死亡退職金の現物支給は可能だが、相続税評価額には要注意

死亡退職金の現物支給について、解説しています。

死亡退職金の現物支給は可能

死亡退職金とは、本人(被相続人)の死亡後に、相続人が受け取った退職金のことをいいます。

本人が受け取らずに相続人が受け取る点が、普通の退職金と違います。
(詳しくは、死亡退職金と生前に受け取る退職金の違いは?に記載)

では、この死亡退職金。

普通は金銭での支払いがほとんどです。

ただ、まれに現物支給ということがあります。

えっ?現物支給?本人が亡くなっているのに、現物支給って可能なの?

結論からいいますと、死亡退職金の現物支給は可能です。

会社の資金繰りや会社の経営方針などから、死亡退職金を現物支給したいという会社も少なからずあります。

例えば、亡くなられた社長(被相続人)の肝いりであったカラオケ事業を、社長の交代とともに撤退したい。

ただ、亡くなられた社長(被相続人)の相続人は、その事業を続けたい。

その場合、会社所有のカラオケの建物を、株主総会の決議を受けて、取締役会で退職金として現物支給する。

このようなことも考えられます。

死亡退職金の現物支給
死亡退職金の現物支給
会社所有の土地や建物などを、死亡退職金として現物支給することは可能

では、この場合の相続税評価額(上記の例では、カラオケの建物の相続税評価額)はどうなるのでしょうか?

会社が退職金〇〇円として、計上した金額が相続税評価額になるのでしょうか?

結論から言いますと、会社が計上している退職金の金額と、相続税評価額は異なってきます。

死亡退職金の現物支給の相続税評価額

死亡退職金として、現物支給された土地や建物の相続税評価額は、相続開始時点(被相続人の死亡日)における、時価により評価した価額となります。

死亡退職金が現金であれば、その金額が退職手当金等に該当します。

ただ、現物支給の場合、その相続税評価額が退職手当金等に該当します。

なので、現物支給の場合の基本的な考えとして、

【会社として費用(損金)として計上している退職金の金額 = 相続税評価額】

ではありませんので注意が必要です。

動画で解説

死亡退職金を現物支給で受けたときの相続税について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

死亡退職金を現物支給?

動画内容

まず死亡退職金とは何か、簡単におさらいをしておきましょう。

死亡退職金とは、本人の死亡後に遺族に支払われる退職金のことです。

死亡退職金が支払われる主なケースは、会社員が在職中に亡くなられた場合です。

では、死亡退職金を支払う会社が死亡退職金を金銭ではなく、物で支給することも出来るのでしょうか?

結論からいいますと、死亡退職金を物で支給することは可能です。

もちろん、金銭での支払いがほとんどですが、会社の資金繰りや経営方針から、現物で支給したいという会社も少なからずあります。

遺族にとって納得できる物であれば、あとは株主総会の決議など形式的な手続きをクリアすることで、問題なく支給できます。

そうすれば、会社の資金を減少させずに、死亡退職金を支払うことができます。

では、どのようなケースに現物支給が使えるのでしょうか。

たとえば、社長が亡くなり、会社が新しい経営体制に移行するとき、社長の肝いりで始めたカラオケ事業を廃止しようと考えたとします。

このとき、もしこの事業を社長の遺族が引き継ぎたいと考えていれば、カラオケ事業用の資産を、遺族に死亡退職金として支給するという選択肢があります。

会社としては、資金を減らさずに不要な資産を退職金の代わりにできるというメリットもありますし、遺族からすれば、故人の思い入れのある事業を廃止しなくて済むというメリットがあります。

他にも社長一家が暮らしている社宅を現物支給するケースなどが考えられます。

ところで死亡退職金のうち、死後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産として相続税の対象になります。

そのため、現物支給された財産は、被相続人が亡くなった日の時価で評価して、相続税が計算されます。

そのため遺族は、相続税を納税するための資金の確保に注意が必要です。

ただし、死亡退職金には500万円×法定相続人の数まで非課税で受け取(れ)るルールがありますので、評価額からこれを差し引いた額が相続税の対象となります。

なお、会社が退職金として帳簿に計上する額は、相続税評価額とは別物になります。

相続税評価額は、あくまで相続税のルールで計算しなければなりません。