赤字会社を使った相続税対策

赤字会社への相続は、節税対策や事業承継の手助けになる場合があります。

ただし、赤字会社への相続は、絶対に税金が無税になるわけではありません。

相続財産を法人の赤字に充てるという方法は、非常にシンプルな節税の方法ではあるのですが、現実に行う場合には注意が必要です。

そんな赤字会社を使った、相続税対策のご案内です。

赤字会社への相続は節税対策と事業承継の手助けになる

相続税は個人に課せられる税金です。

ただし、遺言などによって、会社(法人)へ財産を相続税させることも出来ます。

ちなみに、法人に限らず町内会や同好会にも相続させることが出来ます。
(詳しくは法人などへの相続に記載)

会社(法人)が財産を相続した場合は、相続税ではなく会社の利益として法人税が課税されます。

会社
会社
会社(法人)には相続税ではなく、法人税が課税されます。

これは遺贈(遺言による相続のこと)により財産を取得した法人は、財産の時価に相当する金額を利益として計上する必要があるからです。

しかし、法人税は過去の累積の赤字がある場合には、その分までは利益がでたとしても法人税がかかりません。

累積赤字
累積赤字
法人税は過去の累積の赤字がある場合には、その分までは利益がでても法人税がかかりません。

例えば、以下のような場合で5年目に会社が財産を相続して、会社の利益が1億円でたとします。
(会社の本業の利益はプラスマイナス0円だったとします。)

  1. (1年目):
    赤字5000万円(累積赤字5000万円)
  2. (2年目):
    赤字3000万円(累積赤字8000万円)
  3. (3年目):
    黒字2000万円(累積赤字6000万円)
  4. (4年目):
    赤字4000万円(累積赤字1億円)
  5. (5年目):
    黒字1億円(累積赤字0円)

5年目の時点で、会社の1年~4年までの累積赤字が1億円あります。

ちなみに正式には、この累積赤字のことを「繰越欠損金(くりこしけっそんきん)」といいます。

繰越欠損金の細かい内容は、以下のとおりとなります。

~以下、国税庁HP(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除)より引用~

繰越控除される欠損金額は、各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額です。

ただし、この欠損金額からは、この繰越控除の規定の適用を受けようとする事業年度前の各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入された欠損金額及び「欠損金の繰戻しによる還付」の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額は除かれます。

例えば、繰越欠損金の額が150万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合には、150万円のうち100万円が損金の額に算入され、その事業年度の所得金額は0となります。

なお、中小法人等以外の法人の各事業年度における上記の控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額に対してそれぞれ次の率を乗じた金額とされています。

  1. 平成24年4月1日~平成27年3月31日開始事業年度・・・100分の80
  2. 平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度・・・100分の65
  3. 平成28年4月1日~平成29年3月31日開始事業年度・・・100分の60
  4. 平成29年4月1日~平成30年3月31日開始事業年度・・・100分の55
  5. 平成30年4月1日~開始事業年度・・・100分の50

個人資産はあるけれども、自社の累積赤字があるオーナー社長からすれば、このような繰越欠損金が多額にある会社へ財産を相続させることは、

  1. 相続税がかからない
  2. 法人税がかからない
  3. 会社運営の援助になる

など、メリットが大きいです。

また、会社がオーナー一族などで運営されている場合には、事業承継の手助けにもなります。

事業承継
事業承継
オーナー一族の会社への相続(遺贈)は、資金繰りの改善など事業承継の手助けにもなります。

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赤字会社への相続は絶対に税金が無税になるわけではない

上記のように、相続した財産が繰越欠損金の範囲内であれば、法人税はかかりません。

ただし、繰越欠損金の範囲を超えた場合には、その超えた金額については法人税の対象となります。

例えば繰越欠損金が1億円あり、1億6000万円を相続した場合には、6000万円は法人税の対象となってきます。

そもそも繰越欠損金もなく、黒字企業に相続(遺贈)した場合は、丸々その相続財産は法人税の対象となってきます。

全て
全て
繰越欠損金もなく黒字企業の場合、相続した財産全てが法人税の対象になります。

相続財産が多額の場合は、相続税率よりも「法人税率のほうが高くなりやすい」ので注意しましょう。

また、会社(法人)への相続(遺贈)は財産の譲渡とみなされます。

もしも、その財産に合み益がある場合には、遺贈した方に譲渡所得税が課税されます(住民税はかかりません)。

さらに、相続(遺贈)により同族会社の株価が上がった場合には、被相続人から株主への相続(遺贈)があったとされ、相続税が課税されます。

法人を使った相続税対策は複雑になりがちです。

相続税対策として、会社(法人)の活用を考えている。

相続税対策
相続税対策
相続税対策として会社の活用などを考えている。

そんな場合は、東京新宿神楽坂の都心綜合会計事務所までご相談下さい。

無料相続相談を承っております。
(なお、お電話での相続相談は承っておりません。)

赤字会社に借地権を移転する

借地権を設定された土地の相続税評価は、「底地の価額」で評価することになります。

例えば、借地権割合が70%で、自用地としての評価額が1億円である場合、この土地に借地権を設定すると、その相続税評価額額は底地部分の3,000万円となります。

この借地権を赤字会社に設定することにより、相続税の節税を図ることが出来ます。

本来、権利金の支払いなしで借地権を設定した場合、権利金相当額の贈与があったとものとして取り扱われます。(権利金の認定課税といいます。)

上述のケースの場合、借地権を設定した会社に7,000万円の受贈益が発生し、それは法人税の対象になります。

ただし、この時に累積の7,000万円以上の繰越欠損金がある会社であれば、法人税は発生しません。

赤字会社に借地権を移転した場合、金額にもよりますが、相続税の大幅な節税になり、かつ、法人税もかからない、といったことが可能となります。

ちなみに、相当の地代(年間で相続税評価額の6%程度)を会社が支払う場合には、権利金の認定課税はありません。

なので、この方法で節税対策を行う場合には、通常の地代(年間で底地価額の6%程度)を支払うようにしましょう。

赤字会社を利用して基礎控除も特別控除も利用する

贈与税は、個人から個人への贈与に対して、かかる税金です。

よって、法人から個人への贈与に対しては、贈与税はかかりません。

ただ、税金が免除されるというわけではなく、「一時所得」として、所得税の対象になってきます。

そして、一時所得には【50万円の特別控除】があります。

これにより、法人から個人への贈与の金額が、50万円以内なら税金は発生しません。

そして、これは160万円まで無税で贈与できる、ことを意味します。

  • 「個人 → 個人」の贈与には、110万円の基礎控除
  • 「法人 → 個人」の贈与には、50万円の特別控除

があるからです。

よって、贈与する場合には、「個人 → 法人 → 個人」という経路を追加することも検討しましょう。

なお、「個人 → 法人」への贈与は、受贈益となり、法人税の対象になってきますが、繰越欠損金の範囲内であれば法人税はかかりません。

また、「法人 → 個人」の贈与の場合、法人としては寄附金を計上する形になりますが、全額が損金(いわゆる費用)になるわけではありません。

損金(費用)に計上できる金額が減ることを意味し、黒字会社であれば、その分法人税等が増加することを意味します。

ただ、元から赤字会社であれば、法人税等を考慮する必要はありません。

このように赤字会社を利用すると、相続税はもちろん、贈与税の節税効果も見込めます。

複雑になりやすいのが難点

赤字会社を使った相続税対策について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

赤字会社を使った相続税対策

動画内容

個人の遺産は、法人に相続させることもできます。

しかし、その場合、相続財産の全額が会社の利益となり、法人税の対象となってしまいます。

税金がかかるのであれば、法人に相続させることに、あまり意味はないように感じられます。

しかし、もしその法人が赤字の状態であれば、利益を得ても赤字と相殺されるため、法人税はかかりません。

これを利用して法人に財産を相続させれば、相続税も法人税もかからない、ということです。

ゼロ
ゼロ

また法人には繰越欠損金といって、過去の赤字を一定の年数まで累積できる制度があります。

たとえば、1年目がマイナス5,000万円の赤字、2年目も赤字でマイナス3,000万円だった場合、繰越欠損金は、累積されて8,000万円となります。

もし、3年目は黒字でプラス2,000万円だったとしても、繰越欠損金は2,000万円分しか相殺されないことから、まだ赤字が6,000万円残る計算です。

つまり、相続が発生した年が黒字だったとしても、過去の累積赤字の方が黒字よりも多ければ、その相続の方法は使えるということです。

もし、お子さんなどが事業承継する会社であれば、会社の累積赤字と相続財産を相殺することで、相続税の節税だけではなく、赤字解消や資金繰りの改善といった事業の手助けにもなります。

ただし、赤字額を超えて会社に相続させた場合、超えた部分は全額が法人税の対象ですから、場合によっては、相続税よりも高くつくことに注意が必要です。

高くつく
高くつく
逆に高くつくことも・・

また、相続財産を法人の赤字に充てるという方法は、非常にシンプルな節税の方法ではあるのですが、現実に行う場合には、注意点があります。

まず、会社に相続させた財産に含み益がある場合、その含み益は、亡くなった方の譲渡所得とされ、所得税の対象となってしまいます。

場合によっては、準確定申告が必要になってくるので注意が必要です。

続いて、同族会社に財産を相続させたことにより、その株価が上がった場合、亡くなった人から株主である親族などに相続があったものとされ、相続税が課税されます。

法人を使った相続税対策は、こうした注意点もあり、複雑になりやすいのが難点なので、必ず相続の専門家に相談しましょう。