
日本の法律上、ペットへ直接遺産を相続させることは認められていません。しかし、負担付遺贈やペット信託などを活用することで、間接的に財産を残す道は開かれています。
「自分に万が一のことがあったとき、大切なペットに遺産を残してあげたい」と考える飼い主の方は非常に多くいらっしゃいます。
現代ではペットは家族の一員として愛されており、その将来を心配するのは当然のことです。
しかし、日本の法律上、ペットは「物」として扱われるため、直接ペット名義で遺産を相続させることはできません。
それでも、間接的な方法を使えば、愛するペットが不自由なく暮らしていくための財産を残すことは可能です。
代表的な手段として、ペットの飼育を条件に親族や保護団体などに財産を譲る「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」があります。
ただし、遺言で一方的に指定する負担付遺贈は、死後に相手から飼育を拒否されたり、財産だけ受け取って適切に世話をしてもらえないリスクが伴います。
確実にペットを守りたい場合は、生前に「財産を渡す代わりにペットの世話をする」という合意を結んでおく「死因贈与契約(しいんぞうよけいやく)」が有効です。
また、信頼できる人や法人に財産を託し、ペットの飼育費用として計画的に管理してもらう「ペット信託」という仕組みも注目されています。
どの制度を選ぶにせよ、「本当に最後までペットの面倒を見てくれるか」という不安は残るものです。

そのため、遺言どおりに実行されるかをチェックする「遺言執行者」や、財産の使い道を監督する「信託監督人」をあらかじめ指定しておくことが重要になります。
なお、第三者に財産を譲る場合、受け取るのが個人なら「相続税」、法人なら「法人税」が課せられる点には注意が必要です。
個人の場合、血縁関係によっては相続税が2割増しになる「2割加算」の対象となるため、税負担も考慮して譲る金額を決めましょう。
一方で、受け取り先が「認定NPO法人」や「公益法人」などの保護団体であり、一定の要件を満たす場合には、相続税や法人税が非課税になる特例も存在します。
ペットのための生前対策は専門的な知識が必要となるため、まずは相続の専門家にご相談されることをおすすめします。
ペットに直接財産を渡せないことは前述のとおりです。
では、飼い主が遺言書に「愛猫の〇〇に全財産を相続させる」と書き残して亡くなった場合、どうなるのでしょうか。
結論から言うと、ペットへの遺贈を指定した部分は法律上無効として扱われます。

遺言書全体が無効になるわけではありませんが、ペットが財産を受け取ることはできません。
結果として、その財産は法定相続人全員による遺産分割協議にかけられ、親族間で分けられることになります。
ペットの幸せを第一に考えて作った遺言書が、法的効力を持たないのは非常に悲しいことです。
もし遺言書にペットへの思いを込めたいのであれば、法的な拘束力はないものの、「付言事項(ふげんじこう)」としてペットのお世話をお願いするメッセージを書き添える方法があります。
また、負担付遺贈などで第三者にお世話を頼む場合、家族の「遺留分(いりゅうぶん)」を侵害しないよう注意しなければなりません。
遺留分とは、配偶者や子供など特定の相続人に最低限保障されている遺産の取得割合です。
「ペットの飼育費として全財産を第三者に譲る」といった内容にすると、遺族から遺留分侵害額請求を起こされ、トラブルに発展する恐れがあります。
日本の法律では難しいペットへの相続ですが、海外では全く異なるケースが見られます。
たとえばアメリカでは、大富豪の女性が愛犬のチワワとそのお世話をする家政婦に対し、多額の遺産と豪邸を残すという遺言を作成して話題になりました。
この事例では、チワワの生涯にわたる飼育を条件に、家政婦に300万ドルもの大金が約束されたと言われています。
その反面、実の息子に分配された遺産は100万ドルにとどまりました。
これに納得できなかった息子は、「母は判断能力が低下しており、不当に操られていた」として裁判を起こす事態に発展しています。

このように、ペットへ多額の遺産を残せる制度がある国であっても、親族との間で激しい相続争いが起きることは少なくありません。
日本でもペットを大切な家族と考える方は増えており、今後は負担付遺贈や信託を利用して「ペットのお世話をする第三者」に財産を譲るケースが増加するでしょう。
そうなれば、アメリカの事例のように「本来の相続人である親族」と「ペットの世話を引き受けた人」の間で遺産を巡るトラブルが日本でも頻発する可能性があります。
大切なペットを守りつつ、残された家族との争いを防ぐためには、遺留分への配慮や法的に有効な仕組み作りなど、生前からの綿密な対策が不可欠なのです。

ペットに遺産を残す方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士である田中順子が動画でわかりやすく解説しております。
動画には字幕が付いているため、音声をオフにした環境でも内容をしっかりとご確認いただけます。
動画内容
近年は空前のペットブームといわれ、ペットの数は子供よりも多い時代だとも言われています。
そのような中でペットに遺産を相続させたい、と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
海外ではペットに遺産を遺すというケースは実際にあるようです。
海外の資産家の女性がペットのチワワ3匹と家政婦に300万ドルの遺産を遺そうとしたケースもあります。
では日本でペットに遺産を相続させるという遺言書を作成した場合、その遺言書は有効なのでしょうか?
答えは無効です。
日本では残念ながらペットは相続の上では物と同じ扱いになり、財産を相続させることはできません。
しかし、ご自身が亡くなられたあと、大切なペットの世話を誰か信頼できる人に任せたいというのは、ペットと暮らす多くの方の願いではないでしょうか。
もし、ご自身が亡くなられた後、ペットのお世話を誰かに任せたい時はペットを引き取ってくれる団体に財産を遺す、という遺言書を作成するか、生前に信頼できる人と信託契約を結ぶ方法があります。
ペットのお世話を任せるための信託契約とは、たとえばペットの世話に必要な現金を信頼できる人に託してご自身が亡くなられた後、そのお金でペットのお世話をしてもらう契約を結ぶ方法です。
遺族が引き取ってお世話をしてくれるということを希望される方もいらっしゃると思いますが、心配な時は遺言書の付言事項にペットのお世話についてお願いしたいという内容を記載すると良いかもしれません。
遺言書の付言事項とは法的な拘束力はありませんが、遺言書を作成した方の気持ちを書くことができる部分となります。
もし遺言書の書き方で迷った時、ペットと相続のことで困った時は相続の専門家にご相談ください。
そして相続のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。
相続のワンストップサービスを提供しております。