ストックオプションの評価方法や計算例
ストックオプションとは、そもそも何なのか?
ストックオプションは必ず相続財産になるのか?
ストックオプションの評価方法は?
等について、解説しています。
ストックオプションとは
ストックオプションとは【あらかじめ定められた価額(権利行使価額)】で、会社の株式を取得することのできる権利のことをいいます。
新株予約権とも呼ばれます。
会社が取締役や従業員に対して、ストックオプションを付与することにより、取締役や従業員は株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社株式を取得・売却することにより、株価上昇分の報酬が得られるようになります。
ちなみに、このような報酬制度を「ストックオプション制度」といい、従業員のモチベーションアップの効果が見込めると言われています。
ストックオプションは相続財産になる
ストックオプションの権利を行使しないまま、被相続人が亡くなった場合、そのストックオプションは通常、相続財産になります。
例えば、父がA株式会社に勤めていて、A株式会社から父がストックオプションを付与されていた。
ただ、父はストックオプションの権利を、行使しないまま亡くなった。
このような場合、A株式会社のストックオプションの権利を、相続人が相続できるということです。
ただし、ストックオプションの契約しだいでは、相続できない場合もあります。
ストックオプションが相続財産になるかどうかは、ストックオプションの契約書で確認しましょう。
ストックオプションの評価方法
ストックオプションの評価方法は、財産評価基本通達で「その目的たる株式が上場株式又は気配相場等のある株式であり、かつ、課税時期が権利行使可能期間内にあるストックオプションの価額は、課税時期における、その株式の価額から権利行使価額を控除した金額に、ストックオプション1個の行使により、取得することができる株式数を乗じて計算した金額(その金額が負数のときは0とする)によって評価する」とされています。
言葉で表現すると、とても長いのですが、要は上場株式である、もしくは公開途上にある株式等のストックオプションは、次の算式で評価します。
【課税時期における株式の価額(A) - 権利行使額】 × 取得できる株式数
Aの課税時期における株式の価額は、以下の1~4までの価額のうち、もっとも低い価額です。
- 課税時期(相続開始日)の終値
- 課税時期が属する月の終値の月平均額
- 課税時期が属する月の前月の終値の月平均額
- 課税時期が属する月の前々月の終値の月平均額
このように、ストックオプションの評価方法は、上場株式の相続税評価方法と似ています。
なお、非上場会社のストックオプションの評価方法は、「権利行使価額の決定方法」や「権利行使によって取得する株式の譲渡方法」などを勘案して、個別で評価します。
具体例
以下のような会社のストックオプションを、相続した場合の相続税評価額は、それぞれ次のようになります。
A社
- 課税時期における株式の価額:900円
- 権利行使価額:700円
- 取得できる株式数:10,000株
A社のストックオプションの相続税評価額は2,000,000円
計算式「(900円ー700円) × 10,000株」
B社
- 課税時期における株式の価額:4,000円
- 権利行使価額:5,000円
- 取得できる株式数:1,000株
A社のストックオプションの相続税評価額は0円
計算式「(4,000円ー5,000円) × 1,000株」でマイナスとなり、0円となります。
動画で解説
ストックオプションの相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
ストックオプションとは、あらかじめ決まった価額で、会社の株式を将来取得できる権利のことです。
新株予約権ともいいます。
どのような場面で使われる権利なのかというと、たとえば上場企業が自社の役員や従業員にストックオプションを与える場合があります。
もし、1株1,000円の権利行使価額のストックオプションが付与され、後にその会社の株価が1,500円に上昇したとします。
このときストックオプションを行使すれば、役員や従業員は、一般の投資家よりも安く株式を取得できます。
もちろん売却すれば、差額分の利益を手にすることができます。
つまり、株価の上昇が自分たちの報酬になることから、役員や従業員にストックオプションを付与すると、彼らが会社のために働くモチベーションをアップさせることに繋がります。
それでは、ストックオプションにかかる相続税について、解説をしていきます。
ストックオプションを付与された人が、権利を行使しないまま亡くなった場合、ストックオプションは相続財産となります。
たとえば、お父さんがA社に勤めていて、A社からストックオプションを付与されていたとします。
しかし、お父さんはストックオプションで株式を購入しないまま亡くなった場合、そのお子さんなどの相続人は、A社のストックオプションを相続するということです。
ただし、ストックオプションの契約内容によっては、相続できない場合もありますのでご注意ください。
それでは、ストックオプションはどのように評価するのでしょうか。
ストックオプションの評価額は、課税時期における株価から、ストックオプションの権利行使額を差し引いた額に、取得できる株式数をかけて計算します。
課税時期における株価とは、今から申し上げる4つの価額のうち、もっとも低い価額を使います。
1つ目は、相続開始日、つまり被相続人が亡くなった日の終値、2つ目は、亡くなった月の終値の月平均額、3つ目は、亡くなった月の前月の終値の月平均額、最後は、亡くなった月の前々月の終値の月平均額です。
それでは、具体例で計算してみましょう。
まず、A社の課税時期における株価が900円、ストックオプションの権利行使価額が700円、取得できる株式数が1万株だった場合、相続税評価額は900円から700円を差し引いた200円に1万株をかけた、200万円になります。
続いて、B社の例を見ていきます。
課税時期における株式の価額が4,000円、ストックオプションの権利行使価額が5,000円、取得できる株式数が1,000株の場合、評価額はマイナスになりますので、この場合、評価額は0円となります。
なお、非上場会社のストックオプションの場合、その評価方法は難しいものとなります。
上場会社のように公開された株価がないため、権利行使価額の決定方法や権利行使によって、取得する株式の譲渡方法などを勘案して、個別に評価することとなります。