
第三者の精子を用いた人工授精であっても、夫が同意して妊娠・出産したのであれば、その子供は確実にお父さんの相続人になれます。
夫自身の精子を用いた人工授精であれば、生まれた子供は当然に夫婦の子供となるため、問題なく父親の相続人になれます。

では、夫以外(第三者)の男性の精子を用いた人工授精で生まれた子供の場合はどうなるのでしょうか。
結論から言いますと、「夫が同意」して人工授精を行い、妊娠・出産したのであれば、その子供は夫の相続人になります。
以前は、このようなケースで親子関係が裁判で争われることもありました。しかし現在では、令和2年(2020年)に新しい法律が整備され、「夫の同意を得て人工授精等で生まれた子は、夫の子とする」というルールが明確に定められました。
つまり、生物学的な繋がりがなくても、夫の同意さえあれば法律上の親子として認められ、いわゆる相続権が確実に認められるということです。
ちなみに、母親(産みの親)については「母親から生まれたという事実」があるため、提供された卵子や精子が誰のものであっても、当然に母親の相続人となります。
【注意が必要な「死後懐胎子(しごかいたいし)」】
一つだけ例外として注意したいのが、「夫の死後に、保存しておいた精子を使って妊娠・出産した子供」のケースです。
このような子供を死後懐胎子と呼びますが、最高裁判所(平成18年9月4日判決)において「法律上の親子関係は認められない」という判決が出ています。つまり、このケースにおいては父親の相続人にはなれません。

法律が整備されたことで、人工授精で生まれた子供の相続権は守られるようになりました。
しかし、「本当に生前に夫の同意があったのか?」など、他の親族(夫の兄弟姉妹など)との間で思わぬ相続トラブルに発展する可能性はゼロではありません。
相続税対策や円満な相続の観点からも、相続人の人数や関係性が確定していることは非常に重要です。将来子供が不利益を被らないためにも、医療機関での同意書の控えを大切に保管しておくなど、事実関係を明確にしておくことが大切です。
