姻族関係だと亡くなった夫や妻の親兄弟の扶養義務を負うことも

夫や妻が亡くなった場合、

  • 遺された配偶者が名字を旧姓に戻したい
  • 亡くなった相手の家族との親族関係を解消したい

と思われるかもしれません。

また、亡くなった相手の家族との姻族関係があると、亡くなった夫や妻の親兄弟などに対して、扶養義務を負う可能性もあります。

今回は、【旧姓に戻す・配偶者の親族との姻族関係を終了させる】手続き方法をご紹介しています。

婚姻前の名字に戻す手続きは配偶者と子で異なる

配偶者が亡くなられた。

婚姻により姓を変更していた場合、残された配偶者は、名字を婚姻前に戻す・戻さないを自由に決められます。

名字
名字
旧姓に戻す・戻さないは自由

名字を旧姓に戻すには、復氏届を提出する必要があります。

復氏届の提出先及び必要なもの等

  • 提出先:残された配偶者の本籍地、もしくは住所地の市区町村役場
  • 提出期限:なし(注1)
  • 必要なもの:戸籍謄本(本籍地の場合は不要)・婚姻前の戸籍謄本・印鑑など

(注1:原則として期限はありませんが、配偶者が外国人であり、亡くなった日の翌日から3か月を経過した場合には、復氏届の届に家庭裁判所の許可が必要となります。)

また、子供がいる場合は注意です。

この復氏届で旧姓に戻るのは本人のみです。

子供は子供で手続きをしないと、名字も戸籍もそのままです。

子供も旧姓に戻し・旧姓に戻った配偶者の戸籍に入れる場合には、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立書を提出する必要があります。

そして許可審判を受けて、入籍届を提出して戸籍を移します。

子の氏の変更許可申立書の申立人及び必要なもの等

  • 提出先:子の住所地の家庭裁判所
  • 申立人:子(子が15歳未満のときは子の法定代理人)
  • 必要なもの:申立書・子の戸籍謄本・父母の戸籍謄本など

配偶者の親族との姻族関係を終了させる手続き

配偶者が亡くなった場合、婚姻関係は解消になります。

ただ、配偶者の親族との姻族関係は、何もしなければそのまま続きます。

この姻族関係を終了させることは出来ないか?

実は姻族関係終了届により、配偶者の親族との姻族関係を終了させることが出来ます。
(子供と亡くなった配偶者の親族との関係は変わりません。)

姻族関係終了届には、配偶者の親族の同意は不要です。

そして姻族関係が終了すると、亡くなった配偶者の親族の扶養義務等がなくなります。

扶養義務
扶養義務
姻族関係が終了すると、亡くなった配偶者の親族の扶養義務等がなくなる

姻族関係終了届の提出先及び必要なもの等

  • 提出先:本籍地、もしくは住まいの市区町村役場
  • 届出人:残された配偶者のみ(注2)
  • 必要なもの:配偶者の死亡事項の記載がある戸籍(除籍)謄本・印鑑など

(注2)手続は残された配偶者のみしか出来ません。亡くなった配偶者の親族側で手続きは出来ません。

姻族関係が終了したとしても、自動的に戸籍が変わることはありません。また、名字もそのままです。

旧姓に戻したい場合には、復氏届は別にする必要があります。

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戸籍の取得方法

復氏届・婚姻関係終了届を動画で解説

復氏届・婚姻関係終了届について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・天野敬佑が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

復氏届・婚姻関係終了届

動画内容

夫や妻が亡くなった場合、遺された配偶者が名字を旧姓に戻したい時や、亡くなった相手の家族との親族関係を解消したい時は、どのようにすればよいのでしょうか?

まず「旧姓に戻したい」という時は、役所に「復氏届」の手続きをとることが必要になります。

ただし、この手続きで旧姓に戻れるのは本人のみです。

子どもも旧姓に変更して、遺された親と同じ戸籍に入れるには、家庭裁判所で手続きをとらなければなりません。

また、相手の家族との親族関係を解消するためには、役所に「姻族関係終了届」を提出して行います。

そもそも相手の家族とは、結婚したときから姻族という法律関係になっています。

夫婦からみて3親等内の姻族は、法律上では親族として扱われます。

さて、注意したいのは扶養義務です。

扶養義務とは、親族同士で生活を助け合う義務のことです。

原則は夫婦や血の繋がった家族が扶養義務を負いますが、もし家庭裁判所で特別の事情があると認められた場合、3親等以内の姻族でも扶養義務を負うことがあるのです。

もし「姻族関係終了届」を提出せずに放っておくと、亡くなった夫や妻の親兄弟などに対して、扶養義務を負う可能性があるということになります。

以上のように、遺された配偶者が旧姓に戻す場合や、相手の親族との関係を解消する場合は、いずれも遺された配偶者からの意思表示が必要になります。

手続きに期限はありません。

自動的に変更されると誤解して、手続きを忘れないようにしましょう。