
本来であれば遺産を相続できる立場にあっても、特定の理由により相続人にならないケースが存在します。親や親族が亡くなった際、通常は配偶者や子供が遺産を引き継ぐことになります。具体的には、「相続の放棄」「相続欠格」「相続廃除」「同時死亡(または相続開始以前の死亡)」という4つのケースです。この記事では、それぞれの理由について、代襲相続の有無や注意点も含めて初心者の方にもわかりやすく解説します。
法律上は相続人であっても、「遺産を受け取りたくない」「借金などのマイナス財産を背負いたくない」と自ら辞退する手続きが「相続放棄」です。
家庭裁判所で相続放棄が認められると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
手続きの期限は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
もし財産の調査に時間がかかり、3か月以内に判断できない場合は、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長(伸長)してもらえることもあります。
なお、相続放棄をした場合、その人の子供が代わりに相続人になること(代襲相続)はありません。
また、相続放棄をした場合でも、自分が住んでいる実家など「自分の手元にあった財産」については、次の相続人などが管理できるようになるまで、引き続き財産を保存する義務が残る点には注意が必要です。
相続放棄についての詳しい内容は、借金を受け継がなくて済む相続放棄とは?に記載しています。
「欠格」とは、法律によって強制的に相続人としての資格を失わせることです。
たとえば、自分が相続で有利になるために、詐欺や強迫を行ったり、遺言書を偽造したりした人は、当然に財産を引き継ぐ権利を失います。
子供が親を故意に(わざと)殺害してしまったケースなどもこれに該当します。
ただし、不注意による交通事故などで死なせてしまった場合は、欠格にはなりません。
その他の具体的な欠格事由としては、以下のようなものが挙げられます。
なお、殺害等による有罪判決について、執行猶予期間中も欠格事由に該当します。
しかし、執行猶予の期間が無事に満了した場合は、刑の言渡しの効力が失われるため、欠格事由から外れてさかのぼって相続人になることができます。
欠格によって相続人にならなかった場合、その人に子供がいれば、代わりにその子供が相続人になります(代襲相続)。
誰が法定相続人に該当するのかについては、法定相続人になれるルールは第1位~第3位まであるに詳しく記載しています。
推定相続人とは、将来その人が亡くなった場合に相続人になると推定される人のことです。
たとえば、親が存命中にその子供からひどい虐待や重大な侮辱を受けていた場合などは、親の意思でその子供を相続人から除外することができます。
この手続きを「廃除」と呼び、家庭裁判所の判断によって相続権を失わせます。
生前に家庭裁判所へ申し立てる方法(生前廃除)と、遺言書に書いておいて亡くなった後に遺言執行者に手続きしてもらう方法(遺言廃除)があります。
ただし、家庭裁判所は当事者の状況を慎重に審議するため、実際に相続廃除が認められるケースはそれほど多くありません。
なお、廃除された人に子供がいる場合は、その子供が代わりに相続人になります(代襲相続)。
補足として、兄弟姉妹にはもともと「遺留分(最低限もらえる権利)」がないため、廃除の手続きはできません。
兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、遺言書で別の人に全財産を譲るよう指定するだけで足ります。
相続人になるはずだった人が、被相続人(亡くなった方)より先に亡くなっていた場合は、当然ながら相続人にはなりません。
たとえば、親より先に子供が亡くなっているケースなどです。
また、飛行機事故などで複数人が同時に亡くなり、どちらが先に死亡したか証明できない場合は、「同時に死亡したもの」と推定されます(同時死亡の推定)。
相続が発生するためには、被相続人が亡くなった時点で相続人が生存している必要があるため、同時死亡と推定された者同士の間では相続は発生しません。
つまり、親と子供が同時に亡くなった場合、親の遺産をその子供が相続することはありません。
この場合、親の遺産は残された配偶者や、他の存命の子供などが相続することになります。
ただし、同時死亡はあくまで「推定」であるため、生存者の証言や記録などから死亡の順番が判明した場合は、その順番に従って相続が発生します。
なお、被相続人より先に亡くなっていたり、同時死亡だったりした場合でも、亡くなった方に子供(被相続人から見て孫)がいれば、その孫が代わりに相続人になります(代襲相続)。
(亡くなった方が被相続人の兄弟姉妹だった場合は、代襲相続できるのはその子供である甥や姪までとなります。)