それぞれだから」というものがあります。
例えば、
- 一律に相続人全員が同じ金額で財産を相続する
- 被相続人への貢献具合によって、財産を相続する
どちらも見方によっては公平です。
また、
- 遺言書の記載通りに相続するのが正しい
- 相続税を出来るだけ安くするような財産分割が正しい
これも、その人の考え方や立場で、正しさが違ってきます。
結論を言ってしまうと、相続人全員に公平で、かつ正しい相続というものはありません。
ただ、相続財産があることへの感謝は、相続人全員が出来ることです。
(財産を相続するのが嫌なら、相続放棄という手段があります。)
遺産分割協議がまとまらない。
そんな時は、
- 公平な相続
- 正しい相続(答えのある相続)
は存在しないということを理解して、遺産分割協議に臨みましょう。
遺産分割協議をまとめるためにも、大事な心構えです。
遺産分割協議をまとめる方法を動画で解説
遺産分割協議をまとめる方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
今回は、今、まさに遺産分割中の方、そして、遺産分割でもめている方、また、これから遺産分割を経験される方にお伝えしたいお話となります。
それは、相続とは感謝の気持ちで行うこと、そして公平な相続などない、とある程度、割り切っていただきたいということです。
その理由をこれからお話し致します。
もし、あなたが相続人になって、500万円のお金が入ることがわかったとします。
財産があると思っていなかったとしたら、そのときのあなたの気持ちは、うれしいとか、生活が助かると、そういったプラスの感情になるかと思います。
亡くなった人に、財産を残してくれてありがとう、という感謝の気持ちを素直に抱くことができるでしょう。
ところが、次のようなことがわかった場合、その気もちを、ずっと持ち続けていられるでしょうか?
たとえば、他の相続人が自分よりもたくさん遺産を相続していた場合。
または、あなたが亡くなった人の介護など一番献身的に尽くしていたのに、他の相続人も、まったく同じ額で遺産をもらっている場合。
また、相続税の申告や納税が終わったあとに、実は、もう少し相続税を安く抑えて手取り額を増やせる分け方があったと知った場合。
このようなことが分かると、最初に抱いていた、「ありがとう」という感謝の気持ちが薄れ、他の相続人への恨みや不満、後悔の念に変わってしまうのではないでしょうか。
他の相続人に対する恨みや不満が大きければ、親族の間で裁判沙汰になったり、縁を切る、というようなことも実際にございます。
では、このようなことにならないためには、どうしたらいいのでしょうか?
それは、本来相続とは、亡くなった人への感謝の気持ちで終わるべきもの、ということを全員で認識しておくことです。
たしかに、マイナスの感情を拭い去るということは、難しいことかもしれません。
しかし、それにとらわれてしまうと、いつまでも遺産分割協議は、まとまりません。
そんなときこそ、財産を残してくれてありがとう、というプラスの気持ちを大事にすべきです。
また、亡くなった人は、身内で争うことなど望んではいません。
いかに財産を多く相続するとか、相続税を安くするかということより、亡くなった人の気持ちを大事にしましょう。
最初に抱いた感謝の気持ちを思い出して、冷静になれば、亡くなった人の気持ちにも、目を向けられるはずです。
世の中には、相続財産がない場合や、逆に借金の方が多い場合も、少なくありません。
それでも、あなたのために遺産を残してくれたのですから、それは、とっても幸せなことです。
それから、遺産分割が公平になることはない、と受け容れることも大切です。
そもそも、公平や正しさというものは、人によって異なります。
たとえば、みんなが同じ金額を相続することが公平だという考えもあれば、亡くなった人への貢献度によって、遺産を分けることが公平だ、という考え方もあるでしょう。
どちらが正しいか、答えはありません。
そのため、どちらの考えが正しいかを主張しあっても、話し合いは、まとまらないのです。
そんなときは、公平な相続や正しい相続なんてものはない、と理解して、臨むことも大事になります。
もし今後、遺産分割協議で争いに発展しそうな場合、あるいは、今まさにこのような状況で悩んでいる場合は、一度冷静になり、感謝の気持ちを思い出してみてください。