子供が親より先に亡くなる場合にも相続トラブルは発生する
特定の子供に遺産を残したくない。あるいは、孫だけに相続させたい。
これらはよく聞く話です。
今回はこれらの話とは逆で、【特定の親に遺産を相続させたくない場合には?】について、解説しています。
離婚した親でも遺産相続する権利がある
幼い頃に、母親が家族を捨て出ていった。
父と私(長女)と弟(長男)の3人で、今まで暮らしてきた。
父は私達を立派に育ててくれた。
仕事帰りで疲れている中、苦手な家事も懸命にしてくれた。
それから月日は流れ、私はもう40歳。
仕事が楽しく、気づけば結婚もしていない。
そんな中、会社の健康診断で、助からないガンであることが判明・・
まさか、父より先に亡くなることになるとは・・
賢明に育てきた父への恩返しとして、私の遺産を全て父に相続させる。
そう、税理士に話した矢先、「それは難しいかもしれない」と言われた。
なんでも、【離婚した母にも相続権がある】とのこと。
ほとんど記憶にもない母親。
でも、法律上は、父と離婚した母が法定相続人に・・
私達を捨てて、出ていった母。
離婚した母には1円も遺産を残したくない!
相続問題は親が亡くなった時だけではない
上記のように、相続トラブルは親の相続だけでなく、子供が親より先に亡くなる場合にも発生し得ます。
今回のようなケースでは、全ての財産を父に相続させるという遺言書を残したとしても、【母親には法定相続分の1/3】の遺留分があります。
つまり、長女の遺産の1/6( 1/2 × 1/3 )を、(母親が)遺産相続出来ると主張できます。
母親が遺留分侵害額請求をした場合には、母親に1円も遺産を相続させない、ということはまず不可能です。
(遺留分の詳しい内容は遺留分に、遺留分侵害額請求の詳しい内容は遺留分侵害額請求とは?時効や手続き方法を解説に記載しています。)
そうなると、母親に1円も遺産を相続させないためには、母親が遺産を受取らないことに納得する必要があります。
母親が【父に全ての遺産を相続させる】という、遺言書の内容に同意すれば、その通りとなります。
では、どのように母親を納得させるのか?
誰にも答えは分かりません。
一つの方法として、遺言書の付言事項に、父への感謝の気持ちや、父に全ての遺産を相続させる理由などを記載すれば、母が遺産相続することを断念するかもしれません。
また、そもそも長女の遺産を、家族を捨てた負い目などから、(母親が)相続するつもりがない場合もあります。
相続対策には、節税対策や納税資金対策、二次相続税対策など、外部の人間(税理士など)でも、アドバイス出来ることはあります。
しかし、被相続人や相続人の心の問題は、やはり自身で解決する必要があります。
動画で解説
特定の親に遺産を相続させたくない場合について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
突然ですが、離婚した夫婦は、お互いの相続人になれません。
夫婦は、婚姻関係がないと相続関係が生じないからです。
しかし二人の間にお子さんがいる場合、親子間の相続関係は残ります。
離婚したからといって、両親との親子関係はなくならないからです。
このことから、両親が離婚したお子さんが早くに亡くなられた場合、離婚してずっと一緒に住んでいない親でも、お子さんの相続人になるというケースがあります。
具体例で考えてみましょう。
たとえば、幼い頃に、母親が家族を捨てて出ていき、父子家庭で育ったお子さんがいらっしゃるとします。
ところが、大人になって、会社の健康診断で助からないガンであることが判明したとします。
もしこの方がご結婚をされておらず、お子さんもいない、ということでしたら、相続人はお父さんと、昔出ていった母親となります。
育ててくれたお父さんにだけ遺産を遺したい、母親には1円も財産を渡したくないという場合、どうすればよいのでしょうか。
結論からいいますと、法律上、母親に1円も財産を渡さないようにする完璧な方法はございません。
仮に、全ての財産を父に相続させるという遺言書を遺したとしても、母親には遺留分があります。
遺留分とは、遺産を最低限受け取れる権利のことです。
今回の例では、母親に遺産の6分の1にあたる遺留分が認められます。
もし、全財産をお父さんが相続し、母親がそれに対して遺留分侵害額請求をしたら、母親に1円も遺産を相続させない、ということはまず不可能です。
ですので、母親に1円も財産を渡さないためには、母親自身が、遺産を受け取らないことに納得していなければなりません。
では、どのように母親を納得させればよいのでしょう。
答えは誰にも分かりません。
方法の1つとしては、なぜお父さんにだけ遺産を相続してもらいたいか、その気持ちを「付言事項」として遺言書に書いておくことが考えられます。
その思いを目にすれば、もしかしたら、母親が遺産相続することを断念するかもしれません。
また、そもそもこのようなケースでは、母親が子供の遺産を相続するつもりがない、ということも考えられます。
相続でお悩みがある方は、一人で悩まず、まずは専門家に相談しましょう。
そして、相続に関することなら税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。
相続のワンストップサービスを提供しております。