
相続人や遺言書がなく孤独死した方の遺産は、家庭裁判所によって選ばれた相続財産清算人が適切に管理を行います。家庭裁判所による相続人の捜索から6か月が経過し、誰もいないことが確定すると特別縁故者が遺産を受け取れる可能性があります。もし特別縁故者もおらず、最終的に財産を受け取る人が誰もいない場合、その遺産はすべて国庫に納められます。
日本国内では年間数万人もの方が、誰にも看取られることなく孤独死を迎えていると言われています。
身寄りのないまま一人で亡くなるケースは、現代の日本社会において決して珍しい出来事ではありません。
もし預貯金や不動産など十分な財産を残したまま孤独死をした場合、その遺産は一体どうなってしまうのでしょうか。
将来的に孤独死を迎える可能性のある「おひとりさま」は、今後さらに増加の一途をたどると推測されています。
それに伴い、亡くなった方の遺品整理や死後の事務手続きに関するニーズも急速に高まりを見せています。

孤独死は決して高齢者だけの問題ではなく、働き盛りの現役世代にも十分に起こり得る身近な問題です。
本来であれば多額の相続税が発生するほどの財産を持つ方が、一人きりで最期を迎えるケースも増加傾向にあります。
配偶者や子供、親、兄弟姉妹といった法定相続人が誰もおらず、遺言書も残されていない場合、家庭裁判所によって「相続財産清算人」が選ばれます。
ここで注意が必要なのは、裁判所が自動的に清算人を選んでくれるわけではないという点です。
特別縁故者として財産を受け取りたい人や、亡くなった方にお金を貸していた債権者などの「利害関係者」が、自ら家庭裁判所に申立て(お願い)をする必要があります。
さらに、遺産から清算人の報酬が払えそうにない場合や財産額が不明な場合は、申立人が数十万円から100万円程度の「予納金」を一時的に立て替えて裁判所に納めなければなりません。
選任された相続財産清算人が亡くなった方の財産を責任を持って管理し、本当に相続人が誰もいないかを調査します。
財産の管理には、残された不動産や株式の売却、借金があった場合の清算手続きなども含まれます。
家庭裁判所が相続人を探すためのお知らせ(公告)を出し、そこから6か月が経過しても誰もいないことが確定すると、今度は「特別縁故者」が財産を受け取れる可能性が出てきます。
特別縁故者とは、亡くなった方と生前に特別な関わりがあった人のことを指します。
ここで注意しなければならないのは、相続財産清算人が自ら進んで特別縁故者を探し出してくれるわけではないという点です。
自分自身で家庭裁判所に対し、「私は特別縁故者です」と申し出る必要があります。

さらに重要な点として、特別縁故者として財産を受け取るためには、相続人がいないことが確定してから3か月以内に申立てを行わなければなりません。
この法律で定められた期限を一日でも過ぎてしまうと、財産を受け取る権利を完全に失ってしまうため十分な注意が必要です。
名乗り出た特別縁故者に財産を渡すかどうかは、家庭裁判所がこれまでの関係性や個別の事情を考慮して判断します。
遺産の全額を渡すのか、それとも一部だけを渡すのかについても、すべて家庭裁判所の裁量に委ねられています。
もし特別縁故者が誰もいなかったり、財産を渡した後に遺産が余ったりした場合、残った財産は最終的に国庫に納められます。
特別縁故者からの申立てもなく、遺言書もない場合は、原則として遺産のすべてが国のものになります。
ただし例外として、誰かと共有名義で持っていた不動産などの財産は、国ではなく他の共有者のものになります。
近年、相続人がいないことによって国庫に納められる遺産は急増しており、直近のデータでは年間で約1,300億円という過去最高の規模に達しています。
法律上の相続人が一人もいなくても、生前に遺言書さえ作成しておけば、自分の希望通りに財産を残すことが可能です。
特定の人に財産を譲りたい場合や、お世話になった団体に寄付をしたい場合は、元気なうちに必ず遺言書を準備しておきましょう。

法定相続人が誰もいない「おひとりさま」が遺言書を書く最大のメリットは、「遺留分」を一切気にする必要がない点です。
遺留分とは、一定の相続人に最低限保障された遺産の取り分のことです。
相続人がいない場合はこの制限がないため、誰の目も気にせず、100%自分の思い通りに好きな相手や団体へ財産を残すことができます。
ただし、身寄りのない方の遺産を狙う悪質な団体も存在するため、寄付先を選ぶ際は騙されないように十分な注意が必要です。
また、長年連れ添った内縁の妻や夫であっても、法律上の相続権は一切ありません。
特別縁故者として認められれば財産を受け取れる可能性はありますが、確実に残したいのであれば遺言書に明記することが最も安全で確実な方法です。
遺言書を作成する以外の方法として、財産を譲りたい相手と養子縁組をするという選択肢もあります。
もちろん、養子縁組をするには相手の同意が必要不可欠です。
養子縁組が成立すれば、その人は法律上において正式な法定相続人として扱われます。
養子縁組に関する詳しい手続きの内容については、関連記事に記載しています。
自分は天涯孤独だから相続対策なんて関係ない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、決してそのようなことはありません。
遺言書の作成や養子縁組を行っておくことで、財産がそのまま国に没収されるのを防ぎ、通常の相続と同じように手続きを進めることが可能になります。

通常の相続が発生するということは、遺産の額によっては相続税の申告や対策が必要になる可能性もあります。
手遅れになる前に、少しでも早めに相続の専門家へ相談しておくことを強くおすすめします。
相続人が一人もおらず、事前の対策も何もしなければ、最終的に遺産はすべて国のものになってしまいます。
自分が一生懸命に築き上げた財産を、もっと有効に使ってほしいと考える方も多いのではないでしょうか。
あるいは、社会貢献のために役立てたいと希望する方も増えています。
そのような場合には、NPO法人や慈善団体など、公益的な活動を行っている団体へ寄付する遺贈という選択肢があります。
確実に寄付を実行するためには、法的に有効な遺言書が絶対に欠かせません。
死後の無用なトラブルを防ぐためにも、公証役場で公正証書遺言を作成することをおすすめします。
あわせて、弁護士や税理士などの専門家を遺言執行者に指定しておくとより安心です。
機械的に国へ財産を納めるよりも、ご自身の信念に基づいた寄付を行うほうが、心情的な納得感や満足度ははるかに高くなるはずです。

相続人が一人もおらず、財産を譲りたい特定の相手も思い浮かばないという状況もあるでしょう。
そのような場合は、社会への最後の恩返しとして、遺贈による寄付を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、お年寄りの善意につけこむ詐欺まがいの団体から寄付を勧誘される悪質なケースも報告されています。
寄付先選びはご自身でしっかりと調査し、十分注意して行ってください。
