
認知症になり成年被後見人となってしまうと、原則として生前贈与などの相続税対策はできなくなります。しかし、被保佐人や被補助人の場合は、サポートする人の同意を得ることで対策を実行できる可能性があります。さらに2026年には制度の抜本的な見直し案が示され、今後はより柔軟な制度へと変わる見込みです。
本記事では、現在の成年後見制度である「後見・保佐・補助」の3つの違いについて解説します。
実は2026年2月に国の法制審議会において、この制度を「補助」のみに一本化するという歴史的な見直し案が示されました。
これまでのように一度利用すると本人が亡くなるまで続く終身原則も見直される方針です。
必要な時だけ利用して終了できるようになれば、利用者にとってのハードルは大きく下がるでしょう。
新しい制度が実際にスタートするのは数年先になる予定です。
まずは現行制度の仕組みをしっかりと理解しつつ、今後の動向もチェックしておきましょう。
認知症などで判断能力が不十分になると、成年後見制度を利用して財産を管理してもらうことになります。
このとき、最も重い「成年被後見人」になってしまうと、原則として相続税対策は一切できなくなります。
なぜなら、後見人の最大の役割は本人の財産を守ることであり、財産を減らす生前贈与などは認められないからです。
しかし、判断能力の低下が比較的軽い「被保佐人」や「被補助人」となった場合には話が変わってきます。
保佐人や補助人の同意を得ることができれば、相続税対策を行える余地が残されているのです。
成年後見制度を利用したからといって、すぐに全ての相続税対策をあきらめる必要はありません。

現在の成年後見制度は、本人の判断能力の低下度合いによって援助の形が変わります。
大きく分けると「成年後見」「保佐」「補助」の3種類が存在します。

詳しくは、成年後見制度とはにも記載していますが、それぞれの特徴は以下の通りです。
成年後見は、判断能力が「ほとんどない人」をサポートする制度です。
サポートを受ける本人のことを「成年被後見人」と呼びます。
本人の判断能力が著しく低下しているため、日常生活の買い物などを除き、全ての財産管理を成年後見人が代理で行います。
保佐は、判断能力が「著しく不十分な人」をサポートする制度です。
サポートを受ける本人のことを「被保佐人」と呼びます。
ある程度の判断能力は残されているため、全ての財産管理を保佐人に委ねるわけではありません。
不動産の売買やお金の貸し借りといった、法律で定められた「重要な財産上の行為」を行う場合にのみ、保佐人の同意が必要となります。
補助は、判断能力が「不十分な人」をサポートする制度です。
サポートを受ける本人のことを「被補助人」と呼びます。
判断能力が著しく劣っているわけではないため、家庭裁判所の審判によって、特定の行為についてのみ補助人に「同意権」や「代理権」が与えられます。
成年被後見人になると、本人の財産を減らすような生前贈与は原則として認められません。
しかし、被保佐人や被補助人の場合には、保佐人や補助人の同意を得ることで法律行為をすることが可能です。
そのため、保佐人や補助人が状況的に妥当だと判断して同意すれば、生前贈与などの相続税対策を実行できる可能性があります。

ただし、保佐人や補助人の本来の役割は「本人の財産を守り、生活を支えること」です。
本人の今後の生活費や医療費を脅かすような多額の生前贈与に対しては、同意が得られないケースも多々ある点には十分注意してください。
被保佐人は、日用品の買い物などは自分1人の判断で行うことができます。
しかし、不動産の売買、お金の貸し借り、そして「生前贈与」などの重要な財産上の行為については、必ず保佐人の同意が必要となります。
保佐人の同意を要する重要な財産上の行為の例
裏を返せば、保佐人がしっかり検討した上で同意を与えれば、生前贈与を適法に実行できるということです。
被補助人は、被保佐人よりもさらに多くの法律行為を単独で行うことができます。
本人の状況に合わせて、「高額商品の購入」や「多額の預金取引」など、特定の不安がある部分だけを補助人の同意事項として設定します。
もし生前贈与が同意事項に設定されていなければ、本人は単独で対策が可能です。
設定されていたとしても、補助人の同意さえあれば対策を進めることができます。
相続対策において重要な「遺言書の作成」についても知っておくべきポイントがあります。
被保佐人や被補助人は、保佐人や補助人の同意がなくても、単独で遺言書を作成することが可能です。
遺言は本人の意思を最大限に尊重すべき「身分行為」とされているためです。
遺言書の作成は、誰の同意も必要としない立派な相続対策の一つとなります。
相続税対策として定番の生命保険への加入も、保佐人や補助人の同意があれば行うことができます。
もし、本人に不利益がないにもかかわらず保佐人が不当に同意してくれない場合は、家庭裁判所に「保佐人の同意に代わる許可」を求めることができる救済措置もあります。
ただし、生前贈与や生命保険への加入で本人の手元から現金が減る行為は、家庭裁判所から「本人にとって不利益である」と厳しく判断されやすい傾向があります。
相続税が安くなるのはあくまで相続人の利益であり、本人の利益ではないと見なされるため、実際に家庭裁判所から許可を得るハードルは非常に高い点には注意が必要です。