生物的な親子関係だけでなく生活全般で判断する傾向にある
配偶者の精子での人工受精の子供であれば、夫婦の子であることに変わりはないので、問題なく相続人になれます。

配偶者の精子での人工受精の子供であれば、その子供は問題なく父親の相続人
ただ、問題は配偶者以外での精子での人工受精の子供で、父親(育ての親)の相続の場合です。
ちなみに母親の場合には、【母親から生まれたという事実】があるので、母親の相続の際には問題になりません。
結論から言いますと、夫が同意しているのであれば、相続人と認められる可能性が高いようです。
東京高裁(平成10年9月16日判決)では「夫が同意した場合、子の父となる」としています。
詳しく言いますと、他の男性の精子で人工受精し、妊娠・出産することに夫が同意しているのであれば、その人工受精で生まれた子供は夫の子供ですよ、ということです。
ただ、最高裁(平成18年9月4日判決)では、「冷凍精子保存の死後懐胎子(しごかいたいし)(注)」は「立法がない以上、法律上の親子関係は形成しない」というような判決もあります。
(注:死後懐胎子とは、精子提供者の死亡後に、当該提供者の保存精子の人工受精により女性が妊娠し出産した子供のこと)
ただ、裁判所全体の傾向としては、単なる生物的な親子関係だけで判断するのではなく、一緒に生活していたかなどの「生活全般で判断する傾向」にあるとも言われています。

生物的な親子関係だけで判断するのではなく、生活全般で判断する傾向にあるとも言われています。
なので、一緒に生活している父親(Aさん)以外の人工受精で生まれた(Bさん)としても、Aさん(生物学的な繋がりがない父親)のもとで生活し、Aさんの同意のもと、親子として生活をしてきたのであれば、BさんはAさんの相続人になれる可能性は高いのかと思われます。
いわゆる相続権が認められるということです。
ただ、Aさんの他の相続人がBさんを相続人として認めない、というようなことも考えられ、このような人工受精での相続問題は増えると予想されます。
相続税対策の観点から言えば、相続人の人数が変わるということは、大きな影響を及ぼします。
今後の判例結果などの動向には、注意する必要がありそうです。

今後の判例結果の動向には注意が必要
動画で解説
人工授精で生まれた子供の相続について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。