最大で通常の評価額から35%引き
生産緑地に該当すると、その土地が生産緑地でないものとして評価した価額から、最大で35%控除できる可能性もあります。
今回は、そんな生産緑地の評価方法について、解説しています。
生産緑地とは
生産緑地とは、以下の表の要件に当てはまり、同表のような制限がある農地となります。
(生産緑地制度の詳しい内容は生産緑地制度の納税猶予に記載しています。)
対象地区 | ➀市街化区域内の農地等であること ➁公害等の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全の効用を有し、公共施設等の用地に適したものであること ③用排水等の営農継続可能条件を備えていること |
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地区面積 | 500㎡以上 |
建築等の制限 | 宅地造成・建物等の建築等には市町村長の許可が必要 (農林漁業を営むために必要である一定の施設及び市民農園に係る施設等以外の場合は原則不許可) |
買取り申出 | 指定から30年経過後または生産緑地に係る主たる農林漁業従事者またはそれに準ずる者の死亡等のとき、市町村長へ時価での買取り申出が可能(不成立の場合は、3か月後制限解除) |
保全する農地を生産緑地として指定することにより、
- 宅地化する農地
- 保全する農地
の区分を明確にし、都市計画上の位置づけの明確化が図られています。
また、都市圏内に所在する市街化区域内の農地に係る固定資産税は、原則宅地並みの課税となります。
そこで、生産緑地として指定することにより、固定資産税の軽減をして、農業継続者の負担を回避することも目的とされています。
減額割合は市町村長に対し買取りの申出ができない期間で決まる
農地が生産緑地に指定されると、原則として、建築物の建築、宅地の造成等が出来なくなり、農地としてしか利用できなくなります。ただ、
- 生産緑地の指定の告示の日から30年経過
- 告示後に農林漁業の主たる従事者が死亡
等した場合は、市町村長に対して、その生産緑地を【時価で買い取るべき旨の申し出】が出来ます。
そして、この生産緑地の相続税評価方法は、農地としてか利用できない期間に応じて、相続税評価額が下がるように設計されています。
たとえば、生産緑地の指定直後の農地(仮にAとします)だと、それから30年間は原則、農地としてしか使えません。
その一方で、29年前に生産緑地の指定を受けた農地(仮にBとします)の場合、1年後には、市町村長に対し買取りの申出が出来るようになります。
このAとBの農地が同じ相続税評価額では、不公平ということになります。
よって、市町村長に対し買取りの申出ができない期間が長いほど、生産緑地の相続税評価額は低くなります。
具体的には、以下の計算式となります。
【生産緑地の評価額 = その土地が生産緑地でないとして評価した価額 × (1 - ➀の割合)】
➀の割合
課税時期から買取りの申出をすることが出来る日までの期間 | 割合 |
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5年以下のもの | 10% |
5年を超え10年以下のもの | 15% |
10年を超え15年以下のもの | 20% |
15年を超え20年以下のもの | 25% |
20年を超え25年以下のもの | 30% |
25年を超え30年以下のもの | 35% |
ただし、死亡した被相続人が、その生産緑地に係る農林漁業の主たる従事者である場合には、直ちに買取の申出が出来ます。
よって、このような場合には、減額できる割合は5%になります。
ちなみに、主たる従事者とは、その者が従事できなくなったなら、その生産緑地に係る農林漁業が不可能になる方を指します。
また、生産緑地の買取りの申出日に、以下に該当するような方も、主たる従事者となります。
- 「65歳未満である主たる従事者(A)」が「1年間に従事した日数」の8割以上従事している者(A以外の者)
- 「65歳以上である主たる従事者(A)」が「1年間に従事した日数」の7割以上従事している者(A以外の者)