森林が保安林に指定されると評価減可能
山林の利用や立木の伐採で、制限を受ける場合があります。
いわゆる、所有する森林が【保安林に指定】されるということです。
今回は、森林が保安林に指定されている場合の相続税評価方法について、解説しています。
保安林とは
保安林とは
- 水源の涵養
- 生活環境の保全・形成
- 土砂の崩壊その他の災害の防備
等の、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林のことです。
保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。
保安林の種類とその指定目的
保安林の種類は全部で17種類あり、それぞれに目的があります。
水源かん養保安林
流域保全上重要な地域にある森林の河川への流量調節機能を安定化し、その他の森林の機能とともに、洪水、渇水を緩和したり、各種用水を確保すること等が目的
土砂流出防備保安林
下流に重要な保全対象がある地域で、土砂流出の著しい地域や崩壊、流出のおそれがある区域において、林木及び地表植生その他の地被物の直接間接の作用によって、林地の表面侵食及び崩壊による土砂の流出を防止することが目的
土砂崩壊防備保安林
崩落土砂による被害を受けやすい道路、鉄道その他の公共施設等の上方斜面等において、主として林木の根系の緊縛その他の物理的作用によって林地の崩壊の発生を防止することが目的
飛砂防備保安林
海岸の砂地を森林で被覆することにより飛砂の発生を防止し、飛砂が海岸から内陸に進入するのを遮断防止することにより、内陸部における土地の高度利用、住民の生活環境の保護等が目的
防風保安林
林冠をもって障壁を形成して風に抵抗してそのエネルギーを減殺・撹乱することにより風速を緩和して風害を防止することが目的
水害防備保安林
河川の洪水時における氾濫にあたって、主として樹幹による水制作用及びろ過作用並びに樹根による侵食防止作用によって、水害の防止・軽減をはかるのが目的
潮害防備保安林
津波又は高潮に際して、主として林木の樹幹によって波のエネルギーを減殺するほか、空気中の海水塩分を捕捉して塩害を防止することが目的
干害防備保安林
洪水、渇水を緩和し、又は各種用水を確保する森林の水源涵養機能により、局所的な用水源を保護するのが目的
防雪保安林
飛砂防備保安林や防風保安林と同様の機能によって、吹雪を防止するのが目的
防霧保安林
森林によって空気の乱流を発生させて霧の移動を阻止したり、霧粒を捕捉したりすることで霧の害を防止するのが目的
なだれ防止保安林
森林によって雪庇の発生や雪が滑り出すのを防いだり、雪の滑りの勢いを弱めたり、方向を変えたりすること等により雪崩を防止するのが目的
落石防止保安林
林木の根系によって岩石を緊結固定して崩壊、転落を防止したり、転落する石塊を山腹で阻止したりすることで、落石による危険を防止するのが目的
防火保安林
耐火樹又は防火樹からなる防火樹帯により火炎に対して障壁を作り、火災の延焼を防止するのが目的
魚つき保安林
水面に対する森林の陰影の投影、魚類等に対する養分の供給、水質汚濁の防止等の作用により魚類の生息と繁殖を助けるのが目的
航行目標保安林
海岸又は湖岸の付近にある森林で地理的目標に好適なものを、主として付近を航行する漁船等の目標とすることで、航行の安全をはかるのが目的
保健保安林
森林の持つレクリエーション等の保健、休養の場としての機能や、局所的な気象条件の緩和機能、じん埃、ばい煙等のろ過機能を発揮することにより、公衆の保健、衛生に貢献するのが目的
風致保安林
名所や旧跡等の趣のある景色が森林によって価値づけられている場合に、これを保存するのが目的
保安林の相続税評価方法
保安林に指定されると、山林の所有者にとっては、伐採制限を受けることになります。
その分、所有者にとっては、山林の使い勝手が悪くなることを意味します。
なので、その分財産価値が減少することを意味し、相続税評価額を減額できます。
保安林の相続税評価方法、いわゆる【伐採制限のある山林の相続税評価方法】は、制限のない山林として評価した価額から、所定の割合を控除して求めます。
なので、評価額の計算式としては、
伐採制限がないとして評価した山林の評価額 × (1 - 所定の控除割合)
となります。
保安林の控除割合
控除割合は以下のようになります。
区分 | 制限内容 | 控除割合 |
---|---|---|
一部皆伐 | 一定面積の伐採は可能 | 0.3 |
択伐 | 標準伐期齢以上の森林で、一定の伐採が可能 | 0.5 |
単木選伐 | 指定された特定の木の伐採は可能 | 0.7 |
禁伐 | 伐採禁止 | 0.8 |
そして、主な保安林の種類と区分(控除割合)の関係は以下のようになります。
ただし、ここでご紹介する関係は、原則です。
個別の事情により、必ずしも当てはまるとは限りませんので、実際に評価をする際には、必ず専門家に確認をしましょう。
保安林の種類 | 控除割合(区分)_原則 |
---|---|
水源かん養保安林 | 一部皆伐(0.3) |
土砂流出防備保安林 | 択伐(0.5) |
土砂崩壊防備保安林 | 択伐(0.5) |
飛砂防備保安林 | 択伐(0.5) |
防風保安林 | 一部皆伐(0.3) |
水害防備保安林 | 択伐(0.5) |
潮害防備保安林 | 択伐(0.5) |
干害防備保安林 | 一部皆伐(0.3) |
防雪保安林 | 択伐(0.5) |
防霧保安林 | 一部皆伐(0.3) |
なだれ防止保安林 | 禁伐(0.8) |
落石防止保安林 | 禁伐(0.8) |
防火保安林 | 禁伐(0.8) |
魚つき保安林 | 択伐(0.5) |
航行目標保安林 | 択伐(0.5) |
保健保安林 | 択伐(0.5) |
風致保安林 | 択伐(0.5) |