役員退職金の損金計上には一定の制限がある
多額の役員退職金の場合、一定の金額以上は損金にならない場合があります。
損金?と思われる方もいらっしゃるかと思います。
簡単に言えば、損金とは法人税法上の費用です。
会社経理をなされていない方は、不思議に思うかもしれませんが【会計上の費用=法人税法上の費用】とはならない場合があります。
例えば会計上では、役員退職金として1億円の費用計上している。
しかし法人税法上では、そのうちの5,000万円は費用にはならない(損金として認められない)、というようなことがあるということです。
会社の費用にならないので、その分法人税が高くなります。
役員退職金の適正金額の算出方法
例えば実態はほとんど働いておらず、勤続年数も短い役員の退職金が節税のために1億円である。
この金額は適正でしょうか?
多額の役員退職金を支払うことは、法人税はもちろん、会社の財産の減少を意味しますので相続税対策にもなります。
(ちなみに相続税対策として不動産管理会社を設立しているケースの話しですので、そもそも会社のオーナーでもなければ、株主でもないという場合は相続税は関係ありません。)
いや、年一回の出社でも退職金1億円の価値はある。
そう思う方や、そう思われる方もいるケースはあるのかもしれません。
ただ、適正なのか?を判断することは非常に難しい問題です。
そこで以下のような計算式をベースに、実務上では適正金額を判断します。
役員の報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率
役員の報酬月額については、最終報酬月額や平均報酬月額であったりします。
役員在任年数については、役員として登記されていた期間の事です。
功績倍率については、概ね1~3倍の範囲内になるのが一般的です。
(例)
- 最終報酬月額:50万円
- 役員在任年数:10年
- 功績倍率:2倍
このケースでは【50万円 × 10 × 2】=1,000万円が役員退職金として適正である、ということになります。
この場合、役員退職金を1億円としていた場合、杓子定規に判定すると、法人税法上9000万円は損金(費用)として認められないということです。
動画で解説
役員退職金を活用した相続税対策の注意点について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。