故人の生前に既に支払い義務が確定している税金は債務控除の対象
相続税には債務控除というものがあります。
相続した財産から故人の負債(負の財産)を差し引いて相続税を計算するというものです。
例えば1億円の土地、その代金の未払分7,000万円を相続した場合には、相続税の課税対象は3,000万円(1億円-7,000万円)となります。
債務控除が出来るものがたくさんあると、それだけ相続税が安くなります。
このような債務控除ができるものには、被相続人が亡くなった時に既にある借金や葬式費用の他に、亡くなる前の病院へかかっていた、治療費や入院費用も債務控除できます。

負の財産は相続財産から控除できます。
そして、被相続人の生前に既に支払い義務が確定している税金で、未払いのものも債務控除できます。
税金には
- 所得税
- 贈与税
- 消費税
- 事業税
- 自動車税
- 市町村民税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 都道府県民税
など、さまざまなものがあります。
地方税法といわれる、都道府県民税・市町村民税・固定資産税・自動車税のようなものは、賦課期日が決められています(例えば固定資産税は年の1月1日、自動車税は4月1日となります)。
このように賦課期日が決められているものは、【その日に納税義務が確定したもの】とされます。
なので被相続人の死亡日に未払いで、納付期限がまだ到来していないものは全額債務控除できます。
なお、相続人のせいで
- 延滞税
- 利子税
などの各種加算税が発生した場合には、それを納税したとしても債務控除は出来ません。
なお、債務の負担者が申告期限において確定していない場合には、法定相続分で按分して負担するものとして計算します。
未払い税金等の確認方法
被相続人の借金がある場合などには、借入返済予定表や通帳の支払記録などから、借金の存在を把握でき、債務控除モレはまず発生しません。
ただ、未払税金は被相続人がどのような税金を既に支払済み(もしくは未払い)なのか、などを相続人が把握しづらいということもあり、債務控除モレが発生しやすいです。
そこで、もしも被相続人が確定申告をされている場合には、貸借対照表を確認しましょう。
貸借対照表を確認すると、被相続人の資産・負債の概要を把握することができます。
例えば負債の部で未払金が計上されていれば、被相続人の債務があると予測できます。
また、資産に車が計上されていれば、自動車税があることなども分かります。

どういう税金があるのかを把握できます。
未払税金の確認に限らず、資産や負債の確認方法の一つとして、貸借対照表を確認することはとても重要なことです。
被相続人の生前に聞かされていなかった相続人の資産や負債を「ある程度は貸借対照表で確認することが可能」です。
相続税対策としても、被相続人の資産・負債の把握は重要です。
というよりも、資産・負債を把握出来ていない状態で、相続税対策をしても意味がありません。

資産・負債を把握してなければ、相続税対策は出来ません。
未払税金は債務控除できますので、相続税が安くなります。
しっかりと未払税金も把握しましょう。
動画で解説
相続人が「故人が払うべき税金」を支払うと相続税が少し安くなるということや、故人の債務の確認方法について税理士法人・都心綜合会計事務所の税理士・田中順子が解説しています。
字幕が付いておりますので、音を出さなくてもご視聴できます。
動画内容
そもそも亡くなった人にどのような税金がかかるのでしょうか。
たとえば固定資産税という税金はその年の1月1日にその固定資産の持ち主だった人に課税されます。
もし3月に固定資産の持ち主が亡くなった場合、その年の固定資産税は亡くなった人の未払いの税金となります。
同じように自動車税は4月1日に自動車の持ち主に課税されます。
そのほかにも亡くなった人が事業をしていた場合は、所得税や事業税、消費税といった税金が発生する場合もあります。
もし相続人が代わりに亡くなった人の未払いの税金を納めた場合、その相続人は支払った税金の分だけ債務控除を受けることができます。
債務控除とは亡くなった人の債務を相続人などが支払った場合、その支払った額を相続財産から差し引くことができるというものです。
たとえば1,000万円の財産を相続した人が亡くなった人の税金100万円を支払った場合、相続した財産は1,000万円-100万円を引いた900万円になります。
この900万円が相続税の課税対象になるので、相続税が少し安くなるというわけです。
もし他の相続人の財産と合わせて、基礎控除額以下になれば相続税はかかりません。
税金以外にも債務控除には亡くなった人の借金や、亡くなる前にかかっていた病院の治療費や入院費、お葬式の費用などが該当します。
ただし債務控除に該当するのは、亡くなった人が生きている間にその支払い義務が確定したものだけです。
たとえば相続人が税金を納付し忘れてしまったせいで、延滞税や利子税といった税金が発生したとします。
この場合、延滞税と利子税は亡くなった人に支払う義務があった税金ではないため、債務控除には計上できません。
ここまでの話で債務控除の大まかなしくみは押さえていただけたかと思います。
しかし問題は亡くなった人に、そもそも何の債務があったのかが分かりにくいことです。
特に個人事業を行っている人の場合、事業で作った未払いの債務がある可能性もあります。
個人事業を行っている人が亡くなった場合、まずは、その方の最新の確定申告書の控えを見つけて下さい。
確定申告書の控えが見つかったら、その中の貸借対照表という書類をチェックします。
貸借対照表は確定申告に添付されている、青色申告決算書という書類の中にあります。
もし、この中に借入金や未払金が計上されていれば、事業で何らかの債務があったことが判明します。
ついでに車が計上されていれば自動車税があることもわかります。
亡くなった方の債務がはっきりしない場合は、一度、確定申告書や貸借対照表を見ておきましょう。
亡くなった人の債務の総額がわからなければ、そもそも相続することを承認して大丈夫なのか?という問題があります。
債務の額は財産の調査と合わせて徹底してください。
どのように進めたらよいのか不安のある方は相続の専門家に相談しましょう。
そして相続のことなら、税理士法人・都心綜合会計事務所にお任せ下さい。
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