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未分割申告とはとりあえず法定相続分で申告すること

相続税の申告と納税には「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」という厳格な期限が定められています。

しかし、相続人同士での話し合い(遺産分割協議)が長引いたり、財産の全容がなかなか掴めなかったりすることもあります。

なお、2026年2月からは法務局で「所有不動産記録証明制度」がスタートしました。

亡くなった方の全国の不動産を一覧で調べられるため、財産把握に非常に役立ちます。

このような遺産分割が終わっていない状態であっても、10か月という申告期限は待ってくれません。

そこで、ひとまず「法律で定められた割合(法定相続分)で財産を分けた」と仮定し、概算で相続税を計算して申告・納税する手続きを「未分割申告」と呼びます。

未分割申告を済ませた後、無事に遺産分割の話し合いがまとまった段階で、改めて正しい税額で申告をやり直すことになります。

もし未分割申告で税金を多く払いすぎていた場合は、「更正の請求」という手続きを行って差額を返してもらいます。

特例を使って税金の還付を受けるためには、遺産分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求を行う必要がある点には注意が必要です。

反対に、未分割申告で納めた税金が本来より少なかった場合は、「修正申告」を行って足りない分を追加で納めます。

このように二度手間になるだけでなく、後述する特例が使えないデメリットが大きいため、安易に未分割申告を選ぶのはおすすめできません。

また、更正の請求をして税務署と見解が分かれた場合には、自分たちの計算が正しいことを納税者側が証明しなければなりません。

なお、遺産分割がまとまった結果、未分割申告の時よりも自分の取得割合が増え、追加で税金を納めることになった場合、過少申告加算税や重加算税などのペナルティはかかりません。

また、遺産分割が確定したことによる修正申告であれば、原則として本来の期限から遅れたことに対する利息(延滞税)も免除されます。

ただし、修正申告の手続きをしたその日に追加分の税金を納めないと、翌日からは延滞税が発生してしまう点には注意しましょう。

後から新たな財産が見つかるなどして税額が増えた場合には、その増えた分に対して加算税もかかる恐れがあります。

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未分割申告の最大のデメリットは、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった、税金を大幅に安くできる特例が一切使えないことです。

これらの特例が適用できないため、一時的とはいえ本来納めるべき金額よりもはるかに高額な相続税を支払う必要が生じます。

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四十九日の法要や様々な手続きに追われていると、10か月という期間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。

未分割申告という事態を避けるためにも、計画的かつスムーズに遺産分割を進めることが何よりも大切です。

どうしても期限までに遺産分割が間に合わない場合は、救済措置として未分割申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず提出してください。

この見込書を出した上で、3年以内に遺産分割をまとめ、そのまとまった日の翌日から4か月以内に「更正の請求」の手続きをすることで、特例を適用して払いすぎた税金を取り戻すことができます。

ただし、農地等の納税猶予や非上場株式の納税猶予といった一部の特例は見込書を出していても後から適用することができないためご注意ください。

申告期限後3年以内の分割見込書の詳細については、遺産分割が整わない方は申告期限後3年以内の分割見込書を提出しようの記事をご覧ください。

さらに、遺産に不動産が含まれる場合は、2024年4月1日から義務化された「相続登記」にも注意が必要です。

遺産分割が長引いて亡くなった方が不動産を持っていたと知った日から3年以内に登記ができない場合は、とりあえず自分が相続人であることを申し出る「相続人申告登記」を行わないと、10万円以下の過料(罰則)の対象になる可能性があります。

税金の申告だけでなく、名義変更の手続き期限についても併せて押さえておきましょう。

なぜ未分割でも申告・納税しないといけないのか?

「遺産の分け方も決まっていないのに、なぜ自分の貯金を崩してまで税金を払わなければならないのか」と疑問に感じる方も多いでしょう。

しかし、もし「遺産分割が終わるまでは申告しなくていい」というルールにしてしまうと、わざと話し合いを長引かせて税金の支払いを先延ばしにする人が現れるかもしれません。

税金の支払日
税金の支払日
未分割申告がないと意図的な納税の遅延が発生

それでは、期限内にしっかりと話し合いを終えて納税した人との間に不公平が生まれてしまいます。

そのため、税金を公平に負担してもらうという目的から、未分割の状態であっても一旦は期日通りに申告と納税を済ませるルールとなっているのです。

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遺産分割協議をまとめるには

未分割申告での最大の壁「納税資金の確保」と仮払い制度

未分割申告をしなければならない状況になったとき、最も頭を悩ませるのが「相続税を支払うためのお金をどうやって用意するか」という問題です。

先ほどご説明した通り、未分割申告の段階では税金を安くする特例が使えないため、一時的にかなり高額な相続税を納めることになります。

各相続人が自分自身の十分な貯蓄から支払えるのであれば問題ありませんが、多くの方は「亡くなった方の預貯金から税金を払いたい」と考えるはずです。

しかし、現在の法律のルールでは、亡くなった方の預貯金も遺産分割の対象になることが明確に定められています。

そのため、遺産分割協議が完全に終わるまでは銀行口座が凍結されたままとなり、原則としてお金を自由に引き出すことができません。

そこでぜひ知っておいていただきたいのが、2019年7月から始まった「預貯金の払い戻し制度(仮払い制度)」です。

この仮払い制度を利用すれば、遺産分割の話し合いが途中であっても、当面の生活費や葬儀費用、そして納税資金として一定の金額を単独で引き出すことが可能です。

引き出せる金額は、「死亡時の預金残高 × 3分の1 × その引き出したい相続人の法定相続分」という計算式で決まります。

ただし、家庭裁判所を通さずに銀行の窓口で直接手続きをする場合、引き出せる上限額は「相続人1人あたり」ひとつの金融機関(支店ごとではなく、その銀行全体で)につき150万円まで(※計算式の結果が150万円未満の場合はその金額まで)と決められている点には注意が必要です。

なお、この上限は1つの金融機関ごとの決まりですので、亡くなった方が複数の銀行(A銀行、B銀行など)に口座を持っていた場合は、それぞれの銀行から最大150万円ずつ引き出すことができます。

高額な相続税の全額をこの制度だけで賄うのは難しいかもしれませんが、未分割申告に直面した際には非常に頼りになる重要な制度です。

納税資金の確保
納税資金の確保
未分割申告の場合、仮払い制度などを利用して納税資金を確保する必要があります

未分割申告の場合の債務や葬式費用の取り扱い

亡くなった方が残した借金などのマイナスの財産(債務)については、未分割の状態では、各相続人が法定相続分に応じて負担したものとして計算を行います。

一方で葬式費用については、借金とは性質が異なり亡くなった後に発生する費用であるため、自動的に法定相続分で割り振られるわけではありません。

実務上は、遺産分割が終わっていなくても、その葬式費用を最終的にご自身の財産から負担する人(喪主など)が、自分の相続財産から差し引いて(控除して)申告を行うのが一般的です。

後で遺産から精算してもらうつもりで「一時的に立て替えただけ」という場合は、控除の対象となる人が変わってくる可能性があるためご注意ください。

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