借地権の相続は「地主の同意」が必要な場合もある

借地権の相続や遺贈、注意点について、解説しています。

借地権の相続は原則、地主には関係ない

借地権を持った方が亡くなった。

では、その借地権を地主に断りなく、相続人が相続できるのか?

結論から言えば、地主に関係なく、相続人は借地権を相続できます。

そして、被相続人と同居していたかも関係なく、相続人は借地権を相続できます。

たとえ、被相続人(借地権者)の死亡に伴い、地主から【借地権を返してくれ】と言われても同じです。(借地権を相続できます。)

また、借地権に限らず、賃貸人、又は賃借人が亡くなった場合、通常、それまでの契約は相続人に引き継がれます。

契約内容も同一のままであり、もう一方の契約者側の承諾は不要です。

遺贈の場合には要注意

上述の通り、通常は借地権の相続において、地主の承諾は必要ありません。

ただ、相続する相手が相続人でなく、遺贈(詳しくは遺贈とはに記載)等による、第3者への相続の場合には、地主の承諾が必要です。

また、借地権上の建物等についての遺贈も同様(地主の承諾が必要)です。

借地権の相続
借地権の相続
借地権の相続が、遺贈による第3者への相続の場合には、地主の承諾が必要

届出は必要

もしも、

を提出している場合で、相続等により土地の所有者、又は借地人等に変更があった場合には、その旨を速やかに借地人等との連名の書面により、届け出る必要があります。

借地権の相続で注意が必要なケース

親が所有している借地権に、親本人が自宅を建て住んでいた。

ただ、親が高齢になり、介護施設に入居することに・・

そこで、別居中の子供などが親の代わりに、そこに住んだり、建て替えたりすることに・・

このようなケースは、よくあることだと思います。

ただ、相続税の観点から言えば、注意が必要です。

基本的に自宅(自己居住用)の相続は、条件によっては、小規模宅地等の特例により、相続税評価額を8割減額することが可能です。
(詳しくは小規模宅地等の特例は8割も評価減が可能な相続税対策の王様に記載)

しかし、上述のケースの場合、親の自己居住用とは認められなくなります。

でも、親もそこに住んでいないのだから、そもそも親の自己居住用ではないので、小規模宅地等の特例の適用は無理では?と思われるかもしれません。

ただ、詳しくは老人ホームに入居しても小規模宅地等の適用は可能?に記載していますが、条件しだいでは適用可能です。

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動画で解説

借地権の相続に地主の同意が必要かどうかについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

借地権の相続に地主の同意は必要?

動画内容

原則的な考え方としては、借地人の相続は地主には関係のないことです。

そのため、借地権を相続することについて、地主の同意や許可を得る必要はございません。

仮に地主から前の借地人と同居していないからダメだ、とか、新しい借地人に代わるなら借地を返してくれと言われても、法律上、借地権を相続できることに変わりはありません。

ただ、相続した人は今後、地主に地代を支払っていかなければなりませんので、連絡は必要となります。

このことと誤解してはいけないのが、相続人ではない第三者が遺言書などの効力で借地権を取得した場合です。

相続人でない第三者が借地権を取得するのであれば、地主の承諾が必要となってきます。

借地権に対する承諾はもちろんのこと、土地に建てられた建物についても、第三者が取得するときは、地主の承諾が必要となります。

なお、借地権の認定課税を防ぐために、税務署に対して「土地の無償返還に関する届出書」や「相当の地代の改訂方法に関する届出書」を提出していることがあります。

この場合は、借地人に変更があると相続かどうかにかかわらず届け出が必要となります。

最後に、借地権の相続についてお考えの方に向けて、注意が必要なケースをご紹介します。

たとえば、今、親が借地に自宅を建てて住んでいるとします。

ところが親が高齢になって、介護施設に入ることになったとします。

もしこのとき、別居中の子供が親の代わりにそこに住んだり、建て替えたりすることを検討するときは、ちょっと注意が必要です。

親が借地に自宅を建てて住んでいる、この状態で相続が発生すれば、借地権に対し小規模宅地等の特例が使えます。

小規模宅地等の特例が使える土地の一つ、自己居住用の土地にあたるからです。

借地権であっても問題はありません。

介護施設に入居してそこに住まなくなったとしても、条件次第では適用できます。

もし、小規模宅地等の特例が使えれば、最大で借地権の評価額を8割も減らすことができます。

しかし、そこに親以外の人間が親に代わって住み始めたり、建て替えをしたりすると特例が使えなくなってしまいます。