
取引相場のない株式の評価において、会社規模の判定は非常に重要です。その際、基準となる「従業員数」の正しい数え方をご存じでしょうか。正社員だからといって、無条件に1人としてカウントされるわけではありません。出向社員や派遣社員、あるいは役員の扱いについても、税務上の厳格なルールが存在します。実は、派遣先の会社であっても、派遣社員を自社の従業員としてカウントできるケースがあります。本記事では、会社規模判定における「従業員」の正しい数え方と、実務で間違えやすい注意点をわかりやすく解説します。パートタイマーの計算方法や、同族会社特有の役員の取り扱いについても併せて確認していきましょう。
会社規模の判定に使う従業員数のカウントには、決められた計算式を用います。

ここで注意すべきなのは、従業員の働き方や雇用期間によって、カウントの対象になるかどうかが変わるという点です。
例えば、週2~3日勤務の正社員などは要注意です。
入社して半年未満の中途入社社員も同様です。
出向中の社員や、派遣会社から来ている派遣社員についても慎重な判断が求められます。
結論から言うと、正社員という肩書きだけで無条件に「継続勤務従業員」として扱われるわけではありません。
雇用契約の実態や、実際の勤務状況から総合的に判断する必要があります。
継続勤務従業員として「1人」とカウントするためには、厳格な条件をクリアする必要があります。
具体的には、就業規則などで定められた「1週間当たりの労働時間が30時間以上」であることが求められます。
つまり、正社員かどうかという雇用形態ではなく、契約上の労働時間で判断されるということです。
もし週2日勤務の正社員を単純に1名としてカウントしてしまうと、フルタイムの正社員ばかりの会社と規模が同じに判定されてしまいます。
これでは会社の本来の規模を正しく反映できないため、労働時間数による客観的な判定基準が設けられています。
なお、従業員数の判定には、直前期末以前1年間の状況を用います。
これは、取引金額や総資産額の判定時期とタイミングを合わせるためです。
では、週の所定労働時間が30時間未満のパートやアルバイト、時短勤務の社員は人数から除外してよいのでしょうか。
答えは、絶対に除外してはいけません。
また、フルタイムの正社員であっても、直前期末以前1年間ずっと継続して勤務していない場合は、無条件に1人として数えることはできません。
期中に入社したばかりの社員などがこれに該当します。
これらの社員は「継続勤務従業員以外の従業員」として、別の計算式で人数にカウントします。
具体的には、直前期末以前1年間における実際の労働時間の合計を、1,800時間で割って人数を算出します。
ここで注意したいのが、計算結果に小数点以下の端数が出た場合の処理です。
税務上のルールでは、四捨五入などの端数処理は行わず、小数点以下の端数をそのまま生かして他の従業員数と合計します。
例えば、合計した結果が35.1人となった場合、35人以下の判定基準を超えてしまいます。
わずか0.1の端数が会社規模の判定を左右することもあるため、計算漏れには十分ご注意ください。
出向とは、元の会社との雇用関係を保ちながら、関連会社などで継続的に勤務することを指します。
この場合、従業員数をどちらの会社でカウントするかがよく問題になります。
株価評価における出向社員の扱いは、誰とメインの雇用契約を結んでいるかが基準になります。
したがって、元の会社に籍を残したまま出向する「在籍出向」の場合、原則として出向元の従業員としてカウントします。
しかし、ここで実務上非常に重要な例外があります。
出向先の会社で「出向受入規程」などを定めており、実態として出向先の従業員と同じように勤務している場合です。
このようなケースでは、出向先の従業員としてカウントすることが認められています。
従業員数を増やして会社規模を大きく判定できれば、自社株の評価額を引き下げる効果が期待できます。
そのため、受け入れた出向社員を自社の人数に含められるかどうかは、慎重に実態を確認してください。
一方で、元の会社を退職して出向先と新たに雇用契約を結ぶ「転籍出向」などの場合は、当然に出向先の従業員としてカウントします。
契約の形や勤務実態によってカウント先が変わるため、二重にカウントしたり、漏れたりしないようご注意ください。
派遣社員は、派遣元の会社と雇用契約を結び、派遣先の会社に赴いて業務を行います。
ここでよく疑問になるのが、派遣先の会社で派遣社員を従業員としてカウントしてよいのかという点です。
結論から言うと、派遣先の会社であっても、受け入れた派遣社員を従業員数に含めてカウントすることが認められています。
株価評価における会社規模の判定では、誰と雇用契約を結んでいるかよりも、勤務実態が重視されるからです。
国税庁の質疑応答事例でも、派遣先の勤務実態に即して従業員数に含めて差し支えないと明記されています。
ただし、カウントする際は他の従業員と同じように労働時間で判定する必要があります。
派遣先の会社で常時フルタイムで働き、かつ1年以上継続して勤務していれば、継続勤務従業員としてカウントします。
一方で、週の労働時間が30時間未満であったり、派遣されてから1年未満であったりする場合は計算が必要です。
実際の労働時間の合計を1,800時間で割って計算を行います。
この際も、先ほどと同じように端数はそのまま生かして計算を行います。
従業員数が増えれば会社規模を大きく判定できる可能性が高まります。
結果として株価評価を引き下げやすくなるため、漏れなくカウントすることが重要です。
最後に、中小企業の株式評価において間違いやすいポイントをお伝えします。
それは、役員をどのように従業員数に含めるかという点です。
大前提として、取締役などの役員は会社と雇用契約を結んでいる従業員ではないため、原則として人数には含めません。
社長や副社長、専務、常務、代表取締役、監査役といった役員は、無条件で従業員数のカウントから外れます。
しかし、役職のついていない「平取締役」については、例外的に従業員数としてカウントできるケースがあります。
それが、実態として従業員としての職務も行い、従業員としての給与も受け取っている「使用人兼務役員」に該当する場合です。
平取締役であれば無条件でカウントできるわけではありません。
あくまで「使用人兼務役員」として働いている場合に限り、税務上も従業員と同じ実態があるとみなされてカウントが許されます。
従業員数が増えれば会社規模が大きく判定されやすくなるため、使用人兼務役員のカウント漏れには十分注意してください。
ただし、家族経営などの同族会社の場合は非常に危険な落とし穴があります。
社長の親族などで一定以上の株式を持っている役員は、税務上「使用人兼務役員」になることができません。
いくら平取締役として従業員と同じように働いて給与をもらっていても、特定の基準を満たす同族株主等であれば従業員数に含めることは絶対にできません。
誤って社長の親族である役員を従業員数に含めてしまうと、会社規模を不当に大きく判定したとして税務署から否認される恐れがあります。
会社規模の判定を誤ると、自社株の評価額や発生する相続税額が大きく変わってしまいます。
役員のカウントには十分にご注意ください。