借地権と底地の同時売却にはメリットはあるが簡単ではない

借地権と底地の同時売却について、解説しています。

借地権と底地の同時売却のメリット

借地権と底地を同時に売却する、という方法があります。

【借地人の借地権売却】と【地主の底地売却】を一緒に行う、ということです。

(借地人)
借地権の相続が面倒。
何かあるたびに、地主への許可取り付けが面倒。
なので、いっそ売ってしまいたい。

(地主)
借地人に相続が発生して、借地人の変更があると何かと面倒そう。
また、地代はもらえるが、土地を自由に使えず何かと不便。
それならば、いっそ底地を売却したい。

借地人・地主とも理由は様々ですが、両者とも(借地人は借地権・地主は底地)売却したいと考えているケースがあります。

このような場合、それぞれが個別に売却するよりも、同時に売却した方がメリットがあります。

そのメリットとは、ズバリ、高く売れるということです。

借地権の売却価格はいくらが妥当?にも記載していますが、借地権だけの売却はそもそも難しく、値段も安くなりがちです。

また、底地だけの売却も流通性が低く、高く売れる、といったものではありません。

(安くなる・高く売れないは、時代状況や場所にもよります。あくまで一般的な傾向としてのお話しです。)

なので、借地人・地主がそれぞれ(借地権・底地)売却したいと考えている場合には、同時売却にはメリットがあります。

借地権と底地の同時売却の問題点

同時売却には、高く売れるメリットがある、とお伝えしました。

ただ、実際に同時売却しようとすると、事はそう簡単に運びません。

売却困難
売却困難
借地権と底地の同時売却は簡単ではない

理由は、借地人・地主・購入者の間で、様々な同意が必要となってくるからです。

例えば、

  1. 借地人の退去時期は?
  2. 売却利益はどのように分配する?
  3. 借地人が遺産分割協議中の場合は?
  4. 売却金額に借地人はOKだが、地主が反対している場合は?

特に2の利益の分配は、揉めるケースが多い、と言われています。

借地人は借地権割合(大体60%~70%位)を根拠に、利益の6割~7割ぐらいを要求し、一方、地主側から見れば、借地権割合はあくまでも相続税評価額で使うものだから、その要求には納得できません。

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借地権の相続税評価

このように揉めるケースが多い利益の分配ですが、落としどころとしては、【半分ずつにする】ことが多いそうです。

では、利益の分配は固まったとして・・

  • 希望売却価格がいつまでもまとまらない
  • 借地人がやはり住み続けたい、と言い出した

など、一筋縄ではいかない問題が発生する可能性もあります。

このように、借地権と底地の同時売却は【単に土地の所有権の売却ではない】と考えた方が無難です。

動画で解説

借地権と底地の同時売却にはメリットはあるものの、簡単にはいかない、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

借地権と底地の同時売却は簡単ではない

動画内容

今借りている土地の借地権を、地主と協力して、底地と同時に売却する、という方法がございます。

「いやいや、お互い納得して貸し借りしているのに、売りたいなんて思う人がいるの?」と思われるかも知れません。

ところが、借地権というのは、契約してみると意外と面倒なことがたくさんございます。

たとえば借地人は、借地権の相続について考えないといけなかったり、何かあるたびに、地主への許可を取り付けたりしなければなりません。

また、地主側も、相続などで借地人が変わることが心配だったり、自分の土地なのに借地人の権利が強いため、不便さを感じていたりします。

それなら、両者で協力していっそ売ってしまおう、という話になるのです。

実は、借地権と底地の同時売却には、それぞれを別個で売るよりも高く売れるというメリットがあります。

これは借地権だけ欲しい、反対に底地だけ欲しいというニーズが一般的には低いことにあります。

仮に借地権や底地だけを買ってくれる相手が見つかっても、なかなか良い値段はつきません。

ですので、お互いに売却したいと考えているのなら、協力して同時売却した方がメリットがあるのです。

しかし、実際に同時売却をしようとすると、事はそう簡単に運びません。

理由は、借地人と地主、そして土地を買ってくれる購入者との三者間で合意が必要だからです。

当然、意見が合わずにもめることがあります。

もめやすい点としては、今の借地人の退去の時期をいつにするのか、売却金額に納得がいかない、売却利益はどのように分配するか、等です。

特に最後の利益の分配で揉めるケースが多いと言われています。

たとえば、借地人が借地権割合を根拠に分配額を提示したとしても、地主側から見れば、借地権割合はあくまでも税金の計算上の評価のために使うものだから、その額には納得できない、というようなケースです。

もめた結果、落とし所として、半分ずつにするというケースもございます。

このように借地権と底地の同時売却は、三者の合意が必要となる分、成約にいたるまでにさまざまな困難が生じる可能性があります。

話合いが長引けば、借地人の気が変わって「やっぱり住み続けたい」となったり、借地人に相続が発生して遺産分割協議が始まれば、収集がつかなくなることもあるでしょう。

借地権と底地の同時売却は、単に土地の所有権の売却ではないと考え、専門家を交えて話し合いを進めることをお勧め致します。

そして、相続税対策や相続手続き、相続税の申告など、相続に関することなら税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。

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