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相続人全員が責任を負う「契約不適合責任」とは

亡くなった方の子供である兄弟3人で、公平に遺産を分けたケースを想像してみてください。

長男は評価額1,200万円の実家を相続し、次男と三男はそれぞれ1,200万円の現金を相続しました。

無事に相続税の申告も終わって安心していた矢先、長男が引き継いだ実家に深刻なシロアリ被害が見つかりました。

その修理費用として、なんと600万円もかかることが判明したのです。

この場合、実家を相続した長男だけが600万円の全額を負担しなければならないのでしょうか。

結論から言うと、長男は次男と三男に対して、それぞれ200万円ずつ修理費用の負担を求めることができます。

民法では、共同相続人は他の相続人に対して、それぞれの相続分に応じて担保の責任を負うと定められているからです。

つまり、遺産分割後に見つかった財産の欠陥については、相続人全員で公平に責任を分かち合うのが大原則となります。

ただし、遺産分割が終わった後に新しく発生した雨漏りやシロアリ被害については、建物を引き継いだ人の自己責任です。

また、このルールには注意すべき厳格な期限が設けられています。

シロアリや雨漏りといった建物の品質に関する欠陥については、欠陥があることを知った時から1年以内に、他の相続人へその事実を通知しなければなりません。

1年以内に通知さえしておけば、実際の費用請求はその後でも可能ですが、期限を過ぎると一切請求できなくなってしまいます。

なお、通知後もいつまでも請求できるわけではなく、原則として欠陥を知ってから5年、または遺産分割から10年で時効にかかる点には注意が必要です。

ちなみに、土地の面積が登記簿より少なかった(縄縮み)といったケースでも責任は問えますが、この「1年以内」という通知ルールの対象にはなりません。

(縄縮みについては、実際の土地の面積が登記簿と違う縄伸び・縄縮みの相続税評価方法に記載しています。)

兄弟間で負担し合う前に確認すべきこと

兄弟間で修理費を負担し合う前に、まずは家を建てたハウスメーカーや、購入した際の売主に責任を問えないか確認しましょう。

もし、亡くなった方が新築の引き渡しを受けてから10年以内の家であれば、法律(品確法)により、雨漏りや構造上の重要な部分の欠陥について業者が責任を負うことになっています。

シロアリ被害については、新築時の施工不良が原因で、柱や土台といった建物の構造上重要な部分にまで被害が及んでいる場合に限り、この法律の対象となります。

一般的な防蟻(シロアリ対策)保証は5年程度で設定されていることも多いため、保証書の内容をよく確認することが大切です。

また、中古物件であっても、売主が不動産会社(宅建業者)であれば、引き渡しから最低2年間は契約不適合責任を追及できる可能性があります。

一方で、売主が個人の一般人だった場合は、契約書で「契約不適合責任は免責とする」といった特約が結ばれていることが大半ですので注意が必要です。

業者に修理費用を負担してもらえれば、相続人同士で金銭的な負担を押し付け合う必要がなくなります。

遺言書で責任を免除し、相続トラブルを防ぐ

相続の手続きが終わった後に、兄弟間で修理代の請求をするのは気が引けるという方も多いでしょう。

後になって「お金を払ってほしい」と言われれば、せっかくの円満な兄弟関係にヒビが入るおそれもあります。

このような事態を防ぐために非常に有効なのが、生前に作成しておく遺言書です。

被相続人(亡くなった方)は、遺言書の中で「契約不適合責任(担保責任)を負わない」という特別な定めをしておくことができます。

例えば、「取得した財産に欠陥があった場合、その修理費は財産を取得した長男の負担とし、次男と三男には一切負担させない」と遺言書に明記しておくのです。

こうすることで、長男は次男や三男に対して修理費を請求できなくなり、後々の金銭トラブルを未然に防ぐことができます。

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共同相続人間の担保責任の減免などをする遺言書の文例と注意点

ただし、この方法を使う際には「遺留分」に十分注意しなければなりません。

(遺留分についての詳しい内容は、遺留分とは?その計算方法や割合、兄弟との関係はにて記載しています。)

今回の例(実家1,200万円、現金2,400万円の合計3,600万円)では、兄弟3人の遺留分はそれぞれ最低限保障された「600万円(全体の6分の1)」となります。

もし実家の修理費が1,000万円など非常に高額だった場合、実家の実質的な価値は200万円にまで下がってしまいます。

その結果、長男の実際の取得額(200万円)が自身の遺留分(600万円)を下回ってしまいます。

こうなると、不足分を補うために、長男から次男や三男に対して金銭を請求できる状態(遺留分侵害額請求)になってしまうのです。

(※厳密には実家の評価が下がると財産総額も減るため、遺留分の基準額も約433万円へと変動しますが、ここではわかりやすく解説しています。)

遺言書で責任を免除してトラブルを防いだつもりでも、結果として長男から別の形でお金の請求がいくことになれば、本末転倒です。

欠陥が見つかったら相続税が還付される可能性も

相続した実家に重大な欠陥が見つかった場合、もう一つ重要なポイントがあります。

それは、すでに納めた相続税の一部が戻ってくる(還付される)可能性があるという点です。

相続税は、亡くなった当時の財産の価値(評価額)をもとにして計算されます。

後になって深刻なシロアリ被害や雨漏りが見つかったということは、亡くなった当時の家の価値が想定よりも低かったことを意味します。

この場合、税務署に対して「更正の請求」という手続きを行うことで、払い過ぎた相続税を取り戻せるケースがあります。

ただし、建物の相続税評価は原則として「固定資産税評価額」を基準にするため、単に欠陥が見つかっただけで自動的に評価が下がるわけではありません。

税務署に評価減を認めてもらうためには、「本来の評価額から合理的な修理費用を控除する」などの専門的な根拠を示す必要があります。

ここで実務上の大きな壁となるのが、税務署からの「その欠陥は本当に亡くなる前からあったのか」という厳しいチェックです。

そのため、シロアリ駆除業者や建築士に修理や調査を依頼する際、「これは数年前(亡くなる前)から進行していた被害である」という一筆や報告書をもらっておくのがコツです。

客観的な証明書類があれば、税務署での還付手続きが格段にスムーズになります。

さらに、更正の請求には原則として「法定申告期限から5年以内(亡くなってから実質5年10か月以内)」という期限があり、手続き自体にも非常に専門的な知識が求められます。

遺産分割後に実家の欠陥が見つかった場合は、修理の手配と同時に、早めに相続に強い税理士へ相談することをおすすめします。

相続対策は、単なる節税だけでなく、遺産分割後の生活や親族関係まで見据えて行うことが大切です。

被相続人も相続人も後悔しないために、専門家も交えながら、円満な相続に向けた準備を進めていきましょう。

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