【法定相続分と違う相続分】を遺言書で指定することは可能

法定相続分と違う相続分(いわゆる指定相続分)で、相続させる際の注意点などについて、解説しています。

指定相続分とは

被相続人(亡くなった方)が相続人の相続分(*)を、法定相続分ではなく、被相続人自身が遺言で指定する、その相続分を指定相続分と言います。

(*)相続分とは、相続人が複数いる場合に、それぞれの相続人が持っている相続財産に対する権利の割合をいいます。
例で言いますと、本来なら、長男、次男、三男が法定相続人の場合、法定相続分は

  1. 長男:1/3
  2. 次男:1/3
  3. 三男:1/3

となります。

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法定相続分

それを遺言において【相続分を違う割合で指定する】ということです。

指定相続分
指定相続分
遺言において相続分の割合を指定すること

例えば、

  1. 長男:3/5
  2. 次男:1/5
  3. 三男:1/5

など。

この指定相続分の背景には、被相続人の「自由の確保」ということがあります。

自由
自由
指定相続分は、被相続人の自由の確保

法定相続分は「相続人の公平」を前提としていますが、指定相続分は「被相続人の自由」を前提としています。

自由と公平。

相続に限らず、なかなか難しい問題です。

公平
公平
法定相続分は、相続人の公平の確保

法定相続分と指定相続分、どちらが優先?

指定相続分があった場合(遺言にて相続分の割合が指定されていた場合)、法定相続分より【指定相続分を優先】します。

ただ、指定相続分で自由に全てを決められるのか?

長男に9割、次男1割、三男0など、完全に指定相続分で自由に決められるのか?

物理的に遺言にそのように書くのは可能ですが、遺留分という制度があり、完全に被相続人の自由に相続分を決められない(正確には決めても無効になる可能性がある)ようになっています。

それが遺留分というものです。

遺留分についての詳しい内容は、遺留分にて記載していますが、簡単にご紹介しますと、例えば遺言で長男に10割などと書いても、その通りにはならないということです。
(正確には、遺留分を侵害された他の相続人が、長男に対して、遺留分侵害額請求を行うことで、長男に10割という相続分が無効となります。)

指定相続分は法定相続分より優先されますが、ある程度の縛りがあるということです。

そして、その縛りは遺留分というもので、遺留分は原則として、配偶者・直系卑属・直系尊属(兄弟姉妹は含まない)の「各法定相続分の2分の1」までは、いくらなんでも相続分を確保してあげましょう!という制度です。

遺留分を考慮すると、相続人が以下の子供3名の場合には、指定相続分として、以下のような指定は遺留分に侵害していないので、可能(実際に指定した通りに相続できる)ということになります。

  1. 長男:4/6
  2. 次男:1/6
  3. 三男:1/6

  • 指定相続分は自由
  • 法定相続分は公平

このバランスをとるものが遺留分という制度です。

指定相続分で愛人に全ての財産を・・!

その通りに相続させることが出来ない可能性大です。

バランス
バランス
指定相続分と法定相続分のバランスを考える必要があります。

相続税対策としても、指定相続分・法定相続分・遺留分、この3つは意識しましょう。

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妻に全財産を相続させたい場合の遺言書の文例と注意点

指定相続分を動画で解説

指定相続分について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

指定相続分とは

動画内容

今回は、指定相続分について、お話を致します。

相続分、という言葉は、ご存知の方が多いかと思います。

相続分とは、財産を相続できる権利の割合のことです。

一般的に使用される「相続分」とは、法律で決められた、財産の取り分のことを指します。

専門的な言い方をすると、これを「法定相続分」といいます。

たとえば、相続人が長男、次男、三男の3人だった場合、法定相続分は、3分の1ずつで平等です。

これに対して、指定相続分とは何かというと、遺言書によって指定された、相続権の割合のことです。

たとえば、遺言書によって、

  • 長男に5分の3
  • 次男に5分の1
  • 三男に5分の1

ずつ相続させるといったように、法定相続分とは異なる相続分を、遺言書で指定することをいいます。

指定
指定

そうなると、どちらが優先されるのか、という問題が生じます。

答えは、指定相続分です。

つまり、遺言書に記載された内容が、優先されることになります。

法律では、相続人の相続分は公平であることが前提とされています。

しかし、亡くなった人の気持ちというものは、もっと大事なことなのです。

ただし、遺言書ですべて自由に決められるわけではありません。

遺族の生活を支えることも、相続では大事なことです。

もし、配偶者、子どもや孫などの直系卑属、親や祖父母など直系尊属が、相続人になる場合は、それぞれの相続人に遺留分といって、最低限、財産を受け取る権利があります。

遺留分は、例外もありますが、それぞれ(の)法定相続分の2分の1です。

相続人が長男、次男、三男の3人であれば、法定相続分は3分の1ずつですから、その遺留分は、それぞれ6分の1ずつ、ということになります。

たとえば、

  • 長男に財産の9割
  • 次男に1割
  • 三男は0

というような遺言書は、次男と三男の財産が、遺留分である6分の1を下回っています。

そうなると、法律では、沢山財産をもらっている相続人が、他の相続人の遺留分を侵害している、という考え方をします。

そうなると、財産の9割を指定された長男は、次男と三男から、財産の6分1をもらうために、その9割の中から財産を分けるよう、請求される可能性があります。

この請求を、遺留分侵害額請求といいます。

誤解しないように注意が必要なのは、遺留分を侵害する遺言書が、無効になるわけではない、ということです。

遺留分を侵害された相続人が納得をせず、遺留分侵害額請求を行った時に、遺言書どおりの分け方が実現しなくなる、というものになります。

そのため、愛人に全財産を遺すというような、相続人からの理解を得られない内容の遺言書であれば、遺言書自体は有効でも、そのとおり実現する可能性はほぼない、と考えた方がよいでしょう。

遺言書を作成するときは、遺留分に注意しましょう。