立竹木は「森林や庭園」等の違いで評価方法が異なる
立竹木(りゅうちくぼく)とは、地面から生えている「木」と「竹」のことを意味します。
この立竹木も、相続財産となる場合があります。
今回は、立竹木が相続財産に該当する場合はどんな時か?
また、該当した場合の相続税評価方法について、解説しています。
立竹木が相続税評価の対象となる場合
立竹木は、必ずしも「相続税・贈与税の対象」になるとは限りません。
- 手入れをしていない
- 伐採をしていない(伐採予定もない)
- 伐採をしても供給する市場がない
このような場合には、財産価値がありませんので、相続税や贈与税の対象に、そもそもなりません。
(あくまでも立竹木を評価しないだけで、その敷地は山林等として評価します。)
立竹木が相続税評価の対象になるのは「立木を伐採し収益を得る者が管理している」場合です。
具体的には、
- 手入れ・伐採をしている
- 市場に供給している
- 山林所得の対象になる
といったことです。
森林の立木の評価方法
森林の立木の標準価額は、「樹種」と「樹齢」により異なります。
主要な樹種(例えば、杉やひのき)については、その立木の存する地域を所轄する国税局長が、各都道府県単位で、主要樹種及び樹齢に応じて「1ha当たりの標準価額」を公表しています。
以下は、国税庁HPの主要樹種の森林の立木の標準価額表等
にて、公表されているものの一部抜粋です。
樹種 | 標準価額 |
---|---|
杉 | 49千円 |
ひのき | 60千円 |
国税局名 | 都道府県名 | 林業地帯名 | 標準価額(単位千円) | |
---|---|---|---|---|
杉 | ひのき | |||
仙台 | 宮城 | 宮城北部 | 610 | ー |
福島 | 磐城 | ー | 510 | |
関東信越 | 栃木 | 渡良瀬川 | 710 | 990 |
東京 | 東京 | 多摩 | 370 | 990 |
金沢 | 福井 | 越前 | 550 | ー |
名古屋 | 静岡 | 天竜 | 510 | 1,030 |
大阪 | 奈良 | 吉野 | 460 | 820 |
広島 | 島根 | 斐伊川 | 470 | 770 |
高松 | 愛媛 | 今治松山 | 480 | 820 |
福岡 | 福岡 | 筑後・矢部川 | 420 | 860 |
熊本 | 熊本 | 球磨川 | 490 | 1,130 |
そして、森林の立木の評価方法は、「1ha当たりの標準価額」に「評価対象の立木の面積」を乗じ、その立木におかれた環境によって、以下の評価要素を加味します(乗じます)。
- 地味級
- 立木度
- 地利級
よって、森林の主要な樹種の相続税評価方法の計算式は、
(1ha当たりの標準価額) × (地味級) × (立木度) × (地利級) × (面積)
となります。
ちなみに「森林の主要な樹種以外」の立木の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。
地味級とは
地味級とは、評価対象の立木の「地味の肥せき度」によって、
- 上級(1.3)
- 中級(1.0)
- 下級(0.6)
を定めています。
同一樹種の立木の生産量は、
- 方位
- 気象
- 地質の適否
- 地味の肥せき
等により決まります。
同一樹種・同一地積であれば、同一の評価額になるわけではありません。
そこで、樹種別、樹齢区分別に1ha当たりの「立木材積」によって、以下の比重(地味級判定表)を設けて、評価に反映させます。
樹齢(年) | 地味級 | ||
---|---|---|---|
上級 (㎥超) | 中級 (㎥以下~㎥以上) | 下級 (㎥未満) | |
15(14~17) | 0.07 | 0.07~0.05 | 0.05 |
20(18~22) | 0.13 | 0.13~0.09 | 0.09 |
25(23~27) | 0.20 | 0.20~0.14 | 0.14 |
30(28~32) | 0.27 | 0.27~0.19 | 0.19 |
35(33~37) | 0.34 | 0.34~0.24 | 0.24 |
40(38~42) | 0.41 | 0.41~0.29 | 0.29 |
45(43~47) | 0.48 | 0.48~0.34 | 0.34 |
50(48~52) | 0.54 | 0.54~0.38 | 0.38 |
55(53~57) | 0.60 | 0.60~0.42 | 0.42 |
60(58~62) | 0.65 | 0.65~0.46 | 0.46 |
65(63~67) | 0.70 | 0.70~0.49 | 0.49 |
70(68~70) | 0.74 | 0.74~0.52 | 0.52 |
地味級の割合 | 1.3 | 1.0 | 0.6 |
樹齢(年) | 地味級 | ||
---|---|---|---|
上級 (㎥超) | 中級 (㎥以下~㎥以上) | 下級 (㎥未満) | |
15(14~17) | 0.05 | 0.05~0.03 | 0.03 |
20(18~22) | 0.10 | 0.10~0.07 | 0.07 |
25(23~27) | 0.16 | 0.16~0.11 | 0.11 |
30(28~32) | 0.22 | 0.22~0.15 | 0.15 |
35(33~37) | 0.27 | 0.27~0.19 | 0.19 |
40(38~42) | 0.32 | 0.32~0.22 | 0.22 |
45(43~47) | 0.37 | 0.37~0.26 | 0.26 |
50(48~52) | 0.41 | 0.41~0.29 | 0.29 |
55(53~57) | 0.45 | 0.45~0.31 | 0.31 |
60(58~62) | 0.48 | 0.48~0.33 | 0.33 |
65(63~67) | 0.51 | 0.51~0.36 | 0.36 |
70(68~70) | 0.54 | 0.54~0.38 | 0.38 |
地味級の割合 | 1.3 | 1.0 | 0.6 |
立木度とは
評価対象の立木の密集度で、
- 密(1.0)
- 中庸(0.8)
- 疎(0.6)
と定められています。
具体的には、以下の基準で概ね判断します。
密(1.0)
植林した山林
中庸(0.8)
自然林
疎(0.6)
岩石・がけ崩れ等による不利用地が散在し、かつ、それらを地積から除外できない場合には、植林した山林は「中庸」、自然林は「疎」
地利級とは
地利級は、立木の「搬出の便否度」によって、1級(1.2)~12級(0.1)まで、定められています。
搬出の便否度は「伐木、造材、搬出経費等」を基準に評価し、それらは、おおむね距離に相関することになるため、距離の指標を「小出し距離」と「小運搬距離」に分け、共に近距離であれば高位に、共に遠距離であれば低位になるように判定表が定められています。
小出し距離とは、立木を伐倒し、ケーブルを架設して搬出することを想定した場合における、ケーブルの起点から終点までの距離を指します。
小運搬距離とは、ケーブルの終点から、最寄りの原木市場、又は製材工場等までの距離を指します。
総合等級
総合等級とは、上述で解説しました【地味級・立木度・地利級】を連乗した数値となります。
これは評価通達において公表されており、山林の評価明細書上は、この総合等級を用います。
立木材積が明らかな森林の評価方法
樹齢15年以上の森林の立木で、立木材積が明らかなものについては、1ha当たりの立木材積を所定の【標準立木材積表のうち該当する標準立木材積】で除して得た数値で「地味級 × 立木度」の割合と出来ます。
本来であれば、
「(1ha当たりの標準価額) × (地味級) × (立木度) × (地利級) × (面積)」の計算式が、
「(1ha当たりの標準価額) × (その森林の1ha当たりの立木材積 ÷ 1ha当たりの標準立木材積) × (地利級) × (面積)」
に変わる、ということです。
また、計算式が異なることから、立木材積が明らかな森林の場合には、総合等級を使うことも出来ません。
なお、標準立木材積表は、国税庁の標準立木材積表PDFファイル
で確認することが出来ます。
その他(森林の立木以外)の立竹木の評価方法
「森林の立木以外」の立竹木の評価は、主に以下の5つの場合があり、それぞれ評価方法が異なります。
- 「森林と庭園」以外の立木
- 庭園にある「立竹木」
- 庭園以外の「立竹」
- 保安林等
- 製材業者等が所有する立木
「森林と庭園」以外の立木の評価方法
「森林と庭園」以外にある立木は、1本単位で相続税評価額をします。
そして、評価方法は「売買実例価額」や「精通者意見価格」等を参酌して評価します。
庭園にある「立竹木」の評価方法
庭園にある立竹木は、「立竹木単体」で評価するのではなく、庭園設備として評価をします。
ただ、一般的な庭園の場合には、そもそも庭園設備を遺産として評価しません。
(詳しくは、建築中の家屋や修理代金、門や堀や庭園設備の相続税評価に記載)
評価する場合には、その財産を「現況と同じように取得する場合の価額」の70%で評価します。
庭園以外の「立竹」の評価方法
1本単位ではなく、「一団の土地にある立竹」が評価単位になります。
そして、評価方法は「売買実例価額」や「精通者意見価格」等を参酌して評価します。
保安林等の評価方法
伐採制限を受けている山林の立木の評価方法は、制限がないものとして評価した立木の価額から、「保安林等の立木の控除割合」を控除した金額となります。
よって、計算式は以下のようになります。
「制限がないものとして評価した立木の評価額 × (1 - 保安林等の立木の控除割合)」
保安林等の立木の控除割合は、保安林の控除割合に記載しています。
製材業者等が所有する立木の評価方法
製材業者等が所有する「たな卸資産としての立木」については、たな卸資産の評価方式で評価します。