原則は相続分に応じて、相続人間で担保責任を負う

不動産の買い主は売り主に対して、その売買契約を解除したり、損害賠償の請求を行ったりすることができます。

このように不動産に隠れた欠陥が見つかった場合、売り主が買い主に対して責任を負うことを「瑕疵担保責任」といいます。

では相続した不動産に隠れた欠陥が見つかった場合、その修理代は誰が負担するのでしょうか?

今回は、相続した財産に欠陥があった場合について、解説しています。

相続人には暇疵担保責任があり

兄弟3名で公平に遺産を相続し、無事相続税の申告も終了した。

でも、長男が相続した実家がシロアリに食われているなどの欠陥住宅だったとことが判明。

欠陥住宅
欠陥住宅
相続後にシロアリに食われているなどの欠陥住宅だと判明

以下のように平等に相続したハズだったが、長男が相続した欠陥住宅の修理費用に600万円もかかることに・・

  • 長男:実家(1,200万円の評価額)
  • 次男:現預金1,200万円
  • 三男:現預金1,200万円

この600万円は長男だけが支払う必要があるのでしょうか?

実は、長男・次男・三男がそれぞれ200万ずつ負担するようにと、長男が次男と三男に200万円ずつ損害賠償を請求できます。

これは民法で共同相続人間の担保責任というものが、以下のように定められているからです。

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う

なので、実際に相続してから気づいた隠れた瑕疵については、相続人間で担保します。

例えば、実際に相続した土地の面積が縄縮みなどで、実際より少なかった場合にも、その土地を相続した相続人は、他の相続人に損害賠償を請求できます。(縄縮みについては、実際の土地の面積が登記簿と違う縄伸び・縄縮みの相続税評価方法に記載しています。)

注意点として、この損害賠償請求は隠れた瑕疵を知った時から1年以内にしか出来ません。

暇疵担保責任を減免する方法

相続が終わったのに、後から相続人間で損害賠償を請求されるなんて・・。

もしくは、相続人間で揉めてもらいたくない。

このような場合には、被相続人が遺言で遺産に関する担保責任について別段の定めをして、適用させないことが可能です。

例えば、長男・次男・三男に上記と同じように相続させる遺言書で、取得した財産に瑕疵がある場合は長男の負担とし、次男と三男には負担させないと記載します。

こうすれば、長男は欠陥住宅の修理費用600万円を次男や三男に請求(それぞれに200万円ずつ請求)し、負担させることは出来なくなります。

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共同相続人間の担保責任の減免などをする遺言書の文例と注意点

ただし、遺留分に注意する必要があります。(遺留分についての詳しい内容は、遺留分にて記載しています。)

この場合の長男・次男・三男の遺留分はそれぞれ600万円となります。

この例の場合では、実際の相続分は以下のようになり、長男の遺留分は侵害していません。

  • 長男:実家600万(1,200万ー修理費600万)
  • 次男:現預金1,200万円
  • 三男:現預金1,200万円

暇疵担保責任を遺言で免除していても、遺留分を侵害している場合には、問題になる可能性があります。(例えば修理費が1,000万円だった場合など)

このように相続は、節税対策や遺産相続後のことまで考える必要があります。

被相続人や相続人が後悔しないためには、しっかりと事前に、

  • 節税対策を中心とした相続税対策
  • 円満に相続することを中心とした相続税対策

などをしていく必要があります。

相続税対策や相続税申告なら、相続専門部門を有し、48年以上の歴史ある東京新宿神楽坂の都心綜合会計事務所にお任せください。

相続財産に欠陥がある場合を動画で解説

相続した財産に欠陥があったら?について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

相続した財産に欠陥があったら?

動画内容

まず、本日のテーマを理解するために必要な、瑕疵担保責任について、ご説明いたします。

住宅を購入した時に、購入した物件に隠れた欠陥が見つかったら、困ってしまいますよね。

この場合、不動産の買い主は売り主に対して、その売買契約を解除したり、損害賠償の請求を行ったりすることができます。

このように不動産に隠れた欠陥が見つかった場合、売り主が買い主に対して責任を負うことを「瑕疵担保責任」といいます。

では、相続した不動産に隠れた欠陥が見つかった場合は、どうなるのでしょうか?

支払った修理代金の金額分、相続人が損をしてしまうのは不公平です。

この場合、民法では、他の相続人が売り主と同じように、担保の責任を負うこととされています。

たとえば、子ども3人が相続するケースで、長男が1,200万円の実家を相続し、次男、三男がそれぞれ同額の1,200万円ずつの現金を、均等に相続したとします。

この時に、長男が相続した実家が、実はシロアリの被害にあっていることがわかり、その修理費用が600万円かかるとします。

この修理費用の600万円を長男だけが負担すると、不公平な相続となってしまいます。

ですので、この600万円は、長男、次男、三男の3人が、それぞれ200万円ずつ負担するように、長男から次男、三男に損害賠償請求をすることができます。

ただし、この請求ができるのは、シロアリの被害に気がついてから、1年以内となります。

それを過ぎると、損害賠償の請求はできません。

親族間で損害賠償請求をするなんて、何だか嫌だという方も、いらっしゃるでしょう。

そのような時は、亡くなった方の遺言で、このような損害賠償をしないように、決めることもできます。

ただし、相続人が子や親には遺留分といって、相続財産を一定分まで請求できる権利があります。

もし隠れた欠陥による損害が大きく、遺留分を侵害するような修理費用がかかる場合には、注意が必要です。

本日は、相続人同士にも瑕疵担保責任がある、ということを覚えて頂ければ、結構でございます。

相続に関するお悩みがございましたならば、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せ下さい。