がけ地を含む宅地は評価減が可能
日本には山や丘陵地帯を切り拓いて造られた宅地がたくさんあります。
そのようなこともあり、一部が宅地で、一部が「がけ」の状態のままということはよくあります。
ただ、宅地の相続税評価としては、がけの状態のままになっているものも、被相続人の名義であれば、遺産(土地)として計算します。
そして、土地は面積(がけの部分の面積も含めた)×単価で計算します。
ほとんど使用価値のない、がけ地も含めて計算すると、実情より高い相続税評価となってしまいます。
そこで、がけ地を含む宅地には【がけ地補正率】を乗じて減価できるという規定があります。
ただし注意点として、がけ地補正率を乗じて減価できるという土地は【宅地のみ】となります。
宅地の中にあるがけ地のみが対象なので、課税時期の地目(土地の種類)が雑種地や山林、農地等の場合には、この減額の適用はありません。
がけ地部分が山林や雑種地の場合には、宅地部分と切り分けて単独で評価します。
また、がけ地が宅地の一部の場合には、がけ地補正率を乗じて減価できますが、がけ地補正率と造成費控除は重複適用できません。
相続税対策として、がけ地補正率と造成費控除のどちらが節税になるか?は検討する必要があります。
がけ地の判定
がけ地といっても何度の傾斜から、がけ地になるのか?
がけというと急な感じを受けるかもしれませんが、相続税の観点から言えば、30度を超える場合と考えるの一般的です。
というのも、国税不服審判所が30度を超える場合は急傾斜地(がけ)という結論を出しています。
なので30度未満の傾斜の場合には、基本的にがけ地補正率の適用は避けたほうが無難と言えるかもしれません。
また、市街地の中にある30度を超える傾斜は、土砂崩れ防止のために木が生えている場合が多いです。
そのような傾斜地の場合、もはやがけ地のある宅地ではなく「山林として評価」できます。
山林評価をすれば、がけ地補正率を適用するよりも、評価額は低くなります。
また、がけ地部分の地積割合が低い場合には「利用価値の著しく低下している宅地」として、10%評価減する方がよい場合もあります。
このように評価方法の選択で、相続税税額が大きく変わってくる場合があります。
相続税対策としては、トータルで一番評価額が低くなる方法を選択します。
木を見て森を見ず。にならないように注意しましょう。
がけ地の評価減の計算方法
がけ地が、がけ地でなく宅地であるとして一旦評価額を計算し、その評価額にがけ地の地積の割合に応じた、以下のがけ地補正率表の補正率を乗じて計算します。
また、がけ地の方位は斜面の向きで判定します。
がけ地が複数方向にある場合には、補正率を地籍の割合によって、以下のように調整し計算します。
計算例
- 全てのがけ地の割合:40%
- がけ地が東の面積:100㎡
- がけ地が北の面積:300㎡
がけ地の補正率は、0.84 × (100㎡/400㎡) + 0.78 × (300㎡/400㎡)と計算し、0.795となります。
細かく解説しますと、
- 0.84はがけ地の割合:40%で東の欄の数字
- 0.78はがけ地の割合:40%で北の欄の数字
- 400㎡はがけ地が東の面積:100㎡とがけ地が北の面積:300㎡の合算
となります。(以下参照)
この算出した補正率(0.795)を、がけ地がないものとして評価した金額に、乗じて評価額を算出します。
がけ地を含む土地の相続税評価方法を動画で解説
がけ地を含む土地の相続税評価方法について、税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴出来ます。
動画内容
山を切り開いて造られた宅地の場合、その宅地の一部が、がけ地になっている場合があります。
「がけ」と申しますと、ものすごい急傾斜というイメージを持たれる方が多いと思いますが、相続税の観点では、傾斜が30度を超えると「がけ地」に該当します。
そしてこのがけ地、使用価値は非常に低いものですが、立派な財産に該当いたしますので、相続税の評価の対象となります。
ただし、普通の平地と同じ評価にしてしまうと不公平になりますので、補正率を用いて「一定の評価減」が認められております。
また、今まで土地の種類として「宅地」と申しましたが、場合によっては「山林」に該当するケースもございます。
山林に該当する場合は、がけ地補正率を用いて評価するよりも評価額が小さくなります。
がけ地として評価するのか、山林として評価するのか、選択方法によって、相続税額が大きく変わることとなります。
このように皆さまの判断が難しい場合、我々にご相談頂ければと思います。