
上場株式等に含み益があると物納が有利になる場合があります。ただし、NISA口座で運用していた場合や特例を使える場合など、売却した方がお得になるケースもあるため注意が必要です。
相続税は、現金で一括納付することが大原則です。
どうしても現金で払えない場合に「延納(分割払い)」が検討されます。
それでも難しい場合に初めて「物納(モノで納める)」が認められます。
つまり、相続人の手元に十分な預貯金(現金)がある場合は、いくら物納がお得な状況であっても物納は認められません。
物納は誰でも選べる制度ではないため、まずはご自身が物納できる状況にあるのか、税理士に確認してみましょう。
また、物納の対象として認められやすいのは、原則として国内の証券取引所に上場している株式です。
米国株などの外国株式は手続き上、物納が極めて困難になるケースが多いためご注意ください。
物納が認められる状況であれば、上場株式の物納は非常に有利になるケースがあります。
その最大の理由は、株を売却した際にかかるはずの「譲渡税(約20%)」が免除される点です。
例えば、亡くなった方が2,000万円で買った株が、相続時に3,000万円に値上がりしていたとします。
この株を売却して現金化すると、利益の1,000万円に対して約20%の譲渡税がかかります。
そのため、手取りは2,800万円に減ってしまいます。
しかし、この株をそのまま物納すれば、3,000万円分の相続税を納めたことになります。
譲渡税は一切かかりません。
相続税評価額と時価が同程度で、かつ含み益(値上がり益)が大きい場合は、物納を積極的に検討すべきと言えます。
さらにもう一つの大きなメリットは、相続発生後に株価が暴落した場合のリスクを回避できる点です。
例えば、亡くなった日の株価が1,000万円だった株が、いざ相続税を払う時期に500万円に暴落してしまったとします。
この株を売却しても500万円にしかなりません。
しかし物納を選べば、国は亡くなった当時の高い評価額である1,000万円として引き取ってくれます。
※ただし、その会社が倒産したり、上場廃止になるような深刻なケースでは例外です。
国に物納を断られる(管理処分不適格財産となる)ことがあるためご注意ください。

一方で、物納よりも普通に売却して現金で納税した方がお得になるケースもあります。
物納で国に引き取ってもらえる価格(原則として相続税評価額)よりも、現在の株価で売却して税金を払ったあとの手取り額の方が高ければ、売却が有利です。
高く売って現金化し、そこから税金を払った方が手元に多くのお金が残るからです。
亡くなった方がNISA口座で株を保有していた場合は、例外となります。
亡くなった方の株をNISA口座のまま引き継ぐことはできません。
原則として、非課税の恩恵がない「課税口座(特定口座など)」に移管されることになります。
この際、亡くなった日の時価で新しく取得したことになり、過去の値上がり益に対する税金は非課税のまま引き継がれます。
つまり、相続後にすぐ売却しても、新しい取得単価からの値上がり分にしか税金がかからないため、譲渡税はほとんど発生しません。
結果として、物納による「譲渡税免除」というメリットが薄れてしまうことになります。
売却して現金化する場合でも「取得費加算の特例」という制度を使える場合があります。
これは、支払った相続税の一部を経費として上乗せでき、譲渡税を大幅に減らせる仕組みです。
この特例を使うと、結果的に物納より売却のほうが手元にお金が残るケースが多々あります。
ただし、この特例を利用するには「相続発生から3年10か月以内」に株を売却しなければならないという厳格な期限があるため、早めの決断が必要です。
どちらが有利になるかは計算が複雑なため、必ず税理士にシミュレーションしてもらいましょう。
上場株式等を物納するには、申請期限までに所有者の名義を相続人に変更しておく必要があります。
期限までに名義変更が間に合わない場合は「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出します。
物納申請には、物納する株式の振替口座簿の写しを提出して、銘柄や数量を確認してもらいます。
物納許可通知書を受け取ったら、指定された日までに、所有者の振替口座から財務大臣等の口座へ振替手続きを行います。
振替手続きの完了後、「振替を行った旨の届出書」を提出して完了です。
国債や地方債の場合は、物納申請時に証券の写しを提出して記号番号等を確認してもらいます。
登録国債は「国債登録変更請求書」で手続きをします。
登録地方債は「移転登録請求書」などで財務大臣へ所有権の移転手続きをします。
振替国債の場合は、財務局長名義の口座への振替手続きが必要です。
投資信託や社債なども、申請時に写しの提出が必要です。
登録社債は「移転登録請求書」で財務大臣に登録名義の移転手続きをします。
登録社債以外は、物納許可が下りた後に税務署へ持参します。
投資信託等は、所有者の振替口座から財務大臣等の口座への振替手続きを行います。
完了後に「振替を行った旨の届出書」を提出します。