相続税の延納は最長20年!ただ、条件は厳しい
相続税は現金一括支払いが原則です。
相続した財産が現金化しにくい不動産や非公開の株式だらけで、現金や預貯金がほとんどない・・。
こういうケースは少なくありません。
それでも相続税を計算すると多額の納税が必要に。
このような場合、一つの方法として相続税の延納というものがあります。
相続税の延納は、納付期限を最長20年まで延期して分割納付できます。
素晴らしい制度?
そう思った方もいるかもしれません。
でも、そもそもこの相続税の延納は簡単に認められません。
様々な条件を満たさないと、納付期限を延長して分割納付できないということです。
相続税の延納が認められる条件
まず、相続税の延納が認められるかどうかは、相続した財産だけでなく「あなたが既に保有していた全財産」を含めて判断されます。
さらに上場株式や保険金等は換金したら●●円という前提で、財産に含められる場合が多いです。
簡単に言うと、現金化できるものは現金化した上で、手持ちの現金を全て納税に回しても、相続税を払えない場合には延納を考えましょう。ということです。
まずはこの大前提があり、さらに以下の条件を全て満たさないと相続税の延納は認められません。
- 相続税額が10万円を超えている
- 延納税額に相当する担保を提供する(注1)
- 延納申請期限までに延納申請書と担保提供関係書類(注2)を税務署長に提出する
(注1)ただし、延納税額100万円以下、かつ、延納期間3年以下である場合には担保提供の必要はありません。
(注2)延納申請期限までに提出できない場合には、担保提供関係書類提出期限延長届出書を提出することにより、1回につき3ヶ月を限度として最長6ヶ月まで提出期限を延長できます。
そして、担保提供関係書類には、以下の内容を記載します。
- 期限までに納税することができない理由とその金額
- 希望の延納期間(納税スケジュール)
- 希望の分割払い総額、及び1回当たりの納税額
- その他
担保の条件
以下に掲げるもののみが担保として提供できます。
なお、相続財産だけでなく、相続人固有の財産等も提供可能です。
- 国債及び地方債
- 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
- 土地
- 建物、立木、船舶などで保険に附したもの
- 鉄道財団、工場財団
- 税務署長が確実と認める保証人の保証
このように相続税の延納は気軽にできるものではありません。
また、利子がかかるなど、相続税の延納にはデメリットもあります。
(詳しくは相続税の延納のデメリットは利子がかかることに記載)
延納が難しくなったら物納への変更も検討する
延納から物納に移行する方法もありますが、はじめから延納でも相続税の納税が難しいと判断した場合には、物納を考えるのが賢明です。
詳しくは相続の物納制度の利用は簡単ではない!その仕組みや手続方法に記載しています。
また、延納が許可された後でも、延納によって相続税を納税することが厳しい場合には、申告期限から10年以内に限り、分割納付期限がまだ到来していない分については【延納から物納へ変更】することもできます。
詳しくは国税庁のホームページの相続税の延納
においても確認することができます。
延納ありきで相続するというのは得策ではない
相続税の延納について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
今回は相続税の延納についてお話を致します。
相続税は相続が発生してから10ヶ月以内に金銭一括払いで納付する、ということが原則です。
相続した財産から税金を支払うことができれば何ら問題はございません。
しかしながら、相続した財産が不動産など、現金化されていない財産の場合、金銭で一括納付することが難しいことがあります。
このような場合は相続税の延納という制度があります。
延納とは税金を分割払いすることです。
相続した物にもよりますが、最大で20年まで分割払いが認められることがあります。
しかしながら、延納にはデメリットも多いため気軽に申し込んではいけません。
まず延納は税務署に申請を出して、それが認められなければ適用できないですが、このハードルがちょっと高いのです。
たとえば、自分が現金を相続していないからという理由だけでは認められません。
現金でなくとも、換金しやすい他の財産を相続していれば延納は認められにくくなります。
たとえば上場株式や保険金などです。
また、延納が認められるかどうかは相続財産だけではなく、納税者の私的な財産も含めて判断されます。
つまり延納とは、どうしても支払えないときにしか認められない、ということです。
さらに延納が認められるためには、次の3つの条件を満たさないといけません。
まず相続税額が10万円を超えていること、延納する税額に相当する担保を提供すること、延納申請期限までに必要書類を税務署に提出すること、この3つです。
1つ目の条件の「相続税額が10万円を超えている」とは、延納したい人が負担する相続税額が10万円を超えていることを意味します。
2つ目の「延納する税額に相当する担保を提供する」とは、延納を受けるために同じくらいの価値の財産を担保として提出しないといけない、ということです。
担保は相続した財産のほか、延納したい方がお持ちの私的な財産などから用意しなければなりません。
ただし、延納したい税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下の場合に限り、担保は不要とされています。
3つ目の条件は「延納申請期限までに必要書類を税務署に提出すること」です。
延納申請期限とは、相続税の申告期限までですので、通常は亡くなった日から10ヶ月になります。
ただし、期限内に提出できない理由があれば、この期間を延長する方法はあります。
税務署に提出する必要書類とは、延納申請書や担保提供関係書類といった書類になります。
金銭で納付できない理由を書いたり、担保とする財産の目録などを作成したりしなければなりません。
このように延納は認められるまでに様々な手続きが必要で、かつ、ハードルも高いというデメリットがあります。
そして延納の最大のデメリットは、延納する期間などに応じて、延納利子税が発生することです。
延納利子税とは利息をイメージしていただいて構いません。
つまり期限内に納税したときより、多くの税金を払わなければならないということです。
延納利子税の割合は、財産の割合や延納期間で変わります。
延納はその手続きや利子税のことを考えると、延納ありきで相続するというのは得策ではありません。
このことから遺産分割を行うときは、相続税の支払いのことまでしっかり考えた相続にする必要があります。
冒頭でお話したとおり、相続した財産から税金を支払うことができれば、それが一番いいのです。
延納を利用しなくて済むよう、あるいは延納する金額を最小限にできるよう、相続の相談は早めに専門家にして下さい。