納税猶予が解かれると相続税と利子の支払いが必要
生産緑地制度の納税猶予について、解説しています。
生産緑地制度とは
都市農家の方の相続税対策として生産緑地制度の利用というものがあります。
この生産緑地とは、都市部において緑地を保全するために、指定を受けた農地のことを言います。
そして、この生産緑地には、相続税の納税猶予の制度が設けられています。
生産緑地には相続税の納税猶予?
どういうことかと言いますと、相続人が農業を継続するなら、「農地にかかる分の相続税を猶予する」というものです。
気を付けて頂きたいのが、
- 納税猶予であって、相続税が0円になるわけではない
- 農地にかかる分の相続税の猶予で、他の財産にかかる相続税が猶予されるわけではない
ということです。
確かに生産緑地については、農業を続けている限り相続税がかかりません。
だからと言って、相続税が0円になっているわけではありません。
あくまでも納税猶予されているのです。
納税猶予とはいえ、農地の相続税負担が重すぎて農業を続けられない方にとっては、ありがたい制度です。
なお、相続時精算課税制度で生前贈与されていた部分の農地ついては、特例を適用できません。
農業をやめると納税猶予も解除
相続人が農業をやめる。
もしくは、一定規模以上の売却をした場合には、その時点で納税猶予は解除されます。
納税猶予が解除されるとどうなるのか?
猶予されていた相続税を支払う必要があります。
そして、さらに利子を付けて納税しなければなりません。
利子は相続した時から加算されるので、多額になります。
生産緑地制度の納税猶予は利用すべきか?
生産緑地の指定を受けると、相続税の納税猶予の他に、固定資産税が軽減されるなどのメリットもあります。
しかし、原則的に指定後30年を経過するか、農業を引き継いだ相続人が農業を継続できなくなる一定の理由がない限り、
- 解除が出来ない
- 農地の転用・転売も原則出来ない
ということになります。
また、納税猶予を受けるためには、【終身営農という条件】も必要です。
特に都市近郊の小規模農家などの場合は、将来農業を続けられるのかどうか?を考慮する必要があります。
農業を続けられなくなったら、猶予されていた相続税プラス利子を支払わなくてはなりません。
生産緑地制度の納税猶予が利用出来るとしても、猶予が解かれたときの負担を考え利用せずに、「農地の一部を売却して納税に回す」ことなども検討した方がいいでしょう。
また、後継者がいない場合や決まっていない場合は、生産緑地制度の納税猶予は利用しないほうがいいでしょう。
生産緑地制度の納税猶予を利用した後に、相続人が病気などで農業を続けられなくなった。
高額な相続税と利子の支払を避けるために、やむなく相続人の子供が勤め先を辞めて農業を継ぐといった事例もあります。
生産緑地を解除すれば、さまざま相続税対策が可能に
都市部の農家で相続が起きると、マンションが建つとよく言われます。
これは生産緑地制度の納税猶予を利用しないためです。
生産緑地を解除すれば、【農地ではなく宅地】となります。
宅地になりますと、様々な相続税対策が使えます。
例えば、税金は多くなったとしても、賃貸事業などによって財産を多く残せる可能性もあります。
このように「生産緑地としない相続税対策」もあります。
現在、震災対策として地方行政が農業生産者に対して、農地を生産緑地にするように要請するケースが増えています。
ただ、都市農家で生計を立ていけるのか?後継者はいるのか?生産緑地にするようにとの要請があっても、慎重に検討する必要があります。