純資産価額方式の自社株評価額は一般的に高くなりやすい
純資産価額方式での自社株の評価方法について、解説しています。
貸借対照表の資産と負債で株価を算出
純資産価額方式は、会社の貸借対照表を基に資産と負債を時価評価し、資産から負債を差し引いた純資産額を発行済株式数で除して求めます。
純資産価額方式の計算式は以下の通りとなります。
「純資産(*1) - 含み益に対する法人税等(*2)」 ÷ 発行済株式数
(*1)純資産=資産(時価) - 負債(時価)
(*2)含み益に対する法人税等=「純資産(時価) - 純資産(帳簿価額)」× 37%
注意点としては、ここでいう時価は相続税評価額です。
資産と負債の詳細
純資産価額の計算上、
- 土地
- 建物
- 有価証券
は時価で評価します。
また、
- 貸倒引当金
- 退職給与引当金
- 納税引当金
- その他の引当金
などの負債は計算に含めません。
ただ、課税時期において未払いの
- 法人税
- 消費税
- 事業税
- 道府県民税額
- 市町村民税
のうち、その事業年度開始の日から、課税時期までの期間に対応する金額は、負債に含めます。
また、被相続人の死亡に伴い、相続人やその他の者に支給することが確定した退職手当金・功労金・その他これらに準ずる給与の金額も負債に含みます。
具体例
- 土地:2億円(時価3億円)
- 現預金:2億円
- 借金:1億円
- 発行済株式数:1万株
純資産:4億円
3億円(土地)+2億円(現預金)-1億円(借金)
含み益に対する法人税等:3千7百万円
(純資産時価4億円-純資産帳簿価額3億円(*3))× 37%
(*3)2億円(土地)+2億円(現預金)-1億円(借金)
株価(1株):36,300円
(純資産:4億円-含み益に対する法人税等:3千7百万円) ÷ 1万株
開業3年未満の会社は純資産価額方式で評価
開業3年未満の会社や、主たる業種を変更してから間もない会社の場合、類似業種比準価額での測定が困難なため、純資産価額方式で計算するのが一般的です。
そして、純資産価額方式は類似業種比準価額よりも【株式評価額が高くなる傾向】があります。
(もちろん借入金などの負債が多い場合には、逆になる場合もあります。)
株式評価額が高くなるということは、その分相続税も上がるということになります。
純資産価額方式での評価額が高くなりやすい会社
純資産価額方式は名前の通り、会社の資産に影響します。
逆に類似業種比準価額方式は、その時々の利益に影響します。
なので、純資産価額方式で評価額が高くなりやすい会社は、社歴が長く安定した経営をしている会社です。