どこまでを遺産の範囲に含めるのか?

相続財産は、目に見える遺産だけとは限りません。

既に使ってしまった被相続人の現預金なども、遺産の範囲に含まれる場合があります。

遺産の範囲の争いを避ける方法

相続のトラブルの一つに、【遺産の範囲の争い】というものがあります。

これは文字通り、どこまでを遺産の範囲に含めるのか?という問題です。

例えば、被相続人(亡くなった方)が母、相続人が長女と次女の二人とします。

長年、長女は母の面倒をみるために、母(被相続人)から預金通帳とキャッシュカードを渡され、

  • 食費
  • 交通費
  • 介護費用
  • 住宅工事費
  • 母の医療費
  • 母の洋服代

などを、母のお金で支払っていました。

しかし、いざ相続が始まると、次女が
「長女はお母さんのお金を使い込んでいた。その使い込んだお金の法定相続分(この場合1/2)を、私(次女)はもうら権利がある」
と言ってきた。

遺産の範囲の争い
遺産の範囲の争い
親の面倒を見るために使ったお金は、遺産に含まれる?

しかし、長女はこれに納得できません。

「あくまでも母の指示のもと、母のお金を使ってきた。」と長女は主張します。

しかし、次女は「母は半分ボケていた。それに、いくら母の面倒をみるためとはいえ、こんな多額の金額がかかるわけがない。」と次女は主張します。

それに対して、長女は・・

というように、揉めるケースがあります。

次女の主張をまとめると、長女は私的に母のお金を使ってきた。その分は遺産に含めるべきだ、ということです。

長女としては、あくまでも母のために使ったお金なのに、勝手に使っていると言われる。

このケースが泥沼化すると、最終的には裁判で争うことになります。

また、裁判で争うまでいかなくても、遺産の範囲が変わると、

  • 遺留分
  • 相続税額

などに影響してきます。

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このような問題を避けるためには、このケースで言えば、長女が

  • 支払い先
  • 支払い内容
  • 支払った日付
  • 支払った金額

などのメモを残すことが重要です。

また、レシート(領収書)や明細書(クレジットカードで支払った場合)などを残しておくことも重要です。

これらの証拠があれば、次女に説明することが出来ます。

これらの証拠がいっさいなく、「母の面倒をみるために、2千万円使ったから・・」と他の相続人に言っても、納得してもらえない可能性があります。

遺産の範囲の争いを避けるためにも、上述のような証拠を残すようにしましょう。

動画で解説

親の面倒をみるために使ったお金は遺産に含まれるのか、ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

親の面倒を見るために使ったお金は、遺産に含まれる?

動画内容

相続でトラブルになるケースの一つに、遺産の範囲で争うケースがあります。

たとえば、お母さんが亡くなり、相続人が長女と次女二人だけのケースがあるとします。

法定相続分は2分の1ずつです。

長女は、生前のお母さんと同居しており、亡くなる前の数年間は、お母さんの介護をしていました。

お母さんからは預金通帳とキャッシュカードを渡されていたので、そこからお母さんの食費や洋服代、医療費、介護費、病院などへの交通費、自宅の工事にかかった費用などを、お母さんに代わって支払っていました。

しかし、お母さんが亡くなった後、お母さんの通帳の残高を見た次女から、信じられないことを言われてしまいます。

「お姉ちゃん、お母さんの通帳のお金を使い込んでいるよね」。

一体なぜ、次女はこのようなことを言うのでしょうか。

次女の主張としては、使い込んだお金は、もともとお母さんの財産なので、私たちの相続財産になるはずのものだった。

なので、使い込んだ分の半分をお姉ちゃんから支払ってもらう権利がある、というものです。

もし、お母さんの預金が1,000万円あったけれど、姉が600万円を使い込んでいるという主張なら、600万円のうち、法定相続分の300万円を支払ってほしい、ということです。

しかし、こんなことを言われて、長女は納得できません。

長女は「通帳のお金は、あくまでもお母さんの指示のもと、お母さんのために使っただけ。」と主張します。

しかし、それを聞いたくらいで諦めるくらいなら、次女も最初から言いません。

今度は「お母さんは認知症気味だったから、お姉ちゃんの言い分は信用できない。

それにいくらお母さんの面倒をみるためとはいえ、こんなにたくさんお金がかかるわけがない。」と主張します。

こうなると、もう収集がつきません。

この話が泥沼化すると、最終的には裁判で争うことになります。

裁判で争うまでいかなくても、遺産の範囲が変わると、遺留分や相続税額にも影響し、話がどんどん複雑化していきます。

では、仮に次女の言い分が正しければ、長女が使い込んだお金は相続財産に含まれるのでしょうか。

答えは、YESとなります。

正確にいうと、使い込んだ人物に対して、使い込んだ額のうち法定相続分までの財産を請求して、取り戻す権利が認められています。

これは法律上の権利の話ですので、介護を姉に任せっぱなしだった次女を人道的な理由から責めても無意味です。

次女は、法律で2分の1の財産を相続する権利があって、次女の言い分が正しければ、その権利を姉によって侵害されている、ということになるのです。

このような争いにならないためには、通帳を渡された長女は、お母さんのための支払いを、すべて記録しておくことが重要になります。

面倒でも、支払い年月日、支払い先、支払いの内容、支払った額などをメモや帳簿で残しましょう。

レシートや領収書、クレジットカードの明細など、メモの内容を証明する資料も併せて保管しておくようにしてください。

これらの証拠があれば、次女に説明することが出来ます。

逆に証拠がいっさいなければ、納得してもらうのは難しいでしょう。

特に数年間にわたる介護となれば、高額な引き出しになっていることと思います。

何の資料もないのに「2,000万円はお母さんのために使った」といきなり主張しても、周りは信じてあげることができません。

このような事態を避けるために、親のための支払いを親の財産から行ったときは、証拠を確実に残すようにしましょう。

そして、高額な支払いの管理を一人で背負うことなく、他の相続人に状況を時々報告したり、支払いが高額になって困っていると相談をしたりすれば、なお良いでしょう。

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