認知症や知的障がいの方が相続放棄をする場合は成年後見を利用
相続放棄は本来、相続人自らの意思で行うものです。
ただ、その相続人が認知症や知的障がいの方の場合、うまく意思が伝わらないことがあります。
また、重度の認知症や知的障がいの方の場合、相続の内容を理解し、自らの判断において相続放棄することは、現実的に不可能な場合がほとんどです。
そこで認知症や知的障がいの方が相続放棄をする場合には、成年後見制度を利用します。
成年後見制度の詳しい内容は「成年後見制度とは保護者を付けるような制度」に記載しています。
相続人が被後見人なら、後見人が被後見人(認知症や知的障がいの方)に代わり、相続放棄の手続きをします。
相続人が被保佐人なら、保佐人の同意を得て、相続人自ら相続放棄の手続きをします。
なお、相続人が被後見人の場合は、相続放棄ができる期間は後見人が相続の開始を知ったときから3カ月の間となります。
利益相反にならないなら未成年者の親が相続放棄できる
相続人の中に未成年者がいて、その未成年者が相続放棄を希望した場合はどうなるのか?
このような場合、相続放棄の判断を未成年者がすることはできません。
なので、未成年者の判断で自ら相続放棄をすることはできません。
未成年者の相続放棄は親が代わりにします。
ただし、子供だけ相続放棄させる場合には注意が必要です。
通常、未成年者である子供が相続人ということは親も相続人です。
この場合、未成年者である子供が相続放棄して、親が相続放棄をしない場合、親の相続分が増えることになります。
このような子供と親で利益相反行為になる場合は、親が(未成年者を)相続放棄させることはできません。
その未成年者に特別代理人を選任する必要があります。
また相続放棄に限らず、相続人に未成年者や胎児がいる場合で、遺産分割する場合にも特別代理人を立てる必要があります。
特別代理人についての詳しい内容は「相続人に未成年者がいる場合、特別代理人が必要」に記載しています。
ただ、例えば父親が亡くなり、その父親に多額の負債があり、相続放棄せずに相続すると母親とその未成年者である子供に多額の負債が・・
このような場合で、その母親(配偶者)と子供(未成年)の両方とも相続放棄をする場合は、未成年者に特別代理人を立てることなく、親が代わりに相続放棄の手続きをすることが可能です。
親と子で利益相反になっていないからです。
このように手続きの煩雑さや注意点はあるものの、相続人が認知症や知的障がい・未成年者でも相続放棄は可能です。
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動画で解説
認知症患者や知的障がい者、未成年者の方々が相続放棄をする方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
相続では、もしその財産を相続した場合、あるいは放棄した場合にこの先どうなるのか、といった自分の利害について正しく判断しなければなりません。
そして相続人の中に相続について、正しく判断することが難しい方がいる場合は、その方を法律で守る必要があります。
例えば認知症患者の方・知的障がい者の方・未成年者の方などです。
もし相続について正しく判断できない方が居ると、悪意のある他の相続人やその関係者が近づいて、自分たちの相続分を増やすためにわざと相続を放棄するよう、そそのかすかも知れません。
こうした方々を守れるよう、認知症患者や知的障がい者の方には成年後見制度を利用することができます。
成年後見制度とは、判断力の乏しい方が不利益を受けないように、信頼できる人を法律上の行為の代理人として選ぶことです。
この制度によって代理人となった人を後見人といいます。
この制度を利用すれば、認知症患者や知的障害者の方が相続人になっても、その相続放棄は後見人が行うため、他の相続人などにそそのかされて相続放棄をしてしまうことはありません。
一方、未成年者の方については親が代理人となるため、未成年者の相続放棄は親が代わりに行います。
ただし親が代わりにできる相続放棄には条件があって、子の相続放棄によって自分が得る利益が増えるような行為は勝手にできません。
このような行為を利益相反行為といいます。
もし、こうした相続放棄が必要な時は、さらに特別代理人という別の代理人を選ぶ必要があります。
ただし特別代理人が必要となるケースは、あくまで利益相反行為となる場合なので、親子で相続放棄をする場合に選任は不要となります。