相続の情報が全て一覧図に載るわけではないが圧倒的に便利
いままでの相続に関する手続きでは、被相続人とその相続人を証明(もしくは確定)する必要がある場合に、被相続人の誕生から死亡までの全ての
- 戸籍謄本
- 原戸籍謄本
の取得や提出が手続きごとに必要でした。
そして、提出された側も戸籍を解読(読み方については戸籍の読み方を徹底解説!解読不能な場合は専門家に任せように記載)しなくてはいけないなど、双方にとって非常に負担のかかるものでした。
この負担を軽減するための制度が法定相続情報証明制度です。
法定相続情報証明制度は、簡単に言ってしまえば、法務局が法定相続情報一覧図の写しを発行して、それを戸籍謄本の束の代わりに代用できるという制度です。
被相続人の誕生から死亡までの全ての戸籍謄本と原戸籍謄本から読み取れる相続人の全員をあらかじめ一覧図にして作成し、それを法務局が内容を確認し、法務局が認証文を付した法定相続情報一覧図の写しを発行します。
そうすると、今まで金融機関ごと(あるいは保険会社ごと)に提出しなければいけなかった戸籍の束が不要で、この認証文を付した法定相続情報一覧図の写しを提出すれば済むようになります。
このように相続手続を簡単に行うことが出来るようになります。
(ただ、被相続人・相続人のいずれかが日本国籍を有せず、戸籍等を添付することができない場合は、利用することができません。)
この法定相続情報証明制度を利用は強制ではありません。あくまでも相続人の任意です。
なので、今まで通りに戸籍の束で、相続手続きをすることも可能です。
この制度を利用するためには、相続人自ら、戸籍等の内容を読み取り、法定相続情報一覧図を作成する必要があります。
また、その裏付けとなる戸籍等も必要です。法務局が代わりに作成してくれるわけではありません。
そして登記官(法務局の職員)が戸籍の内容を読み取り、一覧図にお墨付きを与えて(認証文を付し)、その写しを発行してくれます。
ちなみに一覧図の写しの交付は無料です。手続きも無料です。また、一覧図の原本は法務局が保管(5年間)してくれます。
この一覧図の写しの有効期限は、各金融機関(もしくは保険会社等)が必要に応じて定めます。一律に〇〇年まで有効である、というような規定はありません。
法定相続情報証明制度の一覧図の写しは万能ではない
一覧図の写しに記載される情報は、戸籍から読み取れる内容のみです。
なので、以下のような内容は記載されません。
- 遺言書の内容
- 遺言書の有無
- 相続放棄の有無
- 遺産分割の内容
- 遺産分割協議の有無
一覧図の写しはあくまでも戸籍に従って作成されます。
なので、相続に関する情報の全てが一覧図に載るわけではありません。
例えば、相続放棄の証明には相続放棄申述受理証明書、遺産分割の内容の証明であれば遺産分割協議書や遺言書が必要となってきます。
また、登記の申請には住民票などの書類も必要です。
一覧図の写しで各種相続手続きが全て済むという話しではないので注意しましょう。
また、法定相続情報証明制度は、平成29年5月29日から始まりました。
なのでしばらくの間は、金融機関や生命保険会社によっては、法定相続情報証明制度に対応していないことも考えられます。
そのような場合には、今まで通りに戸籍の束を提出する必要があります。
ただ逆に、制度は平成29年5月29日に始まりましたが、これより前に開始した相続でも制度の利用は可能です。
法定相続情報証明制度の一覧図に相続人が載らないこともある
例えば胎児は法定相続情報証明制度の一覧図に載ってきません。戸籍に反映されていないためです。
ただ、胎児は申告期限までに出生すれば相続人となります。
また、欠格事由に該当し(被相続人を殺害するなどして)、相続人でなくなった方でも、法定相続情報証明制度の一覧図に載っている場合もありえます。
このように実際の相続人と一覧図から確認できる相続人に食い違いが生じる可能性があります。
法定相続情報証明制度の一覧図の写しは万能ではありません。
あくまでも、戸籍情報に基づいて作成されたものであるということを忘れないようにしましょう。
動画で解説
法定相続情報証明制度について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。