
近年、ご家族がお亡くなりになり相続が開始した際に、財産を受け継ぐ方が海外にお住まいであるケースが増加しています。また、日本国籍を有していない場合や、すでに日本から住民票を移している場合も少なくありません。このように国際化が進む中で、日本の相続税の納税義務がどのように判定されるのか、初心者の方にもわかりやすく解説いたします。
相続税を誰がどこまで負担する義務があるのかについては、以下の図のように分類されています。

さらに詳しい要件を確認したい場合は、国税庁ホームページの「相続人が外国に居住しているとき」をご参照ください。
この分類を判断する上で重要となる「住所」は、原則として「生活の実態(生活の本拠)」がある場所を基準に考えます。
多くの場合、住民票の所在地が生活の本拠として扱われますが、住民票が絶対的な基準というわけではありません。

法律上、住民票の所在地だけを住所として扱う決まりはないためです。
過去の事例では、日本に住民票がなくても生活の実態が日本にあると見なされ、裁判で争われたケースもあります。
住民票は、電気や水道の利用状況などと同様に、生活実態を示す強力な判断材料の一つに過ぎない点にご注意ください。
財産を受け継ぐ相続人は、居住無制限納税義務者、非居住無制限納税義務者、制限納税義務者のいずれかに分類されます。
なお、お亡くなりになった方(被相続人)や相続人が外国籍の場合、または日本に一時的に滞在している外国人である場合は、判定が非常に複雑になります。
そのため、本記事では一般的な日本人のケースに焦点を当て、複雑な外国籍特例などの詳細な解説は省略いたします。
省略した内容も含めて厳密なルールを知りたい方は、国税庁ホームページの「相続人が外国に居住しているとき」をご確認ください。
相続や遺贈によって財産を取得した個人のうち、その時点で日本国内に住所がある人が該当します。
この分類に当てはまる場合、日本国内の財産はもちろんのこと、海外に所有している財産も含めたすべての財産に対して相続税がかかります。
相続や遺贈によって財産を取得した個人のうち、その時点で日本国内に住所がない人が該当します。
居住無制限納税義務者と同様に、国内と国外にあるすべての財産が相続税の対象となります。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
*1、財産を取得した人、またはお亡くなりになった人が、相続開始前10年以内のいずれかの期間で日本国内に住所を持っていた場合に限られます。
*2、お亡くなりになった人が「相続開始時、または過去10年以内に日本国内に住所を持っていた」場合に限られます。
相続や遺贈によって日本国内の財産を取得した個人のうち、その時点で日本国内に住所がなく、かつ非居住無制限納税義務者にも該当しない人が当てはまります。
※正確には、制限納税義務者という大きな枠組みのなかの「非居住制限納税義務者」に該当しますが、本記事では分かりやすさを優先して制限納税義務者として解説します。
このケースにおいては、日本国内に存在している財産に対してのみ相続税が課せられます。
つまり、海外に保有している財産については、日本の相続税の対象から外れることになります。
ただ、上記の条件を満たしている場合でも、例外的に課税されるケースがあります。
たとえば、過去に「相続時精算課税制度」を選択して財産の贈与を受けていた場合などが挙げられます。
また、お亡くなりになる前に国内財産の暦年贈与を受けていた場合も、生前贈与加算の対象として持ち戻されます。
この持ち戻し期間は、税制改正により従来の3年から段階的に最長7年まで延長されています。
2026年現在は経過措置の期間中であり、実際に7年分がすべて対象となるのは2031年(令和13年)以降の相続からです。
これらの制度を利用している場合、海外居住者であってもその贈与財産に対して相続税が課せられる可能性があります。
ご自身の状況について正確な判断が必要な場合は、税理士などの専門家へご相談ください。
非居住無制限納税義務者という厳しい仕組みは、海外へ移住して日本の税金を免れようとする「租税回避」を防止する目的で設けられました。
簡単に表現すれば、財産を受け取るタイミングで日本に住んでいなくても、特定の条件に当てはまる場合は、世界中の全財産に対して課税するというルールです。
財産を受け取る人(相続人)が日本国籍を持っている場合の事例です。
お亡くなりになった人、あるいは財産を受け取る人が、相続発生前の10年以内に日本へ住んでいた時期があれば、すべての財産に課税されます。
これは、相続が発生しそうなタイミングを見計らって急に海外へ移住し、税金逃れを図るような行為を封じるための決まりです。
財産を受け取る人(相続人)が日本国籍を持っていない場合の事例です。
このケースであっても、お亡くなりになった人が相続の時点、もしくは過去10年以内に日本へ住んでいれば、全財産が課税対象となります。
たとえお子様が日本国籍を離脱して海外で暮らしていたとしても、財産を残す親(日本人)が日本国内に住んでいるのであれば、結局のところ全ての財産に税金がかかるという仕組みです。
