未分割申告は最終手段と考えるべき

一旦おおまかに計算して「とりあえず相続税の申告をする」というのが未分割申告です。

今回は、そんな未分割申告について、解説しています。

未分割での相続税申告とは概算でとりあえず申告すること

相続税の申告期限までに、相続財産の全体が把握出来ていない・相続税評価額が確定していない。

あるいは遺産分割協議で遺産分割が確定していない。相続人が確定していない。

このような場合でも、相続税申告期限までに、相続税を申告しなくてはなりません。ただ、

  • 財産が把握出来ていない
  • 財産評価額が定まっていない
  • 遺産分割が確定していない
  • 相続人が確定していない

ような状況で、正確な相続税を算出することは不可能です。

そこで概算でとりあえず申告する、というのが未分割申告です。

未分割申告
未分割申告
遺産分割や相続税評価額が未確定の場合は未分割申告

一旦、概算かつ未分割にて申告し、遺産や分割方法等が確定した後に、更正の請求又は修正申告をし、正しい相続税を申告します。

ただ、詳しくは遺産分割が申告期限までにまとまらない場合は未分割申告にも記載していますが、安易な未分割申告は避けるべきです。

未分割申告後の修正申告の場合、通常は加算税や延滞税は賦課されません

ただ、期限内申告書に計上されていなかった財産が新たに出てきたことや、期限内申告書から評価が増額した財産があることにより、相続税が増加した場合は、その増加部分に係る附帯税は賦課されます。

そして未分割申告をして、その後に財産評価額を減少して申告し、更正の請求(払いすぎた税金の還付請求をすること)をして税務署と争いになった場合には、その評価額を立証する責任を納税者側が負います。

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また、未分割申告では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えないので、納税資金が多額になりやすい傾向があります。

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相続税の申告期限は相続が発生してから10か月以内です。

そして、実際には49日の法要などで10か月ありません。

未分割申告にならないように注意しましょう。

ただ、どうしても間に合わない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しましょう。

申告期限後3年以内の分割見込書についての詳しい内容は、申告期限後3年以内の分割見込書に記載しています。

なぜ未分割でも申告しないといけないのか?

仮に遺産が分割されていない限り相続税が課税できないとなると、わざと遺産分割を遅らせ納税を遅らせることが出来ます。

税金の支払日
税金の支払日
未分割申告がないと意図的な納税の遅延が発生

これを防ぐために、未分割の状態でもとりあえず申告をする形になっています。

また、申告期限までに納税した人との、税負担の公平を図る目的もあります。

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未分割申告の場合の納税資金はどう確保する?

未分割申告でも納税資金の確保という問題から避けて通ることは出来ません。

むしろ税額軽減措置などを適用出来ないことから(税額が高くなりやすいことから)、未分割申告の方が納税資金の確保が問題になりやすいです。

相続人ごとの固有の財産で納税資金を確保できれば問題はありません。

ただ、相続財産から相続税を捻出するのが一般的で、特に遺産が多額の場合、遺産から相続税を支払う場合がほとんどです。

そして、預金の遺産分割が確定していないと、被相続人の凍結された口座から資金を引き出すことが出来ません。

ただ、預金については相続開始とともに、各相続人の法定相続分に応じて帰属する、という判決がありました。要は預貯金は遺産分割の対象にならない、という判決です。

これは預金については、「遺産分割協議を待つ必要がない」ということを意味します。

よって、金融機関によっては未分割申告である旨をお伝えし、この判例を根拠に遺産分割が確定していなくても、凍結されている預金を引き出すことが可能でした。

しかし、金融機関ごとの対応なので、全ての金融機関で同じように預金が引き出せた訳ではありません。

また、預貯金は遺産分割の対象になる、と上記の判例を覆す判例がありました。

そうなると今後、金融機関において各相続人の法定相続分に応じて、預金を引き出すということが出来なくなる可能性が高いと思われます。

未分割での相続税申告の場合、納税資金の確保がより難しくなってくると予想出来ます。

納税資金の確保
納税資金の確保
未分割での相続税申告の場合、納税資金の確保がより難しくなってくる

未分割申告の場合の債務や葬式費用の取り扱い

債務についても負担者や負担金額が確定していない場合には、相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担したものとして計算します。

葬式費用についても、厳密には被相続人の債務ではありませんが、債務と同様に相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担したものとして計算します。

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葬式費用は相続財産から控除

動画で解説

未分割での相続税申告について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。

字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。

未分割での相続税申告

動画内容

さて、みなさん、相続税の申告期限は、ご存知でしょうか?

遺産をのこしてくれた方が、亡くなってから10ヶ月目が期限です。

では、その相続税の申告期限までに、相続税の申告のために、必要で大切な情報がわからない場合、どうしたらいいのでしょうか?

例えば、相続財産の全部がまだわからない。

財産の評価額が確定していない。

遺産分割協議がうまくいかなくて、遺産分割が確定していない。

相続人がわからない。

今回は、こんな状況でも申告期限までにとりあえず申告をする、未分割申告というものについて、お伝えを致します。

さきほども申し上げましたように、相続税を申告するうえで、大切なことがわからない場合でも、相続税の申告期限は来てしまいます。

時間は待ってくれない
時間は待ってくれない

けれども、こんなに大切なことがわからないままでは、きちんと正確な相続税を計算することができません。

そこで、おおまかに計算をして、とりあえず相続税の申告をする、というのが未分割申告です。

未分割申告の場合には、一旦おおまかな計算をして、未分割のまま相続税の申告をします。

そして、遺産の総額や相続人がわかり、分割方法が決まった後に「更正の請求」という手続きか、修正申告をして正しい相続税を申告します。

ただ、未分割申告をすると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えないため、納税額が多額になりやすい傾向があります。

そのために、安易に未分割申告をするのはやめましょう。

最終手段
未分割申告は最終手段

49日の法要などしていると、10か月はあっという間に来てしまいます。

未分割申告にならないよう、計画的に相続税の申告にむけて準備をしましょう。

ところで、なぜ未分割でも申告をしないといけないのでしょうか?

それは、もし遺産が分割されていない限り、相続税を払わないで良いとなると、わざと遺産分割を遅らせて、納税を遅らせる人がでてくるからです。

これでは申告期限までに納税した人と、不公平になってしまいます。

ですから、納税を遅らせることができないように、未分割の状態でも、とりあえず申告はしなければならない、となっています。

未分割申告の場合、一番頭が痛いのは、納税資金の確保です。

相続人が全員、自分の貯蓄から税金を支払えれば別ですが、そうでない場合には、相続した遺産から納税資金を確保する必要があります。

ただ、遺産分割が完了していないと、財産を売ることも出来ません。

また、預金も基本的には、遺産分割が確定していないと、亡くなった人の口座からお金をおろすことができません。

このように未分割での相続税申告の場合には、納税資金をどうするかが大きな課題となります。

また、未分割のままでは、亡くなった方の債務についても、負担者や負担金額が決まっていない場合がほとんどです。

その場合は債務を相続分、または、包括遺贈の割合で負担するものとして計算をします。

葬式費用についても、債務ではありませんが、債務と同様に計算をします。

10か月もある、と思っている申告期限は、案外あっという間にやって来てしまいます。

申告期限までに、きちんと申告・納税をするために、いつ何をすればいいかが不安な場合は、必ず専門家にアドバイスをもらいましょう。

そして、相続のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せください。

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