相続だけで不動産所有を【個人or法人】に決めてはいけない

相続を考えると不動産は「個人と法人のどちらの所有」がいいのか?

不動産の所有
不動産の所有
個人にすべきか?法人にすべきか?

これは以下の3つの場合を考える必要があります。

  1. 不動産を保有している時
  2. 不動産を売却する時
  3. 不動産を相続する時

というのも、法人で不動産を所有した途端に相続が発生した!

こんなことは稀です。

よって、相続だけで考えてはいけません。

例えば法人で不動産を所有したら、確かに相続税は安くなった。

でも、相続が発生するまで法人税が高くなり、トータルでは個人で所有したままの方が税金が安かった。

あるいは、その逆の場合もあります。

そして、所有している途中で売却することなどもあり得ます。

特に今の時代は、不動産が「負動産」とも言われる時代です。

相続人にとっては、不動産が資産にならないことも考えられます。

不動産を個人と法人のどちらの所有にさせるか?

これは慎重に検討する必要があります。

不動産を所有している時

結論から言いますと、「税金面だけ」で考えれば、所得税が高い方(個人の所得が多い方)は、法人で所有した方が得になります。

簡単に言えば【法人税 < 所得税】の関係にあるからです。

法人税率や所得税率の詳しい内容は、以下の国税庁のホームページに記載されています。

個人の所得が900万を超える場合には、法人で所有したほうがお得と言えます。

所得税の速算表
所得税の速算表
赤枠に該当する方は、税金面だけ考えれば、法人所有がお得

不動産を売却する時

不動産の売却は、個人所有の場合には、

  1. 5年以内の売却であれば、所得税30.63%+住民税9%=39.63%
  2. 5年超の売却であれば、所得税15.315%+住民税5%=20.315%

となります。

この5年というのは、譲渡した年の1月1日において、5年を超えているかどうかです。

分かりづらいですが、不動産を購入してから6回目の正月を迎えれば、それ以降の売却は5年超となり、税金が約半分になります。

個人で所有していても、5年を基準に税金が大きく変わってきます。

一方、法人の場合は単純に法人税の対象になります。

5年以内・超などは関係ありません。

そう考えると、個人所有で5年超の売却の税負担20.315%にするのがベストと思えるかもしれません。

ただ、法人の場合は、不動産の売却益を上回る赤字であれば、そもそも税金が発生しません。(均等割などの細かい論点は除きます)

また、法人の場合には保険などを活用したタックスプランニングがしやすいという面もあります。

売却の予定はないから関係ない。

ただ、現時点では売却を考えていなくても、将来、考えが変わるかもしれません。

売却する場合のことも、シミュレーションしておきましょう。

不動産を相続する時

まず、不動産が個人所有か法人所有かで、相続する物自体が変わってきます。

個人の場合には、不動産(土地や建物)を現物として評価し、相続人は不動産を現物として相続します。

関連記事

相続税対策に大きく影響する土地の相続税評価方法を知ろう自宅や賃貸ビルなどの建物の相続税評価

何を言っているのだ!当たり前のことだろう?と思われるかもしません。

ただ、法人の場合はそうではありません。

法人の場合には、相続する対象は不動産ではなく、株式(未上場株式)となります。

被相続人が保有している株式(未上場株式)が相続の対象となります。

関連記事

取引相場のない株式評価方法

法人所有の不動産は、その株式の価格を決める要素の一つにすぎません。

相続税という観点から見た場合は、不動産を現物評価して相続するより、株式で評価した方が有利となります。

ただし、法人が賃貸不動産を取得してから3年以内に相続が発生した場合には、株価計算において不動産を時価評価します。

この場合には、株式で評価した方が有利とは言えない場合もあります。

動画で解説

相続を考えると不動産は個人と法人のどちらの所有がいいのか?について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

相続を考えると不動産は個人と法人のどちらの所有がいいのか?

動画内容

時々、相続のご相談に来られたお客様から「相続税のことを考えると、不動産は法人名義にした方がいいのか?」という、ご質問をいただくことがあります。

確かに、相続税は個人の財産にかかる税金ですから、法人名義にすれば、その不動産に相続税がかかることはありません。

ですが、相続のことだけを考えて、個人名義から法人名義に変えてしまうのは早計です。

不動産には、様々な税金がかかります。

法人名義にした途端に相続が発生した、なんてことは稀ですので、法人の所有にした後に発生する税金のことも、きちんと知っておかなければなりません。

まずは、不動産から発生する賃貸収入には、個人であれば所得税、法人であれば法人税がかかります。

法人税は会社の規模などによりますが、一般的には、住民税などの地方税も合わせると30%ほどです。

これに対し所得税は5%から45%までと、所得の高い部分ほど高い税率が適用されます。

さらに、これに10%の住民税もかかります。

一般的には個人の所得が年間で900万円を超える方は、法人で賃貸収入を受け取ったほうが節税になることが多いので、法人所有を検討する価値もあります。

それから相続人の中には「不動産を相続しても困る」という方もいらっしゃいます。

そのため、不動産を相続前に売却した場合の税金のことも知っておく必要があります。

不動産を売却すると、その売却益に対して、個人であれば所得税、法人であれば法人税がかかります。

ただし、個人の税率は、賃貸収入のものとは異なります。

個人の税率は、不動産を所有していた期間が5年を超えていれば約20%、5年以下なら倍の約40%です。

これには住民税も含まれています。

5年を超えるかどうかの判定は、不動産を売却した年の1月1日時点で判定をします。

わかりやすくいうと、不動産を購入してから、6回目のお正月を迎えていれば、税金が約40%から約20%になる、ということです。

最後に、相続税についても、実は落とし穴があります。

動画の冒頭で申し上げたように、法人名義にすれば不動産そのものに相続税はかからないのですが、法人名義の不動産が相続税の額に、まったく影響しないわけでもありません。

一体どういう意味かといいますと、不動産を所有する会社の株式が相続財産になるからです。

上場していない会社の株式であれば、その評価額は会社の利益や資産が影響します。

不動産の収益や資産価値も、少なからず相続財産に影響を与えるということです。

株式の評価方法にも複数の方法がありますので、不動産を個人として相続するのがよいか、株式として相続した方が有利なのかどうかは、ケースバイケースとなります。

不動産を法人の所有にするかどうかは、相続税以外の税金も含めて考え、シミュレーションをすることが大切です。