被相続人の遺産でなければ遺産分割出来ません
相続が発生し、相続税対策の打合せや、相続手続きを進めていく中で、故人の遺産なのか不明なものが出てきた。
もしくは、故人の名義になっているが、実際は私のものだと主張する相続人が現れた。
このように、遺産が本当に故人の物であるかどうか不明な場合や、実際の所有者が違うのでは?と争いになっている場合、原則遺産分割できません。
当たり前のことですが、遺産分割は被相続人の遺産であることが明確な物しか出来ないからです。
故人の遺産と判明している物だけで、部分的に遺産分割をして、後で判明しだい、遺産分割をするという方法はあります。
ただ、後から被相続人の遺産と判明した物の相続税評価額が高かったら?
そうです。
そのような場合、結局一から遺産分割をやり直す可能性が高くなります。
また、相続税対策を勘案して遺産分割を作成していた場合、もう一度節税策などを講じる必要が出てくるかもしれません。
被相続人の遺産かどうかの問題がなせ発生するのか?
相続争いの原因として、いかに遺産を分割するのか?ということはもちろん、財産が本当に被相続人の遺産なのか?というのも原因になりやい要素です。
ある意味、遺産を分ける前に問題が発生してしまっているので、質が悪いとも言えます。
被相続人の遺産かどうかの問題が発生しやすい財産は、名義変更を要しない動産などです。
例えば、被相続人とその子供が「共有して使っていたギター」があったらどうでしょうか?
そして、そのギターの価値がものすごく高く、子供がそのギターは元々私の物だった、と一言いったら?
購入した時の領収書などがなければ、もうそれだけでそのギターは被相続人、もしくは子供の財産なのか、揉めることになりかねません。
また、名義変更を要する土地などでも問題になる場合があります。
それは、被相続人の生前に節税対策などの理由から、実態は全て父の土地であるにも関わらず、一部の名義を子供などの相続人にしていた場合です。
また逆に、被相続人の土地を、無断で相続人の共有名義にしていた場合なども同じです。
あくまでも可能性であり、上記のような状態だからと言って、必ず被相続人の遺産なのか?で揉めるとは限りません。
ただし、動産のように誰かが「それは元々私の物だった」、と言った時点で簡単に問題に発展する可能性があります。
こうならないためにも、被相続人の生前に財産目録などを作成し、被相続人の財産を確定させましょう。
被相続人の財産を確定しない限り、100%の遺産分割や相続税対策がいつまでも出来ません。
そして、最悪は訴訟といった話になってきます。
被相続人の不明な遺産でなくとも問題は起きる
では、被相続人の遺産であると、相続人の誰もが疑わなければ問題は起きないのか?
実はそんなこともありません。
それは、被相続人が生前に財産の所有やその範囲で揉めている財産を相続する場合です。
例えば、被相続人が生前から「隣人との境界線で争っている土地」などを相続する場合です。
その土地を相続するには、引き続きその隣人と土地の境界線(土地の範囲)について争い、土地の範囲を確定して遺産分割する必要があります。
争いになった場合には、訴訟などで解決し、解決後に遺産分割をする必要があります。
ちなみに、遺産を確定するための訴訟を遺産確認の訴訟といい、共同相続人全員が原告か、または被告として当事者になる必要があります。
このように遺産分割の前で、揉めることは少なくありません。
未然にこのような事態を防ぐためにも、早急に相続税対策に取り掛かりましょう。
相続税対策をすると、上記のような問題点のあぶり出しにもなります。
そして、相続税対策・相続税申告なら都心綜合会計事務所にお任せください。
不明な財産がある場合の遺産分割協議を動画で解説
故人の遺産なのか不明な財産がある場合の遺産分割協議について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
遺産の相続人が何人かいる場合は、誰が何の財産を相続するか、これを話し合って決めます。
これを遺産分割協議といいます。
このとき、相続人同士で分けることができるのは、あくまで亡くなった人の財産です。
もし、誰のものかわからない財産があれば、それは勝手に分けることはできません。
たとえば、生前から隣との境界線でもめている土地の場合、訴訟などで解決してから遺産分割を行う必要があります。
はっきりとわかっている財産だけ、先に話し合って分けてしまうことも、もちろん可能です。
しかし、そうすると追加で出てきた財産が実はものすごく高価なものだった場合、遺産分割協議をはじめからやり直すことになる、そういったケースも出てまいります。
このような問題があるため、遺産分割協議は亡くなった人の財産がはっきり分ってから行ったほうがよいのです。
ところで財産が亡くなった人のものなのか、そうでないかは身内の間でも揉めることがあります。
たとえば、亡くなった人とそのお子さんが一緒に使っていた楽器があるといたします。
その楽器がとても高価なものだったとき、親の死後、お子さんが他の相続人に「それはもともと私の物だった」と言い出すことが考えられます。
これの何が問題なのかというと、相続では相続人それぞれに相続分という財産の取り分が決められています。
もちろん、そのとおりに分けなくてもよいのですが、その場合は相続人全員の同意が必要となります。
もし、相続財産がトータルで1億円あって相続人が子供2人であれば、5,000万円ずつ受け取る権利があります。
しかし、相続財産の中に2,000万円の楽器があって、相続人の一方が「これはもともと私のものだ」と言い出したなら、相続財産はトータル8,000万円となってしまいます。
そうすると、もう一方の相続人の遺産は4,000万円に減ってしまいます。
こうなってしまうと、身内同士で争い始めるかも知れません。
解決できなければ訴訟に発展することもあります。
相続財産が誰のものなのか分からない、というトラブルの原因には亡くなった人が生前に何の財産をもっているか、これを明らかにしていない、ということがあげられます。
身内同士で争わずに済むように生前のうちに財産目録を作成しておき、何の財産があるか相続人に分るようにしておくとよいでしょう。