死亡した時刻によっては相続できないことも
ほんのちょっと【先に亡くなった・あるいは後に亡くなった】ということで、相続財産の行方に大きな影響がでます。
今回は、死亡時刻が相続に与える影響などについて、解説しています。
脳死は死亡?また、飛行機事故などの同時死亡の場合の相続は?
相続は死亡(もしくは失踪宣告)したら発生します。
当たり前のようですが、いつ死亡したかは実はとても重要になってきます。
というのも、親族間でほぼ同じ時期に複数の方が亡くなられた場合、死亡時刻によって相続人や相続分が大きく変化する場合があるからです。
いくら素晴らしい相続税対策をしていても、相続人が変わってしまっては、その対策が無意味になる場合もあります。
相続開始以前や同時に死亡したにも記載していますが、例えば親子が飛行機事故でほぼ同時に死亡し、どちらが先に亡くなったのか分からない場合はどうでしょうか?
通常の相続であれば、親の方が先に亡くなっている場合、
- 親が死亡 → 子供へ相続
- その子供が死亡 → その子供の相続人へ相続
となります。
しかし飛行機事故のように、明確に親子のどちらが先に亡くなったのかが分からず、ほぼ同時に死亡したと推定された場合は、その子は相続人でなくなります。
そして、子供が相続人になるのか?ならないのか?で大きく相続は変わってきます。法定相続分が変わったり、法定相続人がそもそも変わる場合があるからです。
また、脳死の場合はどうでしょうか?通常は心停止が死亡の時刻とされます。
でも心臓は動いている脳死は、死亡として扱うのでしょうか?
現時点において、相続税法上では脳死を死亡の扱いとするのかは定まっていません。(裁判で争われたこともありません。)
仮に脳死を死亡として取り扱うとしても、どの時点で脳死になったのか?を把握し、死亡時刻を明確にする必要があります。
そして、医学的見地や法律的見地の解釈も異なり、同じ法律上の問題だとしても、法律が別なら基準も別になります。
要はある見地や法律では脳死は死亡として取り扱っていたとしても、ある法律では死亡として取り扱っていないということです。
医学の進歩を考えると、今後相続税法で脳死の扱いをどうするのかが争われる日も近いのかもしれません。
ただ、仮に相続税法で脳死を死亡として取り扱った場合、今度はいつ死亡したのか?という時期の問題が発生します。
先ほどの飛行機事故の同時死亡のように、いつ亡くなったかで相続が大きく変わってくるからです。
たとえばある夫婦がいたとします。そして、その夫が脳死の状態だとします。
夫が脳死のままの状態で、妻が亡くなりました。この場合の相続はどうなるでしょうか?
もしも、脳死が死亡扱いの場合、夫→妻に相続後に妻が死亡したことになります。
でも、仮に脳死の死亡時刻の判定が医師の死亡認定の場合、妻が先に亡くなり、その後、医師の死亡認定で夫が死亡となった場合は、妻に相続はないことになります。
でも、脳死の死亡時刻の判定が脳死の状態になった時であればどうでしょうか?
このように死亡の判定と死亡時刻の取り扱いは、非常に難しい問題を含んでいます。
戸籍上に記載された死亡時分は証明にならない?
戸籍の死亡の記載には、死亡届にもとづき、
- 死亡の場所
- 死亡時分
が記載されます。
この死亡届には、死亡診断書か死体検案書などの添付が必要であり、それらの添付書類に死亡時分が記載されています。
なので、戸籍に記載されている死亡時分は、死亡診断書や死体検案書などに記載されている死亡時刻を転記しただけのものです。
単に他の書類から転記しているだけなので、そもそも死亡診断書の死亡時刻に問題がある場合等には、もちろん戸籍に記載されている死亡時分は、死亡時刻の証明にはなりません。
【戸籍に死亡時分が記載されている=死亡時刻の証明】にはならない場合もあります。
ただし、通常何の(同時死亡や死亡診断書等の不備などの)問題もなければ、この死亡時分において相続開始となります。
動画で解説
相続における死亡について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。