究極の相続税対策は存在しない

突然ですが、一般社団法人を使った相続税対策というものをご存知でしょうか?

一般社団法人とは、株式会社と違って、営利を目的としない会社のことです。

そして、この一般社団法人を使った相続税対策は【究極の相続税対策】とも呼ばれていました。

究極
究極
一般社団法人を利用した相続税の節税は、究極の相続税対策と呼ばれていた

今回は、そんな「一般社団法人を使った相続税対策」について、解説しています。

一般社団法人の設立は究極の相続税対策だった

株式会社を設立して相続税対策を図る。(詳しくは、会社設立で被相続人の生前中に財産を移転するに記載しています。)

実はこれにはデメリットとまでは言えませんが、大きな弱点があります。

それは会社の業績が好調の場合です。

会社の業績が好調になりますと、会社の資産も増え、自社株の評価額も高くなります。

業績アップ
業績アップ
会社の業績アップ ⇒ 自社株アップ ⇒ 相続税アップ

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そうなると、節税目的で設立した会社なのに、逆に相続税が高くなる可能性があります。

会社の業績が良くなるなら、それでいいではないか?

確かにそういう風に考える方が多いと思います。

ただ、中には節税目的ためだけの会社を設立し、

  • 会社は儲からなくてもいい
  • 会社の仕事で忙しくなるのは本意ではない

という方もいます。

そのような方にとって、株式会社を設立して節税策を図ったのに、むしろ相続税が増えるという逆効果になる場合があります。

また、会社の業績アップはうれしいけれども、自社株の評価は下げ、相続税の節税をしたいという方もいます。

そのような場合、

  1. 会社の業績アップを図る
  2. 自社株の評価を下げる

という、ある種矛盾した対策が必要でした。

普通は「業績アップ=自社株アップ」となります。

そこで、このような自社株の価値増加への対策として、一般社団法人を利用するという方法がありました。

多くの方が会社を設立して相続税対策を考える際、その会社は株式会社を想定します。

ただ、会社には「株式会社という形態」ではなく、「一般社団法人という形態」もあります。

そして一般社団法人には、株式(出資)という概念がありません。

ちなみに税率は、一般の法人(株式会社)と変わりません。

一般社団法人が得た利益は、個人の財産から完全に切り離せます。

この仕組みを利用して、株式会社ではなく、一般社団法人を設立すれば自社株対策が可能でした。

いくら一般社団法人が儲けようとも、自社株という概念がないため、相続税に影響しないからです。

一般社団法人の設立は、【究極の相続税対策】と言われていました。

一般社団法人を設立して相続税対策
一般社団法人を設立して相続税対策
究極の相続税対策と言われていた?今は違うの?

行き過ぎた相続税対策には国の規制が入る

相続対策には様々な方法があります。

そして、この一般社団法人を利用した相続税対策は、その中でも究極と言われていました。

しかし、タワーマンションによる相続税対策は黄色信号などのように、行き過ぎた節税方法には国の規制や厳しいチェックが入ります。

この一般社団法人を利用した相続税対策にも規制が入り、以下のようになりました。(正確には規制ではなく法改正です。)

次のいずれかの要件を満たす法人を「特定一般社団法人」として2018年4月1日以後の相続から、この日より前にすでに設立されている一般社団法人は2021年の4月1日以後の相続から一定の相続税が課税されます。

  • 相続開始直前における同族役員数の、その法人の役員総数に占める割合が2分の1を超えること
  • 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間が合計3年以上であること

以上のどちらかを満たす場合は特定一般社団法人の扱いとなり、当該法人の純資産額を相続開始時における同族役員数(亡くなった人も含みます)で割った額が遺贈されたものとしてみなされ、ここに相続税が課税されるという仕組みです。

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遺贈とは

簡単に言えば、一般社団法人には自社株という概念がないので、「代わりに一般社団法人の純資産額で相続税を課します。」ということです。

相続税を課す
相続税を課す
一般社団法人の純資産額で相続税を課す

ちなみに同族役員とは当該一般社団法人の理事のうち、被相続人となる者やその配偶者、または3親等内の親族、その他被相続人と特殊の関係がある者(例えば被相続人が役員となっている会社の従業員など)とされています。

また、以下のどれか一つにでもあてはまると、個人から一般社団法人に対して財産が低額で譲渡されるなどして、相続税や贈与税が不当に減少する結果になる場合には、受け取った側の一般社団法人を個人とみなして、当該財産については相続税または贈与税が課税されます。

  • 定款や規則で、当該一般社団法人の役員等に占める親族等の割合が三分の一以下である旨の記載がない場合
  • 当該法人に財産を贈与したり遺贈した人、または当該者の親族に対して特別な利益を与える場合
  • 当該一般社団法人が解散した場合に、残余財産が国や地方自治体等に帰属することになる定めが定款等にない場合
  • 当該法人について、仮装や隠ぺいなどの事実がある場合

この規定は2018年4月1日以降の財産移転に係る相続税、または贈与税について適用されます。

一般社団法人を利用した相続税対策は今後も利用や検討をするべきか?

上述のように、法改正により相続税対策を封じられています。

今後も一般社団法人を利用した相続税対策は可能なのか?

率直に言ってこの方法に固執して、抜け道を探すのは得策ではないと考えます。

例えば、今回の国側の手当てに対してさらに抜け道を探すならば、

  1. 同族役員数を減らして特定一般社団法人とみられないようにする
  2. 死亡するリスクの低い若い理事を入れる

などの方法が考えられますが、綱渡りのようなものでリスクは残り続けます。

それに国側はいくらでも法改正ができるので、今後も抜け道に対する締め付けをさらに強化してくる可能性は十分にあります。

また、人が実際に死亡するタイミングを正確に予想することができない以上、相続税対策封じを考える国側が有利となります。

法律の抜け道みたいなものを利用して、節税対策をすることは賢明ではありません。

締め付け強化
締め付け強化
抜け道に対する締め付けは強化されます。

このような究極の〇〇法、というようなものは、大体後から規制や法改正がなされ、使えなくなることがほとんどです。

一般社団法人を利用した相続税対策は、慎重に検討する必要があります。

過度な節税対策には十分気を付ける

究極の相続税対策は存在する?について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

究極の相続税対策は存在する?

動画内容

一般社団法人を使った相続税対策というものをご存知でしょうか?

一般社団法人とは、株式会社と違って、営利を目的としない会社のことです。

通常、株式会社の代表者が亡くなって、相続が発生した場合、その持ち株が引き継がれ相続税がかかります。

ところが一般社団法人の場合、株式というものがないため、代表者が亡くなっても相続税は発生しません。

このことから、一般社団法人を設立して、個人の財産をその法人に移転するという節税が流行しました。

個人で持っていれば、相続税がかかる財産を、一般社団法人のものにしてしまえば、会社の経営を引き継ぐことで、実質、税金なしで相続できるということです。

この方法は、究極の相続税対策、と呼ばれた時期もありました。

ところが、法改正によって、2018年4月以降の相続では、一般社団法人を親族などで経営する場合、相続の時に、相続税がかかるようになりました。

具体的には、その一般社団法人の役員のうち、一定の関係にある役員が占める割合などで判定をされます。

一定の関係とは、三親等内の親族や事実婚関係にある人、法人の従業員なども含まれます。

相続税の対象となった場合の税額は、一般社団法人の純資産の額を基準に計算されます。

また、個人から一般社団法人に財産を移転するときも、その移転が相続税などを下げる結果になるものであれば、法人に税金が課税されるようになりました。

このように、究極の相続税対策として有名なものは、いつか国から規制されてしまいます。

税法の抜け道は、だいたい後から規制や法改正で使えなくなるものです。

過度な節税対策には十分気を付けましょう。