
家族の死期が迫ったら、葬儀社の検討・喪服等の準備をしましょう。そして、相続について何の対策も準備もしていない場合には、最低限、遺言書の有無だけは確認しましょう。
父親(または母親)の死期が迫っていると感じても、これまで相続について全く話し合ってこなかったというケースは少なくありません。
しかし、相続の話を切り出すことは、暗に死が近づいていることを宣告するようで気が引けるものです。
それでも、父親の生前に確認しておかなければならないのは、決して相続のことだけではありません。
以下の項目を事前に確認しておかないと、いざという時に遺族が大きな負担を抱えることになります。
特に注意したいのが、銀行口座の凍結とデジタル遺産の取り扱いです。
本人の死亡が金融機関に伝わると口座が凍結され、すぐにお金を引き出せなくなってしまいます。
ただし、2019年の民法改正により「預貯金の仮払い制度」がスタートしました。
この制度を利用すれば、口座の残高や法定相続割合によって引き出せる額は異なりますが、1つの金融機関につき最大150万円までを引き出すことが可能です。
そのため、本人の了承を得た上で、葬儀費用や入院費として当面の現金をあらかじめ引き出しておくことも非常に重要です。
その際、引き出した現金の使い道がわかるように、葬儀費用だけでなく入院費や治療費の領収書も必ず保管しておきましょう。
亡くなった方の生前の医療費は、準確定申告での医療費控除や、相続税の計算における債務控除で必要になるケースが多いためです。
また、使いきれずに余った現金(手許現金)は相続財産として申告する必要があるため注意が必要です。
なお、2024年から不動産の名義変更(相続登記)が義務化されたため、不動産関係の書類の確認はより一層重要になっています。
また、動画配信サービスや有料アプリなどのサブスクリプションは、死後もクレジットカードから引き落とされ続けるトラブルが増加しています。
さらに、ネット証券の取引停止やサブスクリプションの解約手続きをする際、ご本人のスマートフォンへSMS(ショートメッセージ)による2段階認証のコードが送られてくるケースが多々あります。
通信費がもったいないからといって、ご本人のスマートフォン(携帯電話回線)をすぐに解約しないように注意しましょう。
余命宣告を受けたり、明らかに死期が迫っている場合には、不謹慎と思わずに葬儀社を検討しましょう。
現代でも約6~7割の方が病院で亡くなっており、臨終後2~3時間後には遺体の搬送が必要になります。
そのため、悲しむ間もなく臨終後すぐに葬儀社を手配しなければなりません。
事前に葬儀社を検討しておくことで、金額面や葬儀の内容を詳細に打ち合わせできるという大きなメリットがあります。
さらに近年、都心部などを中心に火葬場が非常に混雑しており、お通夜や火葬までに1週間から10日程度待たされるケースも珍しくありません。
安置日数が長引けば、ご遺体を保全するためのドライアイス代や安置施設の利用料などが追加でかかってきます。
突然の別れに慌てないためにも、火葬待ちの事情も考慮した上で、事前に葬儀社へ相談しておくことをお勧めします。
通常、ご臨終からお通夜までは数日しかありません。
そのわずかな期間に、喪服などを準備する必要があります。
間に土日や祝日を挟むと、手配がさらに難しくなることも考えられます。
また、喪服が自宅にある場合でも、亡くなった場所が遠方の病院であるケースや、昔買った喪服のサイズが合わなくなっているケースも少なくありません。
家族の死期が迫ったら、いざという時に困らないよう、喪服や数珠などの準備も忘れないようにしましょう。
父親が元気な時に、相続について全く話し合う機会がなかった。
そして、そのままご臨終を迎えようとしている。
そのような状況であっても、最低限「遺言書が存在するのかどうか」だけは確認しておきましょう。
遺言書が存在する場合、そこに大まかな資産内容が記載されていることが多いため、遺族の負担は大幅に軽減されます。
逆に遺言書が存在しない場合は、遺産分割協議などで大変な相続になる可能性が高いと覚悟しておく必要があるかもしれません。
なお、自宅で封筒に入った「自筆の遺言書」を発見した場合、絶対にその場で勝手に開封してはいけません。
封印された遺言書は、家庭裁判所で「検認」という手続きを経ずに開封すると、過料(罰金のようなもの)の対象になったり、後々のトラブルの原因になったりします。
ただし、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して保管されていた遺言書の場合は、例外的に家庭裁判所での検認手続きは不要です。
死期が迫っている状態で、新たに資産台帳を作成してもらうことは現実的ではありません。
本来、相続に関する準備は、家族の死期が迫ってから慌てて行うべきものではありません。
本人の意識がはっきりしている元気なうちに、相続税対策も含めて家族で話し合っておくべきです。
早い段階で相続という現実から目を背けず、しっかりと向き合うことが大切です。
家族の死期が迫ったらするべきことについて、税理士法人 都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴いただけます。
動画内容
家族が亡くなる時期が近いと知ることは、とてもつらいことです。
しかし、遺された家族は生きていかなくてはなりません。
そのためには家族が亡くなった後のことについて、本人を含めて話し合いや確認をしておく必要があるのです。
確認しておいた方がよいことは葬儀をどうしたいか、遺言書の有無、借金の有無、パソコンやスマートフォンなどのパスワード、印鑑や通帳、不動産に関する書類、契約書関係などの保管場所、ネット証券口座などインターネットで管理する財産の有無などです。
このうち本日お話したいことは、葬儀をどうしたいかということと、遺言書の有無です。
まず葬儀については、亡くなった人の生前の意向がとても大切になります。
どのくらいの規模にするかで、葬儀社を選ぶ基準や準備、連絡をする範囲も変わるからです。
さらに生前に葬儀について話し合うことができれば、葬儀社を事前に比較・検討することができます。
亡くなった後に葬儀社を探し始めた場合、このようなゆとりはありません。
そして、もう一つ大切なことが遺言書の有無です。
遺言書があれば、その中に財産の内容が書かれています。
全ての財産について記載されていなかったとしても、遺族の負担はかなり軽減できるはずです。
また、遺言書の有無を確認せずに遺産分割協議を始めてしまい、話し合いがまとまりかけたところに遺言書が発見されると大変です。
遺言書の内容によっては振り出しに戻って、話し合わなければならなくなることもあります。
遺言書の有無は必ず生前に確認をしておきましょう。
近年は「終活」といって、自分の死後の準備を生前に行う活動が注目を集めています。
死について考えることのマイナスイメージも、少しずつ緩和されているのではないでしょうか。
そうは言ってもデリケートな問題ですから、やはり亡くなる直前に、あれこれ死後のことを確認するのは気が引ける方も多いと思います。
そうならないために、なるべく元気なうちに話し合っておくことが最も良い方法と言えます。