被相続人の小規模企業共済の掛金を受取らず「契約を継承する」制度がある

被相続人が加入していた小規模企業共済の契約を「継承できる条件」や「継承した場合の相続税評価額」はどうなるのか?について、解説しています。

小規模企業共済の承継通算とは

被相続人が小規模企業共済契約をしていて、遺族がその契約に基づいて支給を受ける共済金(被相続人が死亡まで掛けていた小規模企業共済掛金)は、退職手当金として相続財産になります。
(詳しくは小規模企業共済掛金は退職手当金扱いに記載)

通常は、この共済金を受け取り、被相続人の小規模企業共済契約は終了となります。

ただ、共済金を受け取らずに、この小規模企業共済契約を相続(継承)し、継続したい、という方もいらっしゃいます。

ここでいう継承とは、被相続人の掛金と掛金納付月数を引き継ぐことを意味します。

これは一定の条件を満たせば可能となります。

なお、このような被相続人の掛金納付月数を通算して、共済契約を継続することを承継通算と言います。

小規模企業共済の承継通算
小規模企業共済の承継通算
被相続人の掛金を受取らず、契約を継承する制度があります。

承継通算が出来る条件

以下の条件を全て満たす必要があります。

  1. 被相続人の事業の全部を承継した相続人である
  2. 1の相続人が被相続人の配偶者、又は子供である
  3. 被相続人の死亡から1年以内に(中小機構へ)承継の手続きをする

1の全部を承継には注意が必要です。

文字通り全部です。
なので、一部の承継ではダメです。

例えば、被相続人が不動産賃貸業をしていた場合には、その全ての賃貸物件を相続する必要があります。

また、複数人の相続人での事業承継も不可です。

妻と子供で賃貸物件を相続した場合には、継続できないということです。

どちらか一人だけが全てを相続した場合に、小規模企業共済の承継通算制度は利用できます。

承継通算した場合の相続税評価額

小規模企業共済の承継通算制度を利用したからといって、小規模企業共済が相続財産から除外される訳ではありません。

相続人が共済金を受け取った場合と同様に、請求して受け取ることが出来る権利として、死亡退職金として相続税評価します。

承継通算制度を利用する・しないに関わらず、相続税評価額は変化しません。

関連記事へのアイコン関連記事

死亡退職金や弔慰金の相続税評価

動画で解説

相続で小規模企業共済の契約を継続できるのか?ということについて、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

相続で小規模企業共済の契約を継続する方法

動画内容

小規模企業共済とは、個人事業主や小規模な会社の役員のための、退職金の代わりとなる制度です。

現役時代に掛け金を毎月支払って、退職したときに、それまでの掛け金と納付月数に応じた共済金を受け取ることができます。

もしも、現役の個人事業主や会社役員の方が、共済金を受け取る前に亡くなった場合には、相続人が共済金を受け取ることができます。

そして、この共済金は相続税の対象となり、死亡退職金として評価します。

通常はこの共済金を受け取り、小規模企業共済の契約関係は終了となります。

ただ、共済金を受け取らずに、小規模企業共済の契約そのものを承継したい、という方がいらっしゃいます。

つまり、これまでの掛け金や納付月数を引き継いで、「自分が続けたい」ということです。

このようなニーズがある理由は、小規模企業共済の共済金のしくみにあります。

小規模企業共済の共済金は、掛け金の納付月数が多いほど増えていきます。

つまり小規模企業共済では、掛け金の納付月数が長いことに価値があるのです。

では、掛け金や納付月数を引き継ぐことは可能でしょうか?

掛け金や納付月数を引き継ぐことを承継通算というのですが、小規模企業共済の承継通算は、それを承継する相続人が一定の条件を満たせば認められます。

条件は、全部で3つです。

1つ目は被相続人、つまり亡くなった人の事業を全部承継することです。

言葉どおり、全部を一人で承継しないといけません。

たとえば、被相続人の生前の事業が不動産賃貸業であれば、全ての賃貸物件を相続することが条件になります。

複数の相続人で承継すると、条件を満たさなくなるので注意をしてください。

2つ目は、承継通算をする相続人が、被相続人の配偶者か子供であることです。

3つ目は、被相続人の死亡から1年以内に承継の手続きをすることが条件になります。

小規模企業共済は、中小機構という機関が運営していきますので、期限内に連絡をして手続きを行います。

最後に、承継通算をしたら相続税はどうなるのか、ご説明致します。

たとえば承継通算をして、共済金の受け取りを先延ばしにしても、相続があった時点で相続税は発生します。

共済金を受け取った場合と同じように、死亡退職金として評価し、相続税を計算しなければなりません。

つまり、承継通算制度を利用する・しないに関わらず、「相続税の計算には影響がない」ということです。

契約を引き継げば、相続税を払わなくてよくなる、というのは誤解ですので注意をしてください。